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こんげーむ!  作者: 我楽太一
第五章 狐士無双
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34/61

6 反撃開始

 二回戦でも、与人の苦戦は続いた。


「ロン。3900」


(くっ)


 忍に振り込んでしまった与人は、心中で苦渋の声を漏らす。


 こちらのテンパイには振り込まない。こちらの不要牌でロン和了する。そんな忍の打ち筋は、二回戦でも変わらなかった。


 結果、二人の点差は見る見るうちに開いていき、東三局を終えて与人が2万2800点、忍が3万8600点。点差にして、1万5800点もの差がついていたのだった。


 更に――


「ツモ」


 そう与人が宣言した、その瞬間にも対面から手が伸びてくる。手牌の内の五索を忍が叩くと、元の東に戻ってしまった。


「チョンボですね」


「失礼」


 表面上はそう謝りながら、与人は内心で考え込む。


(偶然じゃないわけか……)


 一回戦の東一局同様、変化させたことも、変化させた牌も忍は見抜いてきた。何かしら憑き物の能力を使って、こちらの行動を把握しているのはもう間違いないだろう。


 今の変化は、相手の能力を確認する以外に、挽回を狙う意味もあった。しかし、変化を見抜かれた結果、誤ロンのチョンボでマイナス8000点。状況は余計に悪化してしまった。


 そうして、チョンボでやり直しとなった東四局。


「リーチ!」


 前局のミスを取り返すべく、与人はわずか五巡で電光石火のリーチを掛けた。


 が、そのあとが続かない。ツモ和了もロン和了もできないまま、与人はひたすら無駄ヅモを繰り返す。


 そして、迎えた十一巡目。与人が牌を捨てると、その瞬間に忍が動いた。


「ポン」


 ポンは鳴きの一種である。手牌に同じ牌が二枚以上ある時、他のプレーヤーが捨てた三枚目を使って面子を作ることができるのだ。


 またこの時、忍がポンした牌は白だった。白・發・中の三元牌は役牌ヤクハイともいって、これらは名前の通りどれかを三枚揃えるとそれだけで一翻の役がつく。


 だから、役牌の白を鳴いたこと、与人のリーチを相手に勝負を降りずに鳴いたこと、この二点を考えると、忍ももうテンパイした可能性が高い。


 このままでは、忍に先に和了られてしまうのではないか。そう焦る与人だったが――


「ツモ!」


 ポンが行われた場合、ポンをしたプレーヤーの下家(次の番のプレーヤー)のツモからゲームが再開される。こうして忍のポンでツモの順番がずれた結果、幸運にも与人は和了牌を引くことができたのだった。


「リーチ、ツモ、チートイ、ドラドラ。3000・6000」


「……はい」


 跳満ハネマン(1万2000点)の大物手である。結果論とはいえ、自分の鳴きを悔やむように忍は静かにそう答えた。


 対照的に、コンは弾むような声を出していた。


『やりましたね!』


『ああ』


 与人も明るい調子で言う。


『今ので能力の可能性が絞れた』


『えっ?』


 驚くコンに、与人は解説を始めた。


『「変化させた牌を見抜く」「一度も相手に振り込まない」「相手の不要牌を狙って和了る」。このあたりから予想していたのは透視なんだが……』


 忍が透視でこちらの手牌を透かして見ていれば、二萬を九索に変化させたことも、和了牌が三萬‐五萬の二牌であることも、タンヤオ狙いで一筒は捨てるだろうことも、全て見抜けたことに説明がつく。しかし、――


『透視で山を見れば、ポンでツモ順がずれたら、俺が和了るのが分かったはずだ』


『あっ、それもそうですね』


 納得したようにコンはそう言った。


 与人がツモった牌は、ポンしなければ本来忍がツモるはずの牌だった。つまり、忍が和了牌を握り潰せば、与人の跳満ツモを阻止できたのである。だが、どういう訳か、忍はそれをしなかった、


 またこれまでにも、忍は切ったのと同じ牌を次順でまたツモって、再び切るようなことがあった。あれも不要だから二枚とも無視したのではなく、単純に次にツモる牌が分からなかったせいだと見ていいだろう。


 一連の行動から考えて、忍がこちらの手牌を把握している可能性は高い。だが、忍の憑き物の能力では伏せられた山牌までは分からない。だから、透視ではないのだ。


『透視なら、将棋のカンニングにも説明がついたんだけどなぁ…… 憑き物とはまた別に協力者がいて、そいつが隠しカメラを使って別室で対局を見ながら携帯を操作。斎藤はそれを憑き物の力で透視して確認、みたいな感じで』


 しかし、残念ながら、この予想はハズレだったようだ。もっとも、透視が相手ではろくな対策が思い浮かばないから、その点はラッキーだったかもしれないが。


 話を聞いて、コンが改めて尋ねてくる。


『でも、透視じゃないなら、どんな能力なんですかね?』


『次に疑っているのは読心だ』


『読心……』


 少し考えたあとで、コンは口を開く。


『なるほど。こちらの心を読めば変化させた牌を当てることはできますけど、ツモをずらしたら和了られることまでは予想できませんもんね。将棋の時は、携帯を操作する協力者の心を読めば最善手が分かりますし』


『まぁ、まだ確定じゃないけどな』


 透視説に矛盾があるから、新たに読心説を唱えただけである。たとえば、何か条件や制限つきの透視なのかもしれないし、単に先程のポンが忍のミスだっただけかもしれない。その為、透視説も完全否定はできないのだ。


『だから、次の局ではそれを確かめにいく』


          ◇◇◇


 半荘の折り返しとなる南一局。


 その開始に際して、忍は状況を確認する。


 現在の得点は、自分が3万7600点、相手が2万6800点。跳満を和了られたとはいえ、まだ自分が1万点以上リードしている。


 しかし、局数もまだ四局も残っているから決して磐石とは言えない。ここから高い手で更にリードを広げていくか、安い手でどんどん局数を削っていく必要があるだろう。


 そう意気込んでいたからこそ、忍は相手の行動に思わず怪訝な顔をするのだった。


「……何のつもりですか?」


「何って、見ての通りだよ」


 伏せて配られた十三枚の手牌。


 与人はそれを伏せたままにして(・・・・・・・・)並べていた(・・・・・)


「牌なんか見る必要はない。俺はこのまま伏せて打つ」

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