第12話 パーティー
夕食時に一族を集めてのパーティーが開かれた。
俺は先程試着させられたばかりの真新しいタキシードに着替え、フランチェスカも真っ白のドレスに着替えてきた。
その時までフランチェスカのことは、制服以外はスポーティな軽装しか見たことなかったら、こういうふうに着飾ったフランチェスカを見るのは初めてだ。
「とても綺麗だよ」
「ふぇ!」
耳元でそっと囁いたら、すごく真っ赤になってた。思ってた以上にチョロそうだな、フランチェスカって。
フランチェスカの妹たちのオフェーリアは薄い黄色の、マーガレットはピンクのドレスを着て現れた。
二人ともすごく可愛らしい。
主催は現当主であるフランチェスカの母プリムローズ。その横にオズワルドが気難しい顔をして立っている。
こういうパーティーとかは嫌いなのかな?
そして主賓は次期当主となるフランチェスカとその婿である俺だ。
俺は婚約者としてじゃないのかと思ったら、すでに婿なんだそうだ。
いやまぁ、そりゃすることしたわけだから、それでもいいって言えばいいんだが……俺まだ15歳だぞ、それでいいのか?
あちらこちらに挨拶してまわるのかと思ってたんだが、どうやら客の皆が俺たちのところへ挨拶に来るらしい。
俺が待ち構えていると、アイリーンが初老の男女と共に近づいてきた。
日本でアイリーンと対戦して以来、俺の人生は大きく動き始めたんだったな。
「和也、こちらは私の母で先代の当主であったアマンダ、そして父のバーナードだ。
妹のアイリーンのことはもう旧知だと思う」
先代当主というだけあって、年を取ってもまだまだ強そうだ。そしてバーナードの方も腕に自信がありそうに見える。
バーナードは雰囲気からして武闘家じゃなく、軍人って感じだな。左目の横に傷跡が残ってるのがわかる。たぶん全身に傷跡がありそうな感じがする。
「はじめまして、和也。フランチェスカのことをよろしくね。
そして、アイリーンのこともよろしく頼みます」
アマンダはゆっくりとした日本語でそう語った。
この一族は皆日本語も普通に話すんだよな。戦闘方面だけでなく、いろいろな面で高等教育を受けている感じだ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
俺がそう答えると、アマンダの後ろでアイリーンがにっこり微笑んだ。
アイリーンは紺色の大人っぽい感じのドレスを身に着けている。フランチェスカと違って豊満なバストが強烈だな。
アイリーンはまだ独身なので親のアマンダと一緒に暮らしてるそうだ。
一族は基本的に結婚すると親元から独立して、新たに家を構えるとのことで、どうやらフランチェスカも俺と一緒になることで親元から独立することになるらしい。
別にいつまでに独立しなければならないって決まりはないようなので、急いだ話ではないらしいが。
アマンダとアイリーンは去っていったが、バーナードはそのまま残っている。なんでだろう?
俺が不思議に思っていると、先程のアマンダと雰囲気の似てるけど、やや若い感じの女性が、フランチェスカと似た年格好の女の子を連れてきた。
そして、バーナードの横に立つと、俺たちに向かって会釈をした。
「こちらは、叔母のドミニカ。先程のアマンダの妹にあたります。
そしてドミニカの三女のエレオノーラ。上の二人はすでに嫁いでいるので今日は欠席です」
プリムローズにそう紹介されたけど、バーナードの位置づけは?
もしかして……アマンダとドミニカの共通のってこと?
んー、あとでゆっくりフランチェスカに聞くことにしよう……
ドミニカはもう日本語はほとんど忘れてしまったとのことで、プリムローズに通訳されての挨拶となった。
エレオノーラは17歳。直系の女性はドミニカまでということで、姉二人同様に特に血の制約はないとのこと。実際、長姉にはすでに男の子が産まれているらしい。
俺が望まなければ、エレオノーラも将来どこかに嫁ぐことになるらしい。
望まなければってどういうこと?
エレオノーラは俺を値踏みするようにじっと見ている。
世間一般のレベルからすればエレオノーラも十分に強そうなんだが、この一族に囲まれると何段階か下のランクの強さって感じなんだよな。
まぁ、強すぎる血の制約を受け継がない分だけ自由な生き方を選べるのだから、どちらが幸せかは本人にしかわからないであろう。
でも、この一族の美貌の方は十分に受け継いでいるようだ。水色のドレスがよく似合っていると思う。
俺と視線が合わさると、ウィンクされてしまった。
どうやら今日の出席者の紹介はこれで終わりのようだ。
あとは、先程紹介されたフランチェスカの家族だけ。
もともと緊張してるのと、いろいろなことが気になってあまり食事の方も進まなかった。美味しかったとは思うよ。
見てる分にはパーティー自体は別に悪い雰囲気もなく、普通に俺とフランチェスカのことを祝福してくれているようなので一安心だ。
このような若僧にって感じで一波乱あるんじゃないかと思ったが杞憂だったようだ。




