TIPs:抱き枕ロゼ
感想ください(泣)。
木葉たちがリヒテン滞在中のことであった。
ラッカを打ち破り、アンソンを脅迫し、取り敢えず一時の安寧を手に入れた木葉たちはほぼ無言で帰路につき、ホテルを変えずに宿泊した。足はついているだろうが流石にあの後で襲ってくるような馬鹿な真似はしまい。
「さて、明日は1日リヒテンに滞在しよう」
部屋に戻って木葉がそう切り出す。あれだけ派手なことをやらかしたから数日留まるのも本当は危ういのだが、ロゼの魔力が回復しないことにはどうしようもない。それに、木葉としてもまだまだリヒテンの温泉に浸かりたいと考えているほど疲れが溜まっていた。
「国王直轄諜報機関:禊の動向が気になるけどね」
「禊の目的はシャネルの拉致だけだったわけだし、戦闘中に私がある程度屠っておいたから多分大丈夫だと思うわよ。ラッカを生かして返しちゃったわけだから、そんな数日留まるのはやばいけど」
「え、迷路そんなことしてたの?」
「ついでに街中の監視装置の破壊もね」
ラッカに関しては自分でも馬鹿だったなぁと木葉は思う。あそこでラッカは殺しておくべきだった。何故生かしておいたのか?ハレイという少女のため、では無いと思いたい。次同じことがあっても、次は殺す。そう心に誓っていた。
しかしロゼはロゼであの時ラッカを殺さないでおいたことに安心もしていた。考えるのは、自分の親友を名乗ったあの灰色の髪のメイドだ。
(ハレイは死んだ。僕の目の前で、ラッカに殺されたんだ。生きてるわけがない……生きてるわけが……。ディラだって)
まぁ考えていてもラチがあかないので取り敢えず各々ベッドに入ってもう寝ることにする。明日は久々に一日中寝てられる、と内心木葉の心は興奮していた。
…
…………
……………………
時刻は朝7:00。木葉は中々に気持ちの良い朝を迎えていた。
(ん。もう朝か。昨日いっぱい動いたし、今日はずっと寝てられるな。あれ?)
「迷路、起きてたんだ」
「あら木葉、おはよう。で、早速なんだけど……ロゼを見て」
「ん?……って、ぁ」
泣いていた。ロゼは涙を流して苦しそうな顔をしていた。ロゼのことをライバルかなんかだと思ってる迷路も流石に可哀想だと思ったのだろう。木葉にある提案をする。
「私は今日、色々食材とかを買い込んでくるから、貴方はロゼと居てあげなさい。昨日あんなことがあったのよ?心の整理がつかないに決まってる」
「…………………………」
「ま、本当はムカムカするわ。ほんのいっときでも木葉とロゼがベタベタするなんて吐きそうよ」
「辛辣ゥ」
そう言って迷路は朝支度を始めた。最近迷路は化粧とかもして、オシャレしてから出かけている。その度に木葉に、
「この服……その……どう、かしら?」
と聞くようになった。木葉からすれば迷路は何を着ても似合うと思うのだが率直な感想を述べる。
「うん、迷路は黒い服よく似合うな。黒猫みたいで可愛いしさ、今日も完璧」
「____ッ!そ、そう!ど、どうも。行ってくるわ」
ボフンっという擬音とともに真っ赤になった迷路は照れ隠しの為に全力でドアから出て行く。木葉の感想はいつもその日その日にあった感想を述べるのでテキトー感がない。そういうところから天然たらしなのだが、本人はやっぱり気づいていないからちょっとタチが悪い。
「気をつけてー。って、はやくね?」
さてと、と言いながら木葉はロゼのベッドに入る。ロゼは泣きながら、
「お母さん……お母さん……」
と呻いていた。
(暗闇さんは、気づいていなかったけどロゼのお母さんで、ロゼにとっては依存先みたいなものだったんだ。それが居なくなって、どうしていいのかわからなくなってるのか)
「やだ……おいてかないで……おか、ぁさん」
「私がいるよ」
木葉は眠ったままのロゼを抱きしめる。暖かく、柔らかい。とてもいい匂いがする。五華氏族の当主なんて関係ない、そこには1人の泣いている女の子がいるだけだった。
「私がいる。私が守る。だから、心配しないでほしい」
耳元で、安心させるように囁く。その言葉が届いたのか、ロゼは途端に安心したようにスヤスヤと寝息を立て始めた。悪夢が終わったらしい。百合の効果すごい。
さて、これからどうしたものかと思っていたらロゼにがっちりと両腕で掴まれる。
「んぁ?」
「んんん、こののん……」
寝言だよね?と疑うも、一応ぐっすり寝ている。しかも今になって気づいた、ロゼ……全裸だ。
「ちょ、ちょっとまってなんで服着てないのロゼ」
「こののん〜」
「ん……まぁ……いっか……」
がっちりホールドされてしまった。首筋にロゼの唇が当たってるがあの悪夢から一転して一体どんな夢を見ているのか気になる木葉。
「二度寝しよ」
…
……………
………………………
「ふあ?」
目を覚ますと自分が何かを掴んでる感覚がした。あれ〜。なんか温かいものが隣に、
「ってこののん!?」
裸の自分と服を着た木葉が抱き合って寝ていた。事後……?事後じゃないとは思うけど〜、昨日の記憶が曖昧なんよ〜。
「これは〜……役得なんよ〜!」
自分の目に涙の跡があったことから、おそらく悪夢をみて泣いていた僕をこののんが抱きしめてくれてたんだと思う。嬉しい。まさかこののんに抱きしめられて寝ていたなんて幸せすぎて昇天しそうなんよ。
「ん、んん」
「こののん暑そう〜。お?」
僕のいい耳が感知する。めーちゃんが旅館の階段を登ってくる音を。そこで僕は、めーちゃんをからかってやることにした。
「こののんも今のままだと暑いからちょっと脱ぎ脱ぎしようね〜。わわわ、なんか背徳感やばいんよ〜!ごめんね、こののん!」
こののんを下着姿にしてベッドに入り、こののんの手を僕の胸に置いた。そして、
「ただいま、帰ったわよ〜………………………………ロゼ?
覚悟はいいわね?」
やっぱめーちゃんは面白いな〜。
「ん、あれお帰り迷路……ナニコレ」
「何これはこっちのセリフよ!私が居ない間にロゼと一線超えたのね!そうなのね!」
「ちょっ、ちょまって多分誤解。絶対誤解!ロゼも何か言ってよ」
「こののん、とっても激しかったんよ〜♡」
「このはぁあああああああ!!!」
「ちょ、たんまたんまたんま!ロゼお前!」
あ〜、幸せなんよ。お母さん。僕はお母さんがいなくてもやっていけそうだよ。だから、心配しないで。
あいてっ……。
めーちゃんが投げた林檎が当たったんよ〜。
次は3日後くらいかな更新。多分。




