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2章27話:禍神呪い

感想ください!!!!


 ラッカの背後に斬りかかる。


「ぐがっ!きっさまぁ!」

「この速度なら捉えられる!」


 ラッカの鞭を躱して跳ぶ。ラッカは建物の出っ張りに鞭を巻きつけて逃亡を図るが、私はそれを追うように八本足を動かし建物に突き刺して移動する。本当はスパイ○ーマンみたいに糸を使って移動できたら良かったんだけど、どうやらそこまでの強度は流石に持ち合わせてはいないらしい。


「これで充分」


 脚を振り子のようにし、遠心力を使って跳躍する。


「なっ!?」

「はぁああああああああ!」


 ラッカの鳩尾に盛大な蹴りをお見舞いしたことでラッカの体は宙を舞った。そのまま側面から蹴りを入れて建物の屋上に突き落とす。


「がッ!」

「追い詰めた」


 ラッカの肩に鋭い脚が突き刺さる。ウサギの白い皮からは真っ赤な血が吹き出し、ラッカは苦悶の表情を浮かべていた。


「あぁああああっ!」

「これで終わりだ」


 長く変化した瑪瑙が紫色に怪しく光りだす。ラッカはどうやらまだ何かしようと必死に詠唱を唱え始めた。


「テメェごときに負けるかヨォオォ!!」

「!?」


 ラッカの身体が消えた!?たしかに腕を固定していたはずなのに!?いや、これは、


「腕……切り落としたの……?まじ……?」

「テメェのせいでなぁ!!《貫く小節線》ッ!!」

「蜥蜴じゃん!くっ!《斬鬼》ッ!」


 ラッカの五本に増えた鞭の間にラッカの腕を放り投げ、斬鬼で切り裂いて動揺を誘ってみるが動じる気配は全くない。結構捨て身らしい。まぁあの腕が拾われて実はくっつくんです!とかなっても困るからさっさと処分したかったんだけどさ。


「腕なんかくれてやらァ異端者がッ!今に見てろよ、テメェなんざ他の異端審問官が確実に殺す!その身を、四肢を刻み、それぞれを剥製にした上でテメェをオーグの慰みモノにして、心を砕いてから民衆の前で殺す!テメェはそういう奴らに喧嘩売ったんだよぉッ!」

「煩いな。結局強い奴と会った時は無様に仲間頼って敗走?」

「てんめぇぇええええええッ!!」


 もう元のラッカの顔は原型をとどめていない。憎しみに歪んだ顔で片方のみになった手でかの鞭を駆使して地を叩き、寄せ付けないようにしている。それじゃ私には勝てない。


「死ねッ!!《風葬(ふうそう)》ッ!!」


 回転数を上げた鞭により、ラッカの周りに小さな竜巻が出来る。小さいとはいえ恐らく武器を持たない一般人がそこに入れば瞬く間に全身が刃物で切り刻まれたようにズタズタにされるだろうけど、






「秘剣:《禍神呪(まがみのろ)い》」






 ただ静かにスキルを詠唱する。刹那、長刀となった瑪瑙が先ほどのように紫色に怪しく光り始め、刀身には紫色の炎が灯って行く。刀の先は地に付いていたが、その地面を伝って火は建物の屋上全体に広がっていった。


「あああああっ!!消えろッ!!消えろ消えろ消えろッ!!消えろォォオオオ!!」


 必死に竜巻の範囲を拡大させ、炎を飲み込もうとするラッカに照準を合わせて紫色の長刀は滑らかな螺旋を描いて私によって振り上げられた。その斬撃に合わせて紫の炎はまるで人魂のように斬撃に付随して行く。







「あ、あぁあああああああ!!」

「私の勝ちだよ」







 風の檻を切り裂き、ラッカのもう片方の腕が宙を舞う。衝撃で吹き飛ばされたラッカは屋上から転落し、再び中央広間の方にまで吹き飛んでいった。遠目でもラッカが紫色の火で焼かれているのが確認できる。


 完勝だった。



………


………………


「木葉っ!」


 戻ってきた私を心配してくれたのか、迷路が走ってくる。


「ん、ごめんね迷路。心配かけた」

「え、えぇ?あの、木葉……?なんか雰囲気変わった、わよね?私のこと呼び捨てにしてくれるのは、その、なんか嬉しい……けど……その……」

「変わった、とは違うかも。元からこうだった、が正しいかな。でも私は、迷路が私のこと好きなの知ってるから……だから、これが私だって胸を張って言えるよ」

「え、ぁ、いや、好きって、その、好きだけど……」

「ありがとね、迷路。私を守ってくれて、これからは、私が迷路を守るから」


 何故だか赤面する迷路の頭を撫でる。ぐっ、身長差があんまないからカッコつかない……。


「え、あ……うううううう、なんでこんなにイケメンになってるのよ……んんっ!」


 真っ赤になりながら恥ずかしそうに頭を撫でられる迷路がとても愛おしく見える。んー、これは恋的なやつでいいんだろうか?でも同性だけどいいんだろうか?うーん。


「ロゼ」

「ひゃ、ひゃいっ!!」


 ん、本当に名前呼んだだけなんだけどな?


「怪我、大丈夫?直すからじっとしてて」

「ふ、ふぁい……」

「顔赤いけど、熱ある?」


 おでこをくっつけて測るが特に異常はなかった。でも顔は真っ赤で口をパクパクしているから多分なんかあったんだろう。取り敢えず回復ポーションを使用し魔力の補給もする。


「あの屑の唾液付いてる。今拭くから」


 着ていた着物で顔を拭う。すべすべのお姫様のお肌から汚れたものが取れていった。


「ん、これで良し。『私のロゼ』のことを性的に舐めるとかいい度胸だねあの屑。さて、どうするか」

「わ、私の!?」


 ラッカの近くに控えていた灰色の髪のメイド少女がどうやらラッカに火傷回復のポーションと、体力向上のポーションを使用したらしいが、ラッカの腕の傷は全く言えることがなかった。


「な、なに、を……じた……てめ……ぇ」


 タグを開いてステータスを確認する。


【特殊スキル】《鬼姫》:

・茨木童子→《鬼火》

・両面宿儺→《???》

・土蜘蛛→《禍神呪(まがみのろ)い》


【詳細】

《禍神呪い》

→鬼火火力・攻撃力を4割減する代わりに飛距離1.2倍。また、直撃した相手に紫炎の追加攻撃と、直撃部位に呪いの効果を付与する。


呪い効果:

→一定期間防御力・速度のステータス低下。

→直撃部位の回復不可。切断面の回復不可。

→回復の効果4割減。


「特殊異常系の必殺技か。これでお前の腕が回復することは永久にないね。異端審問官としての能力を著しく失ったことになる。ロゼ、どうする?」

「ベッドの中で優しくしてほしい、んよ……」

「え、なんでこの流れで!?」


 なんか気のせいかロゼの目にハートマークが埋め込まれている気がするんだけど気のせいかな、気のせいだな、うん。しかもとってもえっちな表情なんですけど、なんですか誘ってるんですか?これは他の人には見せられない。


「いや、あの……ラッカの処遇、なんだけど」

「ふぇ!?あ、あははは〜、そ、そうだよね〜。わかってたよ?わかってたんよ〜!」

「え、うん?そんなに慌てなくても」

「慌ててなんかないんよ〜!僕、なに言っちゃってるんだろう……うぅぅう」


 その目と髪色同様、脳内までピンク色になったかのような反応に流石に戸惑ってしまう。


「さて、今私はお前の命を握ってるわけだけど」

「ぁあ、一般人のこのはちゅわーん、に、人殺しができんのかよ……?あぁ?」


 覚悟を決めるべき、なんだろうか。今まで私は、暴走したまま誰かの命を奪ったことはあったけれど理性をちゃんと保ったまま奪う状況は、これがきっと初めてだ。私は、ここでやってしまってもいいんだろうか……?



 そんな葛藤を、不意に飛び込んできた声が邪魔する。


「ま、まって!」

「……貴方は?」


 灰色のメイド少女がラッカをかばうように前に出る。


「私も、こいつは憎い。憎いけど!お願いだから殺さないでッ!!」

「……どうして?」

「こいつが死んだら……望みが絶たれる。お願い!私は絶対にやらなきゃいけないことがあるの!そこにいるディラの為にも!」


 ラッカの魔力切れで自動的に停止してしまった魔法人形を指差す少女。彼女は見てわかる通り、どうやら魂が存在していないらしい。


「お願いッ!私が、私が方法を見つける!だからっ!」

「ちょっと黙って」


 少女がビクッと身体を震わせる。でも私にとって彼女たちの間の何かはまったく関係のないことだ。多分ラッカを殺してしまうと、ディラという人形を元に戻す手段が失われてしまうのだろう。だからそれを阻止する為にこの子は必死になっている。


「貴方の名前は?」

「は、ハレイ!ハレイ・ヴィートルート」

「ヴィートルート?」


 ロゼの偽名だ。何故この子がそれを知っている?


「嘘だ!ハレイは2年前に死んだ!それに、全然そんな姿じゃない!!!」


 ロゼが叫ぶ。なにやら込み入った事情があるようだがそんなの正直どうでも良かった。土蜘蛛を解除したため長さが元に戻っていた瑪瑙をラッカの首先に当てる。


「他の異端審問官に伝えて。魔王である私に刃向かうようなら容赦しない。誰が来ようと殺すし、それをするだけの力は持ってる。私の邪魔なんてしようものなら王都を焼き払われるくらいの覚悟をもっておいて」

「……ぁ、あぁ」

「ん。じゃあ早く消えろ。目障り」


 そうしてハレイを睨んだ。あとはなんとかしろ、と目で合図する。それに応えるようにハレイはラッカを抱えて何やら青色の結晶を取り出した。


「ありがとう、魔王。それとバイバイ、ロゼ……」

「それは、転移の結晶?」


 青色に光る大きな結晶石を掲げてその場かラッカ、ハレイ、ディラは姿を消した。後に残されたのは瓦礫の山と数多くの死体、疲弊しきった人々だった。


「はぁ。逆らえない異端審問官からの命令とは言え、アンソンにはちょっと失望なんだけど……どうすんのこれ。はぁあ。まぁいいや、長居しない方が良さそうだねこれは」


 幸いさっきの攻撃で多くの冒険者が失神し、顔を見られてはいないとはいえちょっと無用心すぎる。鬼の面を被ってこの場をさっさと離脱しよう……あれ?


「髪と目が……元に戻らない?」


 茨木童子を解除した際に流石にツノは消えたが、私の視界には銀色の髪の毛がハラリと写っていた。


「……いよいよ魔族っぽくなってきたなぁ。これくらいなら大丈夫だよね?バレないよね?ていうか私の原型あんまないけど」


 この髪と目は最早悪役そのまんまという感じで、元の世界に戻った時これどうしようとか少し思ってみたりする。が、今は考えないことにしよう。


「取り敢えず脱出するよ2人とも」

「ええ、そうね。そろそろ人が集まって来る頃だし、まずは旅館に」

「いや、報酬がまだだったからさ。こういうのはパパッと行こう」

「?」

「さ、行くよ。っと、ロゼは私が背負ってく」

「え、えぇえええ!?い、いいよ!僕今、多分汗臭いし」

「ロゼはいい匂いするよ?疲れてるでしょ、遠慮しないで」


 座り込むロゼの足に腕を回してお姫様抱っこする。すっごい軽いなぁ。


「ちょっ!?木葉!?なんか最近めろんおっぱいばっか優遇されてる気がするのだけど!?」

「こののん〜!?あにょ、あの、これははずか、恥ずかしいんよ〜!?」


 なんか2人が元気になったようで良かったとは思う。

もう誰だこいつはって感じですよね。

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