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第9話 リー家の人々

 玄関を入ると、すぐに小さな女の子が早口の英語をまくしたてて、フランチェスカに抱きついていく。横から見てると、高速で切れのあるフライングボディアタックなんだが……

 もちろん、フランチェスカは軽々と受け止めている。

 二人ともニコニコとしてるから、別にこれは戦いでなく、普通のスキンシップなんだろうな。


 フランチェスカが早口の英語で女の子に何か言っている。途中でカズヤって言葉が聞き取れたから俺のことを説明してるのかな?

「ハジメマシテ。ワタシノ ナマエハ マーガレット デス。

 カズヤオニイサマ ヨロシク オネガイシマス」

 ゆっくりと、たどたどしい日本語だが、正確に俺に挨拶してきた。


「和也、下の妹のマーガレットよ。まだ6歳だから手を出しちゃダメよ」

「だから、俺はロリコンじゃないと……」


「マーガレット、よろしくな」

 そう言って、マーガレットの頭をなでると、すっごく素敵な笑顔をくれた。

 ロリコンじゃないとは言ったが、マーガレットはめちゃくちゃ可愛らしい。この笑顔は反則だろう。

 

 玄関先でマーガレットと話してるうちに、キャサリンに声をかけていたようだ。

 何人かの人たちが集まってきた。


 中でも二人、特別に大きなオーラを出す男女がいる。

 この二人がフランチェスカの両親か?

 そして、この二人こそが二番目と三番目の人物なんだろうか?


 俺は豪華な部屋に案内され、柔らかなソファに腰をおろした。

 テーブルを囲んだ形で俺を含めて6人が座る形になり、アイリーンを含めた数名が立ったままでいる。

 座ってるのが家族で、立ったままなのが使用人ってことかな?


 フランチェスカが立ち上がって、俺にも立つように合図するので従った。

「それでは皆に紹介するね」

 フランチェスカは流暢な英語で俺のことを紹介しているようだ。日頃の不勉強ぶりが祟って、さっぱりわからない。


「じゃ、座ってね」

 紹介が終わったようだ。フランチェスカの指示で俺はまたソファに腰を下ろす。


 正面の女性が立ち上がる。綺麗な金髪の女性だ。

 そして、オーラもひときわ大きい。フランチェスカとほぼ同じくらいのオーラだ。

「はじめまして、和也さん。

 わたしはプリムローズ。フランチェスカの母で、リー一族の現在の当主です。

 ようこそ、我が一族へ。歓迎いたします」

 フランチェスカと比べるとややたどたどしい日本語かな。

 そんなことより、フランチェスカの母親なんだよな、若くね?


「失礼かもしれませんが、とてもお若く見えますね。フランチェスカのお姉さんと言っても普通に信じられる気が」

 こんなこと言っても大丈夫かなとは思ったが、俺は聞いてみた。

「あら? とってもお上手なのね。でも、実際のところ、それほどの年齢でもないのよ」

「お母さんはまだ32歳なの」

 横から小さな声でフランチェスカが教えてくれた。

 え、それってフランチェスカを16歳で産んだってこと?

「素敵な男性に巡り合っちゃったからね」

 そう言って隣の男性のことを色っぽい目で見ている。どうやら今でも夫婦仲はとってもよろしいようですね。


 プリムローズの隣に座っていた男性が立ち上がって、英語で話し始めた。

 どうやら日本語は話せないようだ。一族皆、外国語がペラペラでなくて安心したよ。

「それじゃ、わたしが通訳させてもらうわ」

 プリムローズが俺に日本語で通訳してくれたが、想像どおりプリムローズの旦那で、フランチェスカの父のオズワルドだそうだ。


 オズワルド?

 玄関のところで最初に見たときから、なんとなく見た記憶があるって気になってたんだ。

「オズワルド・マクベイン?」

「オー」

 オズワルドが何やら感激した感じで英語でまくしたててくるけど、わからないって。


「若いのによくその名前を知ってるわね」

「確かに俺が生まれた時にはすでに引退してたから、録画でしか見たことはありませんけど、格闘技を志した者なら誰でも知ってますよ。

 無敗のまま引退した伝説のヘビー級チャンピオンの名前くらいは」

 そう、オズワルド・マクベインはわずか8戦ながらすべて1ラウンドKOでヘビー級チャンピオンになった最強のボクサーだ。

 無敗のまま若くして、急に引退してそれ以降まったくマスコミに登場しなくなったようだけど、ここでこうしてるとは知らなかった。


 そして、この二人が二番目と三番目の実力者なわけか。なるほど両親なら、フランチェスカの婿には当然不適格だよな。

 オズワルドの方のオーラはプリムローズと比べるとずいぶん小さい。とは言うものの、俺よりはるかに大きいな。

 この二人を俺が将来的に超えることができるって言ったよな。ちょっと信じられないんだが……


 続いて、斜め前に座っていた女の子が立ち上がった。やはり金髪だが、短くスポーティな感じの髪にしている。

「ワタシハ オフェーリア。フランチェスカ ネエサマノ イモウトヨ。ヨロシクネ」

 こちらもたどたどしくはあるけど、割とフランクな感じの日本語で挨拶してくれた。フランクにしゃべるのはそれなりに理解度が高くないと難しいだろうな。


「オフェーリアは12歳だから、もう手を出しても大丈夫よ」

 横からフランチェスカがそう付け加えるけど、何度も言うけど俺はロリコンじゃない。

 そして、12歳はまだ手を出しちゃダメじゃないか?

「お母様が結婚したのは14歳だから、いいんじゃ? このミネソタ州は16歳からだけど、州によっては12歳からOKよ」

 アメリカって12歳でも大丈夫だったりするのか…… まぁこの一族に細かい法律は関係なさそうだね。

 どちらにせよ、フランチェスカの妹に手を出すつもりとかはないからな。


「マーガレットはもう紹介済みね。

 この4人以外に多くの一族がいますが、夕食の時に紹介を兼ねたパーティーをごく身内で開きますのでその時に紹介させてもらいます」

 オフェーリアにそう告げられて、家族との面会はこれで終了のようだ。

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