第24話 龍
そこからのダンジョン各層では特筆すべき事はなかった。
必要なアイテムがなかなか揃わずに時間を取られたこともあったが、確実に攻略を重ねて俺たちはついに最下層へ到達したのだ。
俺たち2人の前には大きな扉がある。
「やっとここまで来たね」
「この層にいる龍とかを倒せば継承の儀ってやつもクリアできるんだよな」
「うん、さっそく行ってみようか」
龍を倒すために必要なアイテムもここまでで2人分揃っている。
フランチェスカの両親もかつて倒したことがある龍なんだから、それよりすでに強いフランチェスカなら問題ないはずだ。
俺の方もここまで来る間に十分に鍛えられているのが実感できている。
何も恐れるべきものはないはずだ。
「よし、行くぜ!」
俺とフランチェスカと2人で重い扉を押し開けた。
扉を開けた先は明るい空間が広がっていた。これまでの各層と違い、天井もはるかに高い。
ふと気づいて振り返ると、さっき開けたはずの扉はどこにもない。
どうやら、先程までとは別のどこかへ転移させられたようだ。
(ひさびさの客人の登場のようだな)
頭の中に大いなる存在の意志が伝わる。これは龍の意志か?
(いや、我はこのダンジョンを司る意志。龍はただお前たちを測るものにすぎない)
そういうものなのか……こういう話とは聞いてなかったな。
教えてくれてもよさそうなものなのに。
(ふふふ。それはムリというものだ。ここを離れれば我との会話はすべて忘れ去る)
そういう仕様かよ。まぁいいや。
どっちにしろ龍と戦うんだろ?
(そういうことだな。準備はいいか?)
隣にいるフランチェスカを見ると、ちょうどフランチェスカの方も俺の方を見ていた。
目と目があう。
そしてどちらからともなく頷きあう。
さぁ行くぞ!
俺が戦いの意志を示すとともに、目の前に巨大な龍が出現した。
いよいよ、ラストバトルだ。
俺は手にしたアサルトライフルを龍に向けて発射した。しかし、その銃弾はあっけなく龍のウロコに弾かれる。
どうやら半端な攻撃ではダメージを入れれないようだな。
さて、どう攻めたら有効なダメージを与えられるんだろうか?
そう思案していると、フランチェスカから声がかかった。
「数秒でいいから、龍の注意を惹いて」
「わかった」
龍のタゲを取るってのもそうそう簡単ではなさそうだけどな。
俺は右手に走ってフランチェスカから距離を取って、龍の目を狙ってアサルトライフルの弾丸を発射した。
狙い通りに命中した弾丸が龍の逆鱗に触れたようで、俺に向かって龍のブレスが浴びせられる。
ブレス耐性のアイテムは苦労して8層でGETしてあるんだ。
まぁこのアイテムがあっても、ブレスは十分に痛いんだけどな。
だが、痛い思いをした甲斐があったっていうものだ。
フランチェスカの溜めていた気が一気に爆発した。
右手にすべての気を集めたフランチェスカの一撃が龍のわき腹につきささったのだ。
脆くも崩れ落ちる龍。
それにしても一撃かよ……
ラスボスっていうから、もう少し苦労するかと思ったんだけど、あっけなかった……
最強すぎるだろ、フランチェスカ。
龍の巨体はしばらくして消滅し、その後には青い石が1つ輝いていた。
「お、レアアイテムが手に入ったみたいね」
フランチェスカは青い石を拾い上げるとにっこり微笑んだ。
「お疲れ様」
「ありがとうね」
フランチェスカがいきなり口づけをしてきた……と思ったら、口に液体が流れ込んできた。
ブレスの痛みが体から消えていくのがわかる。
「痛い思いさせちゃってごめんね」
「なーにこれくらい。へっちゃらよ」
フランチェスカとハイタッチをして、俺たちは帰還につくのであった。
長らくほったらかしにして申し訳ありませんでした。
未完のままってのが気になっていたので、少し書き足して完結させることにしました。
次回が最終話になります。




