第11話 湖へ
メイドたちの着せ替え人形と化した俺は、散々いろいろな服を試着させられた後にやっと解放された。
キャサリンも満足気にメイドたちを引き連れて、退出していった。
再び、フランチェスカと二人で部屋に残される。
フランチェスカが俺の腰掛けてる横に座って、寄り添ってくる。
「ところで、これからの予定とかどうなってるんだ? 滞在予定とかまったく聞いてないんだけど」
俺はフランチェスカに尋ねておく。
三連休とはいえ、火曜からは授業があるからそれまでにに日本に戻らないといけないからな。
「んとね、今日はパーティーが予定されてるの。そのまま今夜はこちらに泊まって、明日の夕食を取ってから日本に飛べば問題ないかなって」
どうも時差があってピントこないんだけど、それで問題ないのかな? まぁ細かいことは任せておこう。きっと大丈夫なんだろう。
「夕食時のパーティーまでは自由時間だから、観光にでも行く? 森と湖しかないけどさ。
わたしとしては、ずっとこの部屋にいてもいいんだけどさ」
フランチェスカの目がちょっと誘ってるのがわかる。わかるけど、まぁそれはこれからいつでもできるからな
「湖への観光にしようか」
「えー!」
えーって言われても、フランチェスカが観光とか言い出したんじゃないか。
ストレートに誘えば俺も別に拒否しなかったぞ。俺だってしたい気持ちはいっぱいあるんだから。
「そっちはこれからいつでもできるだろ」
「ん、まぁそうだけどさ」
フランチェスカは俺にいきなり覆いかぶさってくちびるを重ねてきた。それ反則だろ。
ガマンできなくなっちゃうじゃないか。それが狙いだろうから、ここはガマンだ。
あれ? そういえば着せ替えさせられる前にフランチェスカに聞きたいことがあったんだっけ。
まぁそれも後でいいか。別に今すぐに聞かなくてはならない話でもないし。
「行くぞ」
「ちぇっ、バイク乗れる?」
「いや、ムリ」
日本では原付に乗れるのがやっと16歳からなんだぜ。
「じゃ、わたしの後ろに乗って。湖でいいよね」
アメリカはバイクの年齢制限ってどうなってるんだろう? 私有地だから別に免許とかはどうでもいいのか。
俺はフランチェスカの大型バイクの後ろに跨った。こういうのは男が前じゃないと絵にならないな。
フランチェスカはバイクの運転にも慣れているようだ。
森の中の舗装された道路があるわけでもないところを、慣れた操作で走り抜ける。
でも、悪路を走るバイクの後ろってあまり乗り心地のいいものではないな。
それに俺がバイクに慣れてないせいで、どう体重移動をするのがいいのか最適なのかわかってないことが、乗り心地の悪さに拍車をかける。
フランチェスカにしがみつくのもかっこ悪いが、これはそうしてるのがよさそうだ。フランチェスカの動きに合わせることで乗り心地も少しはマシになった。
そのままバイクで10分ほど走ると、大きな湖の辺りに出た。
めちゃでかいな。
日本だと大きな湖っていうと琵琶湖くらいしか思い当たらないけど、このあたりにはこの規模の湖がそこら中にあるそうだ。
「泳ぐ?」
「水着持ってないぞ」
「誰も見てないわよ」
そう言ってフランチェスカがいきなり上着を脱ぎだす。いや、俺がしっかり見てるんだが。
「どうしたの? 脱がないの?」
そう言いながらフランチェスカは下も脱いでしまって、素肌になってる。
今、脱ぐのはちょっと問題があるわけで……
とか、思ってたらフランチェスカが襲ってきて、むりやり脱がされた。どうやらさっき俺が脱がされてるのを見て自分でもやりたくなったようだ。
ちょっとだけ待って欲しい切なる事情があったんだが……
「おやまぁ」
俺のその事情を目の当たりにして、フランチェスカが呆れたように俺を見る。
だって仕方ないだろう? ついこの前まで童貞だった俺が、フランチェスカの裸見てこうなるのは極めて自然なものだと。
「フランチェスカが魅力的すぎるのが悪いんだぞ」
「ふぇ!」
フランチェスカは急に恥ずかしがる。ナイスだ、俺。
今のはなかなかいい一言だったはずだ。
雰囲気はすっかりそういうふうになってしまった。
でもかすかな理性を残していた俺はさすがに、ここでそのまま一戦するのは控えて、湖で泳ぐことに。
下半身がこうだと、ちょっと泳ぎにくいな。
ひと泳ぎして、湖畔でそのままくつろぐ。
7月とは言え、このあたりはそれなりに緯度も高いのかな? 日本ほど暑くないな。
日差しもジリジリとした感じはしない。
こうして肌を太陽に当てててもそれほど日焼けしそうにない感じだ。
「このあたりはあまり暑くないし暮らしやすいのかな?」
「んー、その分、冬は寒いからいいことばかりではないけどね」
そうか、それは当たり前な話だな。
だが、俺としては夏の暑さのほうが苦手だからこのほうがいいな。
冬になったらなったで、逆のことを言ってるかもしれないが。




