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3章12話:優しくなれる心

ブクマ・感想・レビュー等待ってます〜


今回は色んな視点のお話です。話は進んでないが。


⚠︎念のため、少し性的な描写……はないんですけど準ずる描写に見えなくもないので注意です。

「えーっと……あにょ、ふはりとも……?」


 呂律が回らない。回復魔法……私の回復魔法弱いんだよなぁ。と思いながら使ったら呂律が少し戻ったくらいだった。あのワイン度数がすごかったけど……。


「こののんはさ〜、子供ってキスでできると思ってるの〜」

「な、なななな、何を!?」

「違うんよ〜こののん、子供っていうのはね〜……」


 そう言ってロゼは耳元に近づく。桃色のネグリジェがあまりに扇情的すぎて、目を背けようにも背けられない。何これどういう状況!?なんでこうなった!?エレノアの仕業なの!?おぉい!!なんて思ってたらゆっくりとロゼの顔が近づいてきていて、相変わらず美しいななんて、ん?顔が近くないですか?ん!?


「はむっ」

「ひゃあぁあああう!?」

「えへへ〜、こののん、可愛いなぁ」


 ななななななななななななな、何を!?耳に噛みつくな!耳は弱いの!


「ロゼ、ずるい、私も。あむ……」

「ぴゃあああ!?何故両側から噛む!?」


 なんか2人がヤケに官能的な雰囲気を出している。そんな2人にドキドキしつつ、まぁ、このまま流れに身を任せてもいいかなぁ、なんて考えつつ、ギリギリの理性が私を押し留める。


「ちょ、すと、ストップ!!」

「ふぇ?どしたの、こののん?」


 これ以上はやばい!何がやばいかって、描写的にやばい!!


「えっと……これはどういうことなんでせう……?」

「ん?こののんに色々教えてあげようかと」

「ナチュラルにパーカーを脱がそうとしないでね?だめだよ、寧ろ2人にはパーカー着て欲しいよ」


 と言ってそのまま2人に予備のパーカーを着せた。黒のパーカー、予備作っといて良かった。


「あ、ありがとう……」

「ありがとうなんよ〜」


 うん、可愛い。似合ってる。よし、寝よ……。


「って違うんよ〜!こののんは魔王として、知っておかなければならないことがあるんよ」


 ぐ……寝れない!それはさっきから私に隠してたことと何か関連があるのでしょうか?


「へぇ、なんか嫌な予感するけど一応聴こう」

「性知識なんよ!」

「寝る」


 おやすー。ぐ、ぐわんぐわん揺らさないで……。


「ちょ、待ちなさい!」

「何さ……?って、ロゼどこ触ってるの!?」

「こののん、魔王なんだから大人しく僕たちの恋心を受け止めて欲しいんよ〜!!!」

「い、いや、待って……あの、目怖い……2人とも?」

「中断は、させないわよ?」

「えへへ〜、大好きだよ〜こののん〜」

「……あ、うん、えと、取り敢えず落ち着いて……」


 と言っても一向に2人の勢いは収まることなく、私は、その場の雰囲気に流された。



…………


…………………


 チュンチュン、チュンチュン。









「………………………………あー」









 朝になりました。


「「やったわ、これ(なんよ〜)」」

「お"は"よ"う"、やってねぇよ……」

「あら、おはよう。早いのね」


 起きた瞬間凄まじい疲労感に襲われる。なんだろう、昨日で10年分は知識を詰め込んだ気がする。危うく実践形式で。危うくだ。事後ではない。


「あ、おはよ〜こののん!昨日はよく眠れた〜?」

「______ッ!ふ、ふつー……」


 やばい、マトモに迷路とロゼの顔を見れない。昨日あんまり覚えてないが、2人の前で醜態を……。


「こののん?とりあえず、服着なよ〜」

「そ、だね……」


 昨日何があったか説明しよう。ヤってはいない、うん、やってはいないんだ。けれど私は、彼女達になすすべなく籠絡された……。まぁ、取り敢えずキスでは子供はできないよってことはよぉーくわかった。具体的にどうやって教えてもらったかは割愛させて欲しい。語るのは少し恥ずかしい。

 兎に角私はほぼ強制的に大人の階段を登ったような感じになっていた。繰り返すようだがそこまでえっちなことはしてない、はず。

 ただ私に延々と正しい知識を教えて、変な雰囲気のままイチャイチャをしていただけだ。その過程で触り合いっことか、うん……まぁ、迷路の名前を呼びながら抱きしめてたりとかしてたですね、はい。


「ふふ、可愛かったわよ、木葉」


 悪戯っぽい笑みを浮かべる迷路。私はワインに酔ったまま見事に彼女に落とされてしまったわけだ、うん。今は、ただひたすらに迷路が愛おしい。昨日で私が迷路からとってもとっても愛されてることがわかったから。


 だから、


「ちょ、木葉!?」

「なんで朝になると逆になるかな……もう少しこのままで、ね」


 服を着ないまま、迷路に腕を絡める。相変わらず氷のように冷たい肌をしているけれど、私の熱はそれすら溶かすほどに熱い。


「むー、なんか取られてるんよ〜……」

「今日は私の勝ち、かしら?」

「じゃあ明日は僕が勝つんよ!」

「なんで明日もやるのよ……マスカーニ湖はどうすんのよ」


 眠い、落ち着いたらまた眠くなってきた。



………


…………………


 私がこうして木葉に教えた(意味深)のには、勿論自身の恋心もある。けれど、けれどそれ以上に私には、


「……時間がないから」


 ん?あれ?今何か口にしただろうか?隣ではさっきまで目をハートマークにしながら私を求めてくれていた木葉がすやすやと眠っていた。今思い出してもドキドキが止まらない。お酒の力って凄いわね……いや、全てがお酒のせいとは言わないけれど。木葉も私のことを好いていた、と思いたい。じゃないとまるで酒にかこつけて想い人を襲ったクズ女ではないか。


「幸せよね、私」


 木葉との繋がりが欲しかった。愛を知って、木葉には魔王として全ての感情を消し去って欲しくなかった。きっとスクナだって、その為に木葉に感情を与えているのだろう。詳しくは木葉から聞いたことがないからわからないけれど。

 レスピーガ地下迷宮で目覚めた記憶のない私に、木葉は名前をくれた。ヘンテコな名前だけど、私はそれがとてもとても嬉しくて、冒険していくうちにどんどんどんどん惹かれていって……。


「……まるで私が消えるみたいな言い方ね、これ」


 ふふ、縁起でもない。折角木葉を私のものにできそうなのだから、私はまだまだ木葉といなくてはならない。そのためには、ロゼに負けたくないわ!みんなで幸せになる、とは言ったけど、やっぱりこうして思った。私は木葉を取られたくない!


「むむむむ……」


 すやすやと幸せオーラを放ちながら寝ているロゼの胸を眺める。なんていうか、


「むにゃぁ〜こののん〜くすぐったいんよ〜」

「な・ん・で!こんなにデカイのよ!!くっ!!」


 敗北感が凄い。だが負けるわけにはいかない。恋敵としては認めよう、あと実力も認めよう。だけど、彼女に勝たせることだけは絶対に認めない。


 寝よう。マスカーニ湖攻略は明後日。私は木葉に協力したいのだ。けれど、







「元の世界に帰るなら、私も一緒に……。そうじゃなきゃ、絶対に帰してなんてあげないんだから」






 独占は、魔女の特権でしょう?私は、旅の果てに木葉が手に入らない未来なんて要らないのよ。本当は氷漬けにしてでもずっと一緒にいたいけれど、それじゃあ木葉の意志を無視してしまうのだからそれは出来ない。困った……旅をしながらずっと悩んでるけど結論が出ない。私はこの時間がずっと続いて欲しいのに、木葉の帰還を進める旅をしているのだ。


「貴方が欲しいの、ねぇ、どこにもいかないで。木葉」


 そう言って私は、木葉の額に口付けをした。私の口付けは、きっと氷のように冷たいのだろう。


 そう、私は、凍土の魔女だから。


 魔女は嘘と退屈が嫌いで、わがままを言うのが大好きなのよ?ふふふ。


……


………………


…………………………


 初めの印象は、天女のように美しいけれど、どこか危うい女の子だなあ〜って思った。それからあの時計塔で刃を交えて、魔王って知って、冒険して、ラッカから救ってもらって……。


 僕は彼女に本当に救われた。


 王都と敵対するか否かなんて過酷な現実を突きつけたのに、彼女は僕を助けると言った。王都政府とか満月教会とか関係無く、大切な人を助けたい。そのためならどんな相手だろうと殺して見せると。






 あの時、僕はこののんを本心から好きになった。






 揶揄うと面白いめーちゃんも大好き。でも特別な意味でもこののんは大大大好き。2年前に全てを失ってから空っぽだった僕を、偽りだらけだった僕を大切だと言ってくれた。とても綺麗で、可愛くて、カッコいい女の子。


「僕にも、大切な人ができたんよ。お母さん、お父さん、ハレイ、ディラ」


 失った両親、親友。親友に関してはリヒテン戦でその変わり果てた姿を見た。きっと魂はもう残っていないんだろうね。だから、せめて僕の手で解放してあげたい。

 ま、当分会わないとはおもうんよ〜。だから当分はこののん成分補給のためにイチャイチャするんだぜ〜!うーん、すやすや寝ちゃって〜可愛いんよ〜!こんな可愛い魔王がいてたまるか〜!!って感じなんよ!うー、めちゃくちゃにして無理矢理僕のものにしたいけど、それやったらめーちゃんに殺されちゃうんだよな〜……。こののん多分押しまくったら堕ちそうな気がするんだけど〜...

 こののんは僕のことちゃんと好いてくれてると思うし、自分から僕のことを求めてくれるのを待つんだぜ〜!ロゼ様は策士なんだぜ〜!今日はハート目でめーちゃんを求めてたから負けたっぽいけど、次は本格的にこののんを落としにかかるんよ〜!



「あ〜、幸せなんよ〜」



 そう言ってこののんのほっぺにキスをする。竜人族にとってキスとは永続的な愛の印。軽い挨拶とは違う。


 僕は竜人の姫、神龍の巫女だからね〜。


 お姫様なんだから、欲しいものはぜーんぶ手に入れちゃうんだぜ〜?えへへ〜



………


………………


「おやおや、昨日はお楽しみでしたね」


 リビングに向かうと、案の定エレノアがニヤニヤとしていた。此奴確信犯だ。ジトーっとした視線でエレノアを見るがどこ吹く風である。彼女の持つ鍋の中には美味しそうなトマトスープが入っていた。


「もうお昼だよ。さ、ご飯にしよう」

「このためにマスカーニ湖攻略を2日後にしたのか……」

「ソユコト♪ふふふ、尊い……」

「部屋の中の録音術式は解除したからね?」

「なっ!?バレてたのか……」

「たりまえじゃん逆になんでバレないと思ったの……」


 とはいえ気づいたのは朝になってからなので起きる前に回収されてたら少しやばかったとは思う。今思い出しても恥ずかしい、いろんなことが録音されていたのである。その、理性全く無いような甘い声でひたすらに迷路の名前を呼んでた辺りとかもう恥ずかしくて2度と聞けない。


「明日は早いから盛っちゃだめだよ、可愛い妹よ」

「昨日も別に盛ってないし……」


 ワシワシっと頭を撫でてくるが、本当に姉って感じがするので悪い気はしない。が、腹減ったので少ししたら手を払い除けてテーブルに向かう。


「2人は?」

「二度寝……久々に固定ベッドだからだらけ切ってるよ。堕落もしてたし……」

「あはは、まぁ、結果的に君は色々良かっただろ?」

「……まぁ。2人が私のこと良く想ってくれてるのが分かった。私は、恵まれてるね」


 元の世界でお爺ちゃんとお姉ちゃんを失い、父はお母さんと私を捨て、叔母はお母さんを宗教に染めて壊し、お母さんは私を痛めつけた。

 異世界ではクラスのみんなから嫌われてたことがわかった上に迫害され、殺されかけたりもした。

 それでも、ちゃんと幸せが形として私の手の届くところにあるというのは本当に幸せなことだとおもう。


「いい顔だ。女の子はやっぱ笑顔が1番だよ。いいかい?ヒカリ?君は過酷な旅をしてきたかもしれないし、それによって冷酷になることを覚えたかもしれない。雰囲気でわかるよ」

「………………………………」

「でも、優しくなれる心は最後まで放棄しちゃいけない。君が魔族の成りかけなら尚更。最後まで人間らしくあるべきだ。最後まで考え抜いて出した結論が人間的でなくても、それは責められない。それは君が努力した結果なのだから。安易な残虐性こそ最も忌避すべき事柄だよ」

「安易な……残虐性……」


 不意にラッカを思い出した。彼女はただ目の前の少女をいたぶることだけを、人形にすることだけを考えていた。相手に敬意を払うこともなく、欲望のままに残虐さを振りかざす。私の末路もそれに近い、のかもしれないと恐れている。


 優しくなれる心、か。


「世の中許せないことも、怒りに身を任せたいことも、憎くて仕方ない事も沢山ある。ヴェニスにいるのはみんなそう言う連中だ。だからこそ、人間らしさを失わないようにヴェニスの人間は互いに優しい、結束し合う。君には、もう優しくなれる相手が2人もいるんだ。出来れば、それを沢山の人に広げられるようになってくれたら嬉しいな!」

「………………それは、難しいかも」


 私は優しくないから。冷酷な人間だから。


「心意気の問題だよ。それを意識してるかしてないかではかなり違う。あたしは、君に10万の民を殺す存在になって欲しくはないんだよ」


 そう言ってエレノアは再び私の頭を撫でた。ひょっとしたらエレノアは、私のことをもう魔王だと確信してるのかもしれない。それでも尚、私にこうして優しくしてくれるのだ。




 優しいなぁ。




「うん、さっきよりもっといい顔だ。さ、ご飯も出来たし、2人を呼んできてくれ。午後からはハノーファーたちに染色液を取ってきてもらって髪を染めよう!」


 ニカっといい笑顔で笑うエレノア。金色の髪が眩しい。やっぱり、お姉ちゃんによく似てるなぁって、そう思った。

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二代目は国がやった罪を押し付けられた説。 あの国ならやりかねん
[一言] ギリギリを攻めましたね( ̄▽ ̄;)
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