あの子を更生させたくて!
【あらすじ】
戻って来い!アルベルト!
クレムストックの街。冒険者ギルドのフードコート。
ここは仕事の後の食事やミーティングなどに使われている。
誰かしらここで飲食をしていて繁盛している場所だ。
アルベルトと新米冒険者の女の子がお茶をしている。
私はたまたま、そこを通りかかっただけだった。
(お、マイエンジェルだ。それと友達か?)
仲の良い事は睦まじき事である。
私はフードコートの店員にハーブティーを頼んでいた。
「そんなに面白いの?」
「うん!うちのパーティーはまさに冒険者の中の冒険者だよ!」
アルベルトはウチのパーティーの話を自慢げにしている。
これは嬉しい事だ。
「いいなぁ。どんな仕事してるの?」
「裏組織の暗躍を操作して潰したり、密売業者をゆすったりだね!」
「え、なにそれ?」
ハーブティーを待っていた私の時間が停止した。
「頭を使うんだ! 武力で制圧できない所に圧力で黙らせる! 素晴らしいんだ!」
「モンスター討伐とかダンジョン探索は?」
「ダンジョンって、裏組織の基地を探索して爆破するやつかな? あれもいいね!」
「なにそれ」
(……白目)
私は足早に丘の上の自宅に戻る。
青少年の一大事だ。
私は帰宅して直ぐにジェイクに進言した。
「ダンジョンいきましょう!」
「どうした急に」
「このままでは、アル君がダメになります!」
「なぜだ」
(なぜって、あんな楽しそうに裏社会とドンパチ殺り合う話ししてんだぞ!)
私が正しい道に進ませてあげなくては。年長者として!
「思えば最近の仕事は、裏組織絡みの仕事が多かったです」
「まぁ、そうだな」
「アル君に、冒険者の楽しさを教えたいのです!」
「しかし、本人が楽しんでたからなぁ……」
先日、禁止アイテムを密輸するマフィアの基地を潰した時の話だ。
基地に乗り込んだ3人は爆破するため魔法弾を各部屋に取り付けていた。
「ねぇねぇ、ジェイク。これって爆破だけじゃダメだね!」
「あぁ、そうだな」
「じゃあさぁ、これ圧力掛けるカードにしよーよっ」
「アルベルト。お前は素晴らしいな」
「わーい! こういうの楽しー!」
とても、イキイキ仕事をしていた……白目
「……色々手遅れの様な気もするが」
「……そ、そうですね」
掘れば沢山アルベルトの片鱗の兆しはある。
始まりはクレール教会の仕事からだった。
つまり責任は仕事取ってる私たちにあるのだ。
「しかし、人気の無い仕事の方が金がいいからな」
「……まぁ。確かに」
モンスターならぬマフィア討伐。ダンジョン探索ならぬ密輸基地探索。
冒険者の知識を育てる新米磨きシステムなのに、裏社会との駆け引きをグングン吸収しているのは如何なものか!
この思考を、お姉さんは見過ごすわけにはいかない!
「ダンジョン! いきますよ!」
「あ、あぁ」
こうして私たちは、青少年に優しいお仕事。
ダンジョン探索というドリーマーなお仕事を受ける事にしたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
クレムストック郊外に探索済みと言われているダンジョンがある。
このダンジョンは新米冒険者が実施訓練に使ったりする場所だ。
依頼内容は中級モンスターの討伐。
最深部で中級モンスターが沸いたのだ。
そのせいで新米の実施訓練が出来なくなったとのこと。
ダンジョンでは、こういう事はたまにある。
ある程度熟練した冒険者たちがそういうイレギュラーを排除するのだ。
今回のお仕事は、そういう立ち回りなのである。
「ヤザワさん、驚いてたな」
「私たちが冒険者みたいな事するのが、そんなに驚愕だったのでしょうか?」
「うむ……」
今回アルベルトの装備が少し違う事に気づいた。
ローブはマント型の物に変わっていて短め。
腰にも何やら装備している。
「アル君。装備変えた?」
「うん。仕事しやすく改良したんだ」
「その腰につけてるのは?」
「あ、これ? ダガーだよっ」
「ダガー?」
そう言えば、最近ウチの夫と自宅の前で何かやってるのを何度も目にした。
「魔法使いって、接近戦が全然だめでしょ?」
「うん」
「だから、お姉ちゃんみたいに近接戦闘もできるようになりたくって」
(一番、手本にしちゃいけない奴やッ!)
どうやらアルベルトはジェイクに近接戦闘の手解きを受けていたらしい。
「コイツは、中々筋がいいんだ」
「へぇー」
この世界産の魔法使いはサブ職みたいなのが取得できるのだろうか?
ウチの夫も神官なのにガンガン素手で殴り合っている。
「それでね。僕も自分の今後の役割について考えてみたんだ」
「うん」
「それで青写真を、ある程度固めたんだよ」
「どういう役割に決めたの?」
すると、アルベルトはステータス画面を開いて私たちに見せた。
----------------------------
アルベルト・ソテリキャリ
Lv20
職業 魔法使い
HP 100
MP 190
スキル
・エネルギーボルト
・グリーンバインド
・ストーンウォール
・スリープダガ
(武器付与:睡眠)
・ショックダガ
(武器付与:マヒ)
・サーチフィールド
(探索:周囲状況、異常、危険)
・サーチング・フォア・エネミー
(広範囲型:索敵)
・マップトラッキング
(追跡)
・アンチ・マクロコード
(解除:システム、トラップ)
---------------------------
「……なんすか、これ」
「色々増えてるなぁ」
このスキル構成は盗賊とかにありそうなスキル構成だ。
盗賊はトラップ解除、サーチフィールド、ダンジョンマッピング等のスキルを使う。
サーチング・フォア・エネミーというのは広範囲型索敵スキルだ。
敵地への侵入作戦やゲリラ戦に使われるマップスキルに該当する。
ダンジョン探索にはダンジョンマッピングを使うのが一般的である。
普通の冒険者はあまり取得しないスキルである。
このスキルはモンスターやダンジョンのために組んだスキルじゃない。
どちらかと言えば……。
(対人戦……白目)
この子は何になりたいんだ!
「俺のいた部隊にもこういうスキル構成の奴がいたな」
「ほ、ほんと?」
「ああ、ホークアイってコードネームだった」
「か、かっこいい!」
(憧れたらアカン……白目)
ウチの夫が言っている部隊とは、ランス法国の特殊部隊の事である。
特殊なスキルを持っている者や、その道のプロフェッショナルが所属している。
噂ではプラチナランク相当の人間が所属していると言われている。
クレール教会のロクスもジェイクと同じ部隊に所属していた。
表には出せないような裏の仕事をしている部隊のことだ。
「アンチ・マクロコードは考えたな」
「そうでしょ! 最近、魔術プログラムされてるアジトが多いから」
「流石だ」
「やったー!」
(才能を伸ばすなッ……白目)
私たちは郊外のダンジョンの前に到着した。
話をしながらだと移動が速く感じる。
そこには新米冒険者を規制するための衛兵が置かれていた。
「おつかれさまです。冒険者ギルドの依頼で来ました」
「え!」
「?」
衛兵の様子がおかしい。
「どうしました?」
「いえ、先ほど同じようにギルドの仕事でと言って冒険者さんが……」
この仕事は契約書一枚だった。
私たち以外にこの仕事を受ける人がいるわけがない。
ダブリングがないように組合は細心の注意を払って依頼を扱っているからだ。
「だ、ダブリングでしょうか?」
「うぅ~ん」
「とりあえず、中いいですか?」
「はい! どうぞ」
嫌な予感がよぎる。
私たちはダンジョンの中に入って行った。
階段を下ると光が届かないダンジョンは暗く静かだ。
「ライト」
ジェイクがスキルで明かりを出してくれる。
光が全体に浸透すると広間のような場所が暗闇から浮き上がってきた。
「やけに静かだな」
私たちはどんどん奥へと進んで行く。
3階層目まで下りた時に何やら足音が聞こえて来たのだ。
アルベルトが後方でスキルを唱える。
「サーチフィールド」
周辺の情報を収取するスキルだ。
「どうだ?」
「……人が2,3人で走ってこっちに来てるね」
「どういう状況なんだ?」
「魔物に襲われているみたい」
「え?」
熟練の冒険者がダブリングしているなら逃げる必要はない。
中級モンスターは高レベルなヤツなのだろうか?
私たちはアルベルトに先導してもらい冒険者の元へ走る。
走っていると先の方で明かりが移動しているのが見えた。
必死で冒険者が逃げている。
「たっ、たすけてくれー!」
「も、モンスターが!」
後ろから追って来ているのはスケルトンだ。
スケルトンというのは人間の骨に死霊が乗り移ってモンスター化したものだ。
以前ランスの要塞にいたスケルトンアンデットの親戚の様なものだ。
スケルトンはHPは高いが単体だと苦戦する相手ではない。
「そこの人たち! ふせてー!」
アルベルトが指示し詠唱する。
「エネルギーボルト!」
アルベルトは杖の先に魔力を圧縮する。
その圧縮した魔力を一気に放ったのだ。
-----------ビシュゥウン
まるでゲシュ〇ンストのニュートロンビームみたいだ。
魔力が青いビームのような形状で飛んでいきスケルトンを貫く。
「あ、ありがとうございます!」
冒険者たちは私たちの後ろに逃げ込んだ。
「エネルギーボルト!」
-----------ビシュゥウン
アルベルトは残ったスケルトンを一気に片づけた。
崩れたスケルトンたちは灰になり消える。
「詳しく説明しろ」
ジェイクは冒険者たちに事情を聞く。
「俺たち新米なんですが、名声を上げたくて」
「レベルも上がったし、中級くらいの魔物ならいけると思ったんです」
(そういうことか……)
「まだ、仲間が一人最深部に取り残されて……」
「お願いです! 助けて下さい」
嫌な予感は当たった。
今日は、楽しくアルベルトとダンジョン探索だったはずなのだ。
一気にトラブルに巻き込まれてしまった。
「ジェイク。私とアル君で最深部に行くので新人頼みます」
「わかった。無茶するなよ!」
私はジェイクを見てうなずく。
「アル君」
「了解!」
ジェイクは新米冒険者を連れて地上へ上がって行った。
私はポケットからマジックアイテムのライトを取り出して発動させる。
スキルのライトと同じ効果がある冒険者の便利グッツだ。
「これで、準備OKだね」
「まって、お姉ちゃん」
「?」
アルベルトは、スキルを発動させる。
「サーチング・フォア・エネミー。サーチフィールド」
「え、それってダンジョンでは使えないんじゃ」
「これ、基本仕様が2次元なんだけど、そこに3次元を足したんだよ」
(ごめん、わからん……白目)
「あと、範囲の伸縮も方程式を入れ替えてできるようにしたんだ」
「とりあえず、なんかすげーのね?」
こんなバカな先輩魔法使いを許してくれ。
私たちはダンジョンを最深部へ向かって走り出した。
「お姉ちゃん、次来る。角曲がった所3」
「おーけー」
「11時方向1、2時方向1。距離あって1時方向奥に1」
私は鋼の杖を走りながら構える。
「物理無効(短)」
壁を曲がった場所に3体のスケルトンがいた。
一体目を上段から回転しながら殴りつける。
その回転を利用し二体目を横薙ぎで叩き割る。
3体目は少し距離がある。
「身体加速(短)」
速さのバフを掛けて地面を蹴り3体目との間合いを一瞬で詰める。
「物理無効(短)」
横薙ぎでスケルトンの頭を叩き割った。
3匹の倒れたスケルトンは灰になって消滅する。
「ナイスアシスト!」
アルベルトの索敵サポートが戦闘をカナリ楽にしている。
今までなら警戒してダンジョンなどは進んでいた。
魔法使いと神官のダブル後衛パーティーである。
そもそも、よく今まで後衛二人だけで仕事をこなせてたなと思う。
(ジェイクの中では、私は前衛扱いでカウントされてそうだが…)
ある程度走って最深部のフロアまで辿り着いた。
「お姉ちゃん。この先曲がった所に2」
「2?」
「多分冒険者一人と、モンスターだと思う」
「おっけ!」
「部屋入って10時方向敵、9時方向味方」
だんだん私の使い方がジェイクに似て来たのである。
後ろから指示してポテンシャル引き出しながら私を使っている。
しかも前衛前提の指示を出しているのが組んでいて分かる。
角を曲がり、部屋が見える。
「はいるよ!」
「了解」
「身体加速(短)」
部屋の状況を確認せず10時方向へ加速して飛ぶ。
広い部屋の上空で初めて全体を目視で確認する。
敵と冒険者の配置。完璧である。
戦士風の冒険者が壁際に追い詰められている。
襲っているのはドラゴンウルフだ。
大人の像くらいの大きさで結構デカい。
狼に角と羽が生えたカッコイイ生き物。新米冒険者には荷が重いだろう。
腐ってもドラゴン族だからだ。
耐久値がとても高いため中々倒れない敵なのだ。
注意を反らすために私は上空で叫んだ。
「どぉもぉ!魔法使いでぇすッ!」
冒険者とドラゴンウルフが上空を見上げる。
「物理無効(短)」
自身にバフを付与し鋼の杖を振り上げる。
「ファイヤーボール!!!!!」
-----------チュドォオオオンッ!
私は杖で頭部を叩きつけるように殴り倒した。
ドラゴンウルフの頭が地面にめり込んでいる。
「こ……こげてない……」
(ええ、撲殺ですもの……白目)
冒険者の手を取り地面から起こす。
「大丈夫?」
「はい、ありがとうございます」
「こんな無茶しちゃダメだよ?」
「す、すみません」
仲間が助けを求めに来た事など事情を説明した。
「とりあえず、うちのパーティーが上まで連れて行きます」
「すみません」
-----------グルルルルルルッ
「!」
ドラゴンウルフが立ち上がる。流石腐ってもドラゴンだ。
「君は、私たちの後ろに」
「は、はい」
「アル君」
「こっちも準備いいよー!」
-----------ワォオオオオオオオン
ドラゴンウルフが咆哮を上げる。
部屋に凄まじい振動が走った。
すると、部屋の所々に落ちている骨が動き出したのだ。
その骨は組上がっていき100体以上のスケルトンが部屋に充満した。
「……うそぉ」
「お、お姉ちゃん」
弱いモンスターとはいえ数で来られるのは流石にマズイ。
守りながら戦うのは余計にマズイ。
ここはジェイクと合流して新人を逃がしてからの方が楽だ。
「とりあえず、いったん引こう!」
「わかった」
「新米! 逃げますよ!」
「えっ、はい!」
私たちは部屋の出口に向かって走ろうとした。
すると出口が封鎖したのだ。
「!」
「と、閉じ込められた? もしかして」
ダンジョンでよくあるモンスターハウスへようこそ! というヤツだ。
こういう仕掛けの場合、出れる条件はモンスターの全滅or味方の全滅。
(最悪だ)
もはや、やるしかない。
「陣形を引こう。部屋の角に新人、その前に私たち2人の壁」
「わかった」
「身体加速(短)」
私は部屋の隅に向かって高速移動する。目的は隅の確保だ。
「物理無効(短)」
私は数匹のスケルトンを、杖に引っ掛ける。
乗ったスピードで体に回転を掛け一気に杖を払い抜た。
「このやろぉおおおおお!」
----------ガシャガシャガシャーン
スケルトンは猛スピードで吹き飛ぶ。
飛ばしたラインにいたスケルトンも巻き込んで一直線に薙ぎ飛ばした。
(まるで、スケルトンがボウリングのピンの様だ……)
私はその場所に攻め入られないよう陣地を死守しながらスケルトンを叩く。
「おねーちゃーん! 配陣完了だよー」
これで背中を気にしないで済むが一番問題なのはドラゴンウルフだ。
アイツを相手にしていたらスケルトンが陣内に攻めて来る。
スケルトンに気を取られていたらドラゴンウルフとダブルブッキングだ。
(どう攻めればいい……)
「お姉ちゃん。ドラゴンウルフ行って!」
「え」
「僕がスケルトンを相手するから」
数体ならおそらくアルベルトでも楽勝だろう。
しかし数は100体以上はいる。
詠唱中に攻められでもしたら間違いなくヤバイ。
「大丈夫だよ! ちょっと考えがあるんだ」
「……わかった。信じる」
考えても仕方がない。ここはアルベルトを信じる事にした。
私はドラゴンウルフにターゲットを合わせる。
「身体加速(短)」
自身にバフを付与し地面を蹴った。
「物理無効(短)」
ドラゴンウルフの真下に移動し杖で思いっきり頭を殴る。
-----------ガァアンッ
その衝撃でドラゴンウルフは地面に倒れ込む。
これじゃあ、まだ致命傷になっていない。
あと数発必要そうだ。
アルベルトは攻めてくるスケルトンを迎え撃とうとしていた。
「僕が持ってる攻撃手段はエネルギーボルトのみ。ここで書き換えよう」
アルベルトは、エネルギーボルトの魔法構築式を書き換える事にしたのだ。
この世界の呪文と言うのはプログラムの様なものだ。
そのプログラムには指示の入った構築式が組み込まれている。
簡単な例で説明するとこうなる。ファイヤーボールの例だ。
火、維持、球体状変化、着弾地固定、移動、直撃後爆破 = ファイヤボール
例では簡単に書いているが実際の所はもっと複雑だ。
例えば冒頭の火の部分でも膨大な情報量が必要である。
火は物質の急激な酸化に伴い発生する。気体がイオン化してプラズマを生じている状態を空気中に留める事からファイヤーボールの魔法構築式はスタートする。
火を空気中に作るだけでも科学と魔学を理解した上で精密な計算式を組まないといけない。冒頭だけでも長い計算式になる。
それを維持しながら火を空気中で移動し、着弾とエネルギー放出までのプログラムを組むのは科学、数学、魔学を理解しないと構成できない。
一般の魔法使いは既に完成し簡略化した式を詠唱しているだけで、それは理解とは程遠いのである。
アルベルトの言う構築式の改算とは、使用魔法に関連する全ての原理と魔学を理解して式を組み直すという事だ。
「これより魔法構築式の改算を開始する……。エネルギーボルト:根底は魔力、魔力増幅値修正完了、圧縮修正完了、放出率演算・修正完了、空気抵抗値演算完了、速度演算調整完了、形状槍化の演算完了、魔力強度調整完了、落下速度演算調整完了、範囲演算調整完了、科学的不可能な領域を魔学式で補正完了、全構築式の修正完了」
アルベルトは数十秒の間にエネルギーボルトの魔法構築式を改算した。
「エネルギーボルト!」
エネルギーボルトはビームの様に天井へ放たれる。
天井に圧縮された魔力の球体がグルグルと渦巻いている。
「照射!」
---------シュバババババババッ
一気に天井から魔力の槍が、雨の様に降り注いだ。
魔力の槍で貫かれたスケルトンは崩れていく。
「……やば、これ負担デカいな」
アルベルトに襲い掛かって行ったスケルトンを含め部屋の半分が壊滅した。
「お姉ちゃん! 一度こっちへ!」
私は、そのままバックステップを踏んでアルベルトの所まで引く。
「す、すごいね。今の」
「体ボロボロだよ~」
どうやら放った魔法は相当、魔力消費が激しい様だ。
「威力が少し思ったのと違ったから、もっかい修正した」
「え」
「もう一発! エネルギーボルト!」
杖の先から魔力が天井に向かって放たれる。
さっきと同じくらいの大きさの魔力の球体が上空でグルグル渦巻いている。
「いっけぇええええ!」
-----------ドガガガガガガガガガアッ
空からミサイルが落ちている様な光景が目の前に広がる。
私たちの陣取っている角を除き、部屋全体に魔力の槍の雨が降り注ぐ。
「ふふふ。出力修正しただけで、ここまで威力が上がるのか」
マイエンジェル。帰って来て……。
スケルトンは全滅。
ダメージは負っているがまだドラゴンウルフが生きている状態だ。
-----------ドタッ
「!」
アルベルトが横で倒れる。
「ちょ、アル君!」
「ごめ、おねえちゃん。無理しすぎた」
「よく頑張ったよ。後は任せて」
残ったドラゴンウルフはダメージを喰らいすぎて興奮しているようだ。
毛が逆立ち威嚇のポーズを取っている。
ドラゴンウルフは大きく息を吸う。
口から炎が漏れ出している。ブレスが来る。
「物理無効(短)」
バフをかけ私はゴルフボールを打つ姿勢を取る。
「そーは、させないっつーのぉッ!」
地面を思いっきり杖で撃ち付けた。地鳴りの爆音が室内に木霊する。
私は撃ち付けた杖を、そのまま地面から一気に振り抜いた。
巨大な石の一枚床が浮き上がる。
凄い速度で回転しながらドラゴンウルフに飛んで行った。
--------------ドォオオオオオオン
ブレスを吐こうとしていたドラゴンウルフに巨大な石の一枚床が直撃する。
床の下敷きになったドラゴンウルフが勢いでブレスを吐き出した。
被さった床が壁になり炎のブレスが逆噴射して自身の体が燃える。
そしてドラゴンウルフは動かなくなった。
「ストーンエッジ!」
いちおう魔法名は呟いておく。
「す、すげぇ! すげぇよぉ!!」
新米冒険者の子は、私たちの戦闘を見て目を輝かせ興奮していた。
無事ミッションコンプリートである。
私はアルベルトを背負って新米の子とダンジョンから脱出したのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私たちの噂は、新米冒険者の間で瞬く間に広がる事になる。
とんでもなく強い前衛の魔法使いがいると……。
報酬を受け取りに冒険者ギルドへ立ち寄った。
「きゃーーーー! チカゲさんよーーー!」
「うおっ、前衛の魔法使いだ!」
「……え」
理解できない事が目の前で起こっていた。
女の子にキャーキャー言われて囲まれているのだ。
「あ、あの。私、魔法使いなんですが前衛やりたいんです!」
「前衛に出てドラゴンウルフを殴り飛ばしたってマジですか?」
「話聞いて、凄い憧れてしまったんです!」
「どうやったらパーティーご一緒していただけますか?」
若い子の間で、凄く人気者になっていたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
-----------ピコン
ユニットの制限ロック①が解除されました。




