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こんげーむ!  作者: 我楽太一
第七章 狐の札
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5 難敵②

『いきなり140万の負けか……』


『きついですね』


 内心で歯噛みする与人に、コンも同じような相槌を打つ。


 偶然強い役ができたのか、それとも憑き物の能力によるものか。変化でスリーカードを作ったにもかかわらず、与人は澄香にフラッシュを作られ負けてしまった。おかげで、チップは800万から660万まで減ってしまっている。


 しかし、与人は既に考えを切り替えていた。


『でも、これで最初に大負けした印象がつくからな。能力を隠すいい煙幕になっただろう』


『じゃあ、次のゲームも……』


『ああ、変化を使おう』


 第2ゲームもワンペアができていたので勝負続行。チェンジで強くなった役を、打ち合わせ通り変化を使って更に強くする。


 そして、二度目のベットラウンド。最低額の10万をベットした澄香に対して、与人は言う。


「レイズ、50万」


 これを聞いて、コンは不安げに尋ねてくる。


『そんな大金賭けて、大丈夫なんですか?』


『やっぱり資金の差はでかいからな。こっちの手の内が知られる前に、できる限り稼いでその差を埋めておきたい』


 変化は強力な能力だが、性質を知る相手にはその限りではない。カードをチェックするだけで、簡単にイカサマを防げるからである。そこに、更に何倍ものチップ差というハンデまで加わると、勝利は一気に遠ざかってしまうだろう。


『それに、少額の勝負になったら、相手も能力を使うのを控えるようになって、詳細は分からずじまいのままだろう。そうなったら、仮に今後大勝負を仕掛けられるチャンスが来ても、相手の能力の影に怯えなきゃならないことになる』


『はぁ……』


 納得いかないのか、それとも納得した上で不安の方が大きいのか。与人の説明に、コンは曖昧にそう返事をした。


 一方、与人のレイズに対して、澄香は動じることなく答えた。


「いいでしょう。それではレイズ、10万でお願いします」


 これに、与人は少し考える。


(また少額レイズか……)


 相変わらず、10万だけのミニマムレイズ。澄香はあくまで、こちらの出方を窺う姿勢のようだ。


 さて、更なるチップ獲得を狙って再びレイズするべきか、それとも負ける可能性も考慮してコールするべきか……


(あまり無理はしない方がいいかな)


 相手の能力が分からない以上、大物手でも負ける可能性は否定できない。それに、仮に相手の能力が分かったところで、その時にチップが尽きていたら何の意味もない。直前のコンの発言もあって、与人はそう結論を出した。


「コール」


 そう言って、与人は手を明かす。


「フルハウス」


 与人の手札はスペードのA、クラブのA、ハートのA、クラブの7、ハートの7。A三枚を使ったフルハウスだから、フルハウス同士の勝負になっても与人が勝つ。この手に勝てる役は、あとはもうフォーカードとストレートフラッシュしかない。


 これに対し、澄香の手札は――


 スペードのQ、クラブのQ、ハートのQ、ダイヤのQ、ダイヤの5。


「フォーカードです」


「――――ッ」


 与人は絶句する。フルハウスで負けることなど、そうそうありえることではない。コンのアドバイス通り、最後のレイズを自重して正解だった。


(二連続で大物手…… まさかただの豪運なわけないよな)


 第1ゲームのフラッシュに、第2ゲームのフォーカード。この二つの役が最初に配られた五枚で完成する確率はそれぞれ、約500分の1、約4000分の1である。


 チェンジを行うので実際の出現率はこれより高いが、それでもそう易々と作れるようなものではない。チェンジの仕方にもよるが、フラッシュは90分の1、フォーカードは400分の1程度の出現率だと言われている。偶然ではなく能力によるものだと考えた方が自然だろう。


(しかし、一体どんな能力だ……?)


 澄香と羽黒の勝負から想定した候補は、透視、予知、念動力、機械操作などである。だが、どの能力も今の状況を説明できそうにない。やはり大小の時は実力勝負で戦っていて、本当の能力は別にあるのではないだろうか。


 そうして与人が考え込んでいる時だった。


『あの、与人様』


 コンがおずおずと声を掛けてくる。


『どうした?』


『相手の能力なんですが……』


 遠慮がちに彼女は言った。


『多分ですけど、変化なんじゃないかと』


          ◇◇◇


 第3ゲームは与人が二連続で早々に降りた為、ゲームが成立したのは三回目のことだった。


 そして、その第3ゲーム。二度目のベットラウンドで、与人は再び大金を賭ける。


「ベット、50万」


 こうして大きく動いてきた与人とは対照的に、澄香は今回も見の姿勢だった。最低額だけレイズを行う。


「ではレイズ、10万で」


 これを聞いて、与人はチップを更に上乗せする。


「レイズ、50万」


「……レイズ、10万」


 再び50万もレイズされて、さすがに動揺したのだろうか。少し考えてから、澄香はそう答えた。


 対する与人の腹はもう決まっていた。


「よし、受けよう。コールだ」


 そうして、互いのチップが計140万ずつで揃い、ショーダウンとなる。


 与人の手は、スペードの8、クラブの8、ハートの8、スペードのJ、スペードの5。


「スリーカードだ」


 一方、澄香の手は、クラブのK、ハートのK、ダイヤのK、クラブの10、ハートの10。


「フルハウスです」


 スリーカード対フルハウス。一見、またしても与人が負けたように思える。


 しかし、与人は澄香のカードに手を伸ばしていた。


「フルハウス? 勘違いじゃないか?」


 端の一枚を指で叩くと、その瞬間に変化が解けて元の絵柄が露わになった。


 ハートの10から、ダイヤのJにカードが変わる。


 これで、役もフルハウスからスリーカードに変わった。


 ただ、同じスリーカード同士でも、8を三枚の与人とKを三枚の澄香では、数字が大きい澄香の方がまだ勝っている。


 だから、与人は更に(・・・・・)他のカードも叩いて(・・・・・・・・・)変化を解いた(・・・・・・)

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