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2.5章1話:白鷹語李とレイラ姫

クラスメイト忘れてそうなので紹介するよっ!その1を見て欲しいです。

白鷹語李→クラスのリーダー。爽やかイケメン

船方荒野→3代目勇者。クズ。

尾花花蓮→木葉大好きガチレズ

鮭川樹咲→活発女子。木葉大好き

鶴岡千鳥→眼鏡知的女子。木葉大好き

天童零児→金髪チャラ男。花蓮が好き

戸沢菅都→荒野の取り巻き。ウェイ。

高畠三草→荒野の取り巻き女。人の上に立ちたいがために暴力で押さえつけようとする。

遊佐密流→荒野の取り巻き女。他の女子に暴力を振るう。

梢ちゃん→木葉大好きな百合娘。心優しい。

最上笹乃→先生。王国によって生徒たちから意図的に隔離されてる。

 日の沈まぬ王国と呼ばれた国の王都の日も今日もまた沈んでいき、この国を象徴するような大きな月が姿をあらわす。満月は煌々と金色に輝き王都を照らす。

 俺の部屋の窓からは王都がよく見渡せるから、月が照らす赤煉瓦の家々を遠くまで眺めることができる。

 この月光を見ていると今日の憂鬱な出来事も忘れることができる。明日からゴダール山の攻略がお休みになるかと思うと、その心も少しばかり余裕が出てくるのだった。


「綺麗だな……」


 ポツリと独り言を呟く。もう数週間後には【大満月の日】、別名:【大満月様周期】とやらがやってくるらしい。この日はどこかで人が死んだ数だけ、満月が明るく照り輝くという。この日に流れる流星の数は、今日死んだ人間の数だなんて話もあるが、流石に迷信だと思いたい。いや、この国を見ていればあるいは本当かもしれないな、なんて思ってしまうけど。


「明日はオフ、か」


 今日レガート団長に言われたことを思い出し、反芻する。俺こと白鷹語李(しらたかがたり)は明日の予定を決めるべく、王都のガイドブックを手にとってベッドに潜り込んだ。

 パラパラとページをめくっているとかなり心惹かれる建物やスポットが載っていて、明日はここに行こうとか考えるのが楽しい。最近は戦闘ばかりだったから体力的にもキツイし、クラス間の不仲もあって精神的なダメージも大きいから、こういう時間は貴重だった。

 この心労の全ての原因が船方荒野(ふながたこうや)というクラスの不良にしてこの世界の3代目勇者にある、というわけでもなくなってきたのが最近のこと。


 最近、船方荒野のグループが幅を利かせ始めた。高畠三草(たかはたみくさ)遊佐密流(ゆさみつる)と言った女子グループ、戸沢菅都(とざわかんと)を含めた男子グループの船方の取り巻き達は何をどうやったか知らないが、取り巻きとしていたクラスメイト達をまるで洗脳でもしたかのように上手く統制し始めていた。

 10名くらいの女子を既に人形のように配下に置き、男子達も船方に奴隷のように扱われている。最初は俺ともよくつるんでいた戸沢菅都も、もう俺と話すこともなくなり次第に男女構わず暴力を振るうようになっていっていた。


 にしても、今日のはどう考えてもやりすぎだ。



………


……………


〜ゴダール山第91層〜


「よっしゃぁぶっ潰してやったぜ。俺ももう46レベ、あのクソ団長とほぼ互角だ。おいてめぇら、アイテム分配してやるからそこに並べや」


 船方荒野は、全員で協力して倒した魔獣のドロップアイテムの半分を占め、残りを俺たちに分配する。その量は当然のように少ない。


「おい語李、お前はこれな。大切に使えよ」

「なあ船方、これは流石に少ないだろう?他の奴らも、これでいいのか?」


 流石に最近の横暴っぷりにはついていけず、俺は不満を船方にぶつけた。その時だった。


「は?船方くんに何言ってるの?船方くんは私たちのためにアイテムを分けてくれてるんだよ?」

「おい語李、お前だって船方さんより活躍してねぇだろうが、おいっ!」

「くっ」


 とある男子生徒に突き飛ばされ、地面に尻餅をついてしまう。なんだ?様子がおかしい、なんで彼らはこうも不満を持たない?


「つ、強い奴に着くのは当たり前だろ!船方に付いてれば間違いないんだ!語李もいい加減船方の命令に従えよ!クラスの輪が乱れるだろ!」

「そうだよ!なんで語李くんはクラスをバラバラにしようとしてるの?私たち、船方君を中心にまとまってればこんな強くなれたんだよ?」


 誰も彼も、船方の方へと集まり始める。そこには、尾花花蓮(おばなかれん)の姿もあった。


「か、花蓮……」

「…………………」

「尾花さんに助けを求めようとしてるー!!だっさ!尾花さんは私たちの味方だもんねー!」

「……う、うん」


 高畠三草が尾花花蓮の肩に手を当てながら微笑む。とても醜い笑みだ。俺が見ていない間に、彼女は船方に脅迫されていたのか……?花蓮はとても気まずそうに、そして苦しそうに立ち尽くしていた。

 花蓮のように脅されている生徒はまだいい。だけど、船方を盲信し無条件で付き従って善悪の判断がつかない彼らは何だ?異世界にきて不安なのはわかるけど、それでも自分で考えて行動しなければ、俺たちは王国にいいように利用されるだけだ。それに、


「…………………」


 鶴岡千鳥、鮭川樹咲といった俺や木葉と仲の良かった女子達も傍観を決め込んでいる。数人は俺の心配をしてくれていたが、やはりクラスを二分して俺を助けようなんて考えるものなどいない。ま、そこは当たり前だろうけど。


「語李、お前はアイテム無しだ。俺に楯突いたんだ、今日一日反省してろ」

「あーあ、語李君ほんと空気読めない。荒野に従ってればいいの!荒野が勇者なんだから、あたしたちがこの世界で最強なんだよ?なに逆らおうとしてんのさ」

「荒野についていけば、私たちこそ最強。この世界のバカどもも、私たちの下につけられる。邪魔すんなよ」


 その場から立ち去る女子たちに魔法で水をかけられる。びしょびしょになってしまった俺は、その場から立ち上がってゆっくりと転移ゲートに足を進めた。

 身体が重かった。今まで信じていたクラスメイトたちは、みんな己の保身の為に圧倒的な力を持つ船方に付き従うようになった。それはまだいい。だけどここまで追い討ちをかける必要がどこにある?俺は悔しくて、歯ぎしりする。が、表面上は笑顔を取り繕う。それを周りのクラスメイトたちは、


「あいつ、まだ笑ってるぞ。気持ち悪い……」

「俺、なんで日本にいた時あいつと友達だったんだよ。櫛引木葉だって、ただのぶりっ子だったじゃねぇか」

「ほんと、人気モノの裏なんてそんなもんよね。ホント、死んでよかった」





 俺のことは何とでもいえ。だが、木葉のことは……。





「訂正しろ」

「は?」

「訂正しろって……言ったんだ!」


 木葉を嘲った連中に槍を向ける。取り繕った笑顔は消え去り、俺とは到底思えないような憎しみに満ちた目で彼らを見る。

 この際誰かに洗脳されてるだの、脅されてるだのはもう関係ない。もしそうなら確かに同情するが、だが、超えてはいけない一線がある。


「おいなんだ。お前、俺とやろうってか?」

「お前じゃない、そこの木葉を馬鹿にしたや……がはっ!」


 荒野の素早い蹴りに対応できず、俺はダンジョンの壁に叩きつけられる。痛い……骨が軋んだ音がした。折れてはいないとは思うが。


「がぁ……」

「俺の下僕の悪口は俺への悪口だろ?テメェ、殺すぞ?」


 胃液が込み上げてくる。吐きそうになりながら、なんとか立とうとしたが、そこに周りの奴らから魔法が打ち込まれた。やはり氷や水の魔法だったが。


「ほら、こんなにも俺たちのことを思ってくれてる船方こそ俺らのリーダーだ!お前じゃねぇだろ!」

「……ちが、う。そんなの、仲間の扱いじゃ……ぐっ……」


 その時、ようやく索敵に行っていたレガート団長を連れて、天童零児(てんどうれいじ)以下数名が戻ってきた。どうやら見てるだけでなく助けを呼びに行ってくれていたらしい。


「おい、白鷹!大丈夫か?なぁ荒野。勇者がパーティーに暴力を振るうなと、何度行ったらわかるんだ!?」

「へいへい団長さんよ。わかりましたやめときまぁす。行くぞお前ら」


 ぞろぞろと転移ゲートへと向かっていくクラスメイトたち。その中の1人、尾花花蓮は、泣きそうな声で「ごめん、ね……」と言っていた。


「語李!ごめんな!直ぐ助けに行けなくて!」

「いや零児、いいんだ。ありがとう。それより王国上層部に荒野の蛮行を申告したのにまだ返事がこない。俺は明後日くらいにはもう一度宰相様か王女様あたりに、直接言おうと思ってる。一緒に来て欲しいんだ」

「お、おう。勿論だぜ親友!花蓮を、救い出してやりてぇしな」

「あ、あの……語李くん、大丈夫ですか?」

「あぁ、梢。ありがとうな」


 クラスメイトの零児と梢が俺を心配してくれている。それだけで、まだ俺の心は救われていた。


 と、これが今日の出来事なわけだが、流石にこれは酷いと言わざるを得ない状況だ。明日から数日間はレガート団長がリヒテン視察団に加わりリヒテンに行っているため、ゴダール山攻略が休みとなる。明後日には直接高位の人間に直訴し、勇者への指導をしてもらおうと思っているが。








 その翌日は朝から誰かに顔を合わせたくなかったので、1人で準備して城下へと遊びに行くことにした。零児たちを誘っても良かったがなんとなく、1人で町歩きをしたい気分だった。


「さて、行くかっと……ん?」


 王宮の居住区から出ようとして門を出たら、そこをちょうど誰かが通りかかった。


「きゃあっ」

「おっと、危ない」


 よろけてしまった少女を咄嗟に抱きかかえる。フワッとしたドレスに身を包んだ金髪の女の子。どこか見覚えが……って!


「レイラ姫?」


 俺の腕の中で恥ずかしそうにしている少女は、神聖パルシア王国の第2王女:レイラ姫だった。あどけない顔立ちとブルーの瞳が美しい、なかなかの美少女だ。


「お怪我は?」

「な、ないですわ。ありがとう、白鷹」


 ところが立ち上がった瞬間キョロキョロしてよろけるレイラ姫。その焦点の合っていない目を見て、疑問を抱く。もしかして、見えていない?


「王女殿下、もしかして目が……?」

「…………………………」

「あ、失礼いたしました……」


 これは俺らしくもない。本当に失言だった。だが、


「いいのですわ。わたくしが盲目であることは有名な話ですもの」


 そうだったのか。全く知らなかったが……いや、あれ?なんかおかしくないか?


「あれ……?では何故俺がわかったのですか……?」


 彼女はさっき俺のことを白鷹といった。目が見えていないのであれば、わかるわけが……。


「分かりますわよ。わたくしは盲目である代わりに、それ以外の五感が人より何十倍も優れています。ですが、その……寝起きはあまり機能しなくて、よく身体のバランスを崩してしまうのですわ」

「なる、ほど。それは、凄いですね」

「え?」


 レイラ姫はきょとんとした顔をする。


「盲目であることをハンデとせず、ほかの力で補う。自分には、到底できません。流石は王女殿下です」


 と、にっこり笑ってみせる。すると王女殿下は何か焦ったように赤面し、両手で顔を隠し始めた。


「うぅ。この人なんでこんな恥ずかしいことを平気で言えるんですの……?」

「?」

「あぁいえ、気にしないでくださいまし。それで、白鷹はこんな朝早くから何を?」

「城下町を見に行こうかと。王女殿下は?」

「……ま、わたくしも似たようなものですわ。よければご一緒してもよろしくて?」

「お、王女殿下がですか!?いや、しかし見張りのものは……」

「こっそり抜け出してきたのですわ。連れっていてくださいますか?わたくしの騎士様?」


 と、王女殿下はドレスのスカートをつまみ上げ、お辞儀をする。その美しい所作に、俺は思わずコクリと頷いてしまった。


「で、では行きましょうか、王女殿下」

「む。ねぇ白鷹、聞きなさい」

「え?」

「わたくしはこれから貴方を語李と呼びます。ですので貴方もわたくしのことを名前で呼んでください」

「は!?いや、それは……」

「王女殿下では、姉も同じですわ。どうかわたくしのことはレイラとお呼びください」

「……で、では、レイラ様」

「はい、よろしいですわ。さ、行きますわよ、語李」

「え、あ、はい」


 こうしてレイラ様と俺の城下町探索が始まったのだった。

感想頂けたら嬉しいです!!!!


次の更新は多分3日後くらいかな

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