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第8話 敷地

 その後もフランチェスカから一族のことについていろいろ聞かされた。

 あまりにもスケールの大きい話に俺は呆れるばかりだ。

 とにかく、一族が歴史的にも古く、そして世界の権力に深く根付いており、表面的な実行力はないが恐れられ、世界のパワーバランスの中でそれなりの影響力を持っていることがわかった。


 まぁなんだ。

 触らぬ神に祟りなしって感じで、ずっとそれなりに貢物を出されてる感じか?


 政治的にはそんな感じだが、経済的には中国発祥ってことで華僑かきょうたちの総元締めみたいな位置づけにあるそうだ。

 その上、ヨーロッパ時代にユダヤ系の財閥とも縁付いているようで、特に経済的には何もしてないものの資産は運用されて勝手に増えていく一方らしい。

 羨ましい限りだ。


 フランチェスカからいろいろな話を聞いた後は、仮眠。

 寝不足気味なので寝れるかなと思ってたんだけど、慣れない環境で、しかも隣にフランチェスカがいる。

 いい匂いもするし、ドキドキして眠れるわけないじゃないか……


 って思ってたんだけど、いつの間にか寝てました。

 意外とずぶといな俺も。


「もうまもなく着陸ですので、シートベルト着用をお願いします」

 ぐっすり眠ってたんだが、フランチェスカの秘書のキャサリンに二人とも起こされた。

 うーん中途半端な目覚めだ。


「おはよう」

 フランチェスカは元気マンタンに挨拶してきたけど、俺はイマイチ。

 なんか適当な返事しかできない。


 窓から外を見ると、朝の様子。現地時間で朝の八時前らしい。

 日本のお昼前に出発して、十時間以上飛んで体感的には夜のはずだが、到着すると朝っていうのは理屈ではわかっていても、感覚としてはちょっと受け入れ難いものがあるな。

 世界を股にかけて活躍してる人たちは、この感覚に慣れてしまってるんだろうか。ちょっと尊敬したくなる。

 この時差ボケって慣れたりするのかな?


 飛行機のタラップを降りると、そこは田舎の飛行場って感じ。閑散としていて、飛び立った時の米軍基地の張り詰めた空気と違ってのんびりした雰囲気に包まれている。


「ここからは、ヘリで向かいますのでこちらへ」

 ヘリと言っても来る時に乗った米軍の軍用ヘリよりずいぶん大きいな。内装もすごく豪華だ。

「これはリー家の所有ヘリでございます」

 まぁ、自家用ヘリくらいで驚いていてはもうどうしようもないんだろうな、きっと。

 俺も少し慣れた。


「ここからまだ時間かかるのかな?」

 気軽に聞いてみたんだけどこれが大きな間違いだったようだ。

「ここはもうリー家の敷地内でございます。本宅までの移動にはヘリで二十分ほどで到着いたします」

 キャサリンが打てば響くって感じですぐに答えを返してくれたけど……


 少し慣れたから驚かないというのは嘘だ。

 驚いたって言うより呆れたよ。ってことはこの飛行場もリー家専用ってわけか?

 個人の飛行場で大陸間飛行できるような大型機が離着陸できるっていうのかよ……


「ここってアメリカのどのあたり?」

「アメリカ北中部のミネソタ州北部でカナダとの国境付近の国立公園の一部です。敷地の北の方は一部カナダにまたがっております」

 キャサリンの回答に俺は少し疑問をもった。

「アメリカじゃ、国立公園って個人の家とか建ててもいいの?」

 俺の質問にキャサリンが回答を少しためらっていると、フランチェスカがフォローしてくれた。

「世間的には内緒なの。グーグルアースで見ても、森しかないように見えてるから大丈夫よ。

 ここの上空は飛行機も通らないことになってるし、防衛上も完璧だから」

 グーグルアースさんもだまされてるんだね……


「早く行こうよ」

 フランチェスカにかされて、ヘリに乗り込む。

 ヘリが上空に上がると、右手には大きな湖も見れる。

 森に囲まれた湖……いい眺めだ。国立公園って言っても日本のイメージで考えると規模が段違いだな。

 見渡す限りの森、まぁ少しくらい個人宅や飛行場とかあっても気にならないか。


 キャサリンの予告どおり二十分ほどで目的地へ付いた。

 これがリー家の本宅?

 そこそこ大きくて立派であるのは確かだけど、あまりに普通な感じで逆にびっくりした。

 お城みたいなのがくるんじゃないかと思ってたから……


「ここ?」

 俺がフランチェスカに尋ねると、

「うん」

 って笑顔で返してくれる。

「普通だな。それほど大きくないし……お城とかをイメージしてた」

「そりゃそうよ。家族と使用人が住んでるだけだからね。生活に必要な広さがあれば十分でしょ。

 お城とか使いにくそうじゃない?」

 確かにそのとおりだよな。

 理屈ではそれが正しいってわかってるけど、ここまでずっと桁違いなのばかり見せ続けられて最後がなんか普通ってのは、なんとなく納得がいかないんだけど……


「何人くらい住んでるの?」

「ここは両親と二人の妹がいるだけね。他の一族は別の屋敷にいるから。

 あとは使用人が合わせて十人前後かな?」

「妹がいるんだ」

「うん、後で紹介するね」

 フランチェスカはとてもニコニコしている。

 使用人も非常識な数がいるわけじゃなさそうだな。お金持ちの家の使用人の数の平均値とか知らないから、十人前後ってのが多いのか少ないのかわからないけど。


 キャサリンに案内されて、俺はリー家の本邸に足を踏み入れたのであった。

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