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第7話 歴史

「フライトは12時間位かかるし、あっちとの時差は14時間。完全に昼夜逆転しちってて大変だからね。

 仮眠しておいた方がいいと思うよ」

「そうは言ってもさっき起きたばかりなんだよな。ちょっと寝不足気味ではあるけどさ」

「昨夜は頑張っちゃったもんね」

 誰のせいだよ。


「んじゃ、時間もたっぷりあるから、もうちょっと詳しくうちの一族のことをお話しましょうか」

「そうしてくれ、いろいろ常識崩壊してやってられんから」


「古代中国発祥ってのは話したよね。どのくらい昔か正確なところはわからないんだけど、春秋戦国時代にはすでに歴史にちらほら登場してるみたいだね。

 その頃から強い男性を求めてたみたい。有名なところではしん白起はくきとか、いたみたい」

 秦の白起とか言われても、知らないんだけどなぁ……有名なんだろうか?

「時代はそのまま進んで、しん末期の項羽こううとか、三国志時代の呂布りょふとかの血も受け継いだりしてるみたいだね」

 そのあたりは俺も聞いたことがある名前だ。関羽かんう張飛ちょうひじゃなく呂布ってところがいかにも最強っぽいな。


「そうやって王朝は変われど一族はひっそりと血脈を繋げるうちに段々と時の王朝も無視できない存在になってきたのよ。

 なんといってもその頃には中国でも最強の存在になっちゃってたわけで。

 うちの一族の機嫌を損ねれば、王朝まとめて皆殺しなんて簡単にできちゃうと思われて。

 もちろん、そんなことしたりしてないよ。

 でも、地方領主といさかいを起こして、その全軍を一族のみで倒したりってことが何度かあったりで」

 物騒な話だけど、まぁそのくらいのことはありそうな話ではあるな。


「そんな感じでいつのまにか、中国の歴史を闇で支配する一族って感じに思われて代々続いていたわけ。

 でも、十三世紀になって中国史は大きな変革を迎えたんだけどわかるかな?」

「いきなり歴史の授業になったな、わかんないよ」


「わからないかなぁ、日本で言えば鎌倉時代ね。モンゴル帝国ってやつに中国が支配されちゃったわけ。

 モンゴル帝国っていうか、中国ではげんね。今までの漢民族の王朝と比べて、フビライに一族が敵視されちゃってね。

 まぁモンゴル人の武将を婿にしようとしてちょっと諍いがあったみたいなんだけど……

 とにかく、そんな感じで元と一族との全面戦争になりかねなかったのよ。

 でもまぁ、ちょっと物騒なことは避けましょうってことで、一族の大半は移住することにしたのよ。ちょうど元寇げんこうとかあったので、それに紛れて日本へ」

 おや、日本にもいたんだ。


「それからしばらくは九州付近でのんびりしてたらしいんだけど、徐々に中央の方に勢力を伸ばして朝廷や鎌倉幕府・室町幕府とかにもだんだん影響力を及ぼすようになったわけ。

 もちろん、日本でもいろいろ強い武将の血がまざったわよ。村上義光むらかみよしてるとか知ってるよね」

「知らない名前だなぁ……」


「えっ村上義光を知らないの? ちゃんと太平記くらいは読もうよ。基礎知識だよ」

 アメリカ人に太平記教わるっていうのは問題があるな、確かに。


「じゃ、上泉信綱かみいずみのぶつなとか宮本武蔵みやもとむさしとかはどうかな?」

「宮本武蔵はもちろん知ってるよ。上泉信綱も聞いたことがある気がする……そうだ、新陰流しんかげりゅうの人だ」


「うん、そうそう。

 まぁそんな感じで日本でもそれなりに落ち着いていたんだけど、江戸幕府が鎖国しちゃったでしょ。

 ちょっと一族の方針に合わないってことで、それを機に移住することになったのね。

 当時、日本に来てたオランダ人の縁でヨーロッパの各地へ」

 一気に日本からヨーロッパに行ったわけか。


「まぁその頃になってくると、戦いも様変わりしちゃってあまり個人の武力とかはあまり関係なくなってきちゃったんだけど、それでも政治と暴力はつきものって感じなの。

 特に小国間の勢力争いが激しいヨーロッパでは一族の力が引っ張りだこになっちゃうの。

 一族としてはどこかの勢力に加担してなんて気は毛頭ないんだけど、敵勢力に一族の力が渡ったらって考えるといても立ってもいられないんでしょうね。

 そうやって、各国が競うように一族にお金やら権力やら貢いでくるわけ。

 特に一族は当主の意見が絶対って感じだから」

 そういうわけで、なんかありえないくらいの権力を持ってるってわけか。


「アメリカに本拠地が移ったのは第一次大戦の頃かな。

 たいした理由はなかったみたいだけど、将来性がありそうな感じだからってだけかな。

 もうその頃になると、いろいろ通信網も発達して一族は世界的な存在になったみたいよ」

 歴史の裏にずっと存在して力を持ってはいたけど、特に何もしなかった一族ってことか。


「これからも特に何もするつもりはないと思うよ。

 うちの一族に手を出してこなければこちらからちょっかい出すつもりはないからね」

 それも、なんか核保有国の理屈みたいな気はするんだけどな。


「でも女系一族なんだろ? あまり血が広がって行きにくいイメージなんだけど」

「女系一族って言っても、長女の家系以外は二代くらい進むと普通に男の子も産まれるみたいだよ。

 医学的にどういう理屈なのかはさぱりわかってないんだけどね。

 ただ、そうして産まれた男の子は能力的にもそれほど優れてないことが多いらしいから」

 ふーん、そういうふうなんだ。


「まぁそんな感じで、一族でも血の薄まった女性は各国の支配者階級のところに嫁に行ったりで、世界の名家のほとんどは一族と縁付いていると思うよ」

 知られざる世界の裏の常識か。

 ってことはフランチェスカの一族を中心に考えれば世界中の権力者は遠い親戚同士ってわけか?

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