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2章17話:いわゆる水着回

水着回。

感想お待ちしてます。

 ずっと、本心を話すことが怖かった。


 本当の自分を見せることが怖かった。


 みんなの期待するような自分でいたかった。


 だから、全て笑顔で塗り固めたのだ。嘘で、欺いてきたのだ。心の奥底に鍵をして、内側から醜くどす黒い感情が溢れ出て来ないように。自分が本当はもっと、それはそれはどうしようもないほど酷い人間であることを知ってはいたけれど。やはりそれを表面化させるのは怖くて、嫌われたくなくて。


 だけど何かがダメだった。


 だから、お爺ちゃんは……お父さんは……私のせいで……。


 ダメだ違う。押えこもう。こんなの、ワタシには要らない感情だ。ただニコニコ笑っていればいいのだ。そうすればお姉ちゃんだって、お母さんだって心配しないで済む。

 そうして笑顔を貼り付けた顔を鏡で見たとき、こう思った。





 デモ、ソレッテ本当ニ私ナノ?





〜櫛引木葉の独白より〜



…………


………………………


 蒼月級冒険者ティザ。リヒテン最大ギルド飛竜の鉤爪所属。その中で『女豹』という女性で構成されたチームを組んでいる。まだ三十路手前の女性ながら男性顔負けの腕力で大斧を振り回してクエストをこなしていく実力派。そこから付いた二つ名は『大爪』。



「あの短気女、一丁前に二つ名とか持ってやがるわよ」

「凍土の魔女に言われたくないとは思うなぁ……」

「こ、木葉っ!それはやめてっていったのに!!」

「えー!いいと思うよ凍土の魔女!なんかこう、ブリザード〜って感じがするもん!」


 意味不明である。


「で、このまま私たちが向かうと鉢合わせ、というか馬車がある分私たちが先に着くけど、結局後ろから付いて来られるからなんか癪よね」


 向こうは馬車を失い徒歩での移動手段となるが、こちらは氷の馬車で一気に洞窟まで進むことができる。しかし洞窟はもう目と鼻の先だというのにあんな険悪なまま結局一緒に入るとか絶対嫌だ。


「そんな時の為のフォレストさんの地図!ボロディン砂漠以外にもリヒテン近くの地図は貰ってきたし、みんなが知らないような入り口とかあるかも!」


 木葉はアイテムボックスから地図を取り出して広げた。随分と古びた地図であったが見る分には特に問題はない。おい、なんかお茶こぼした跡があるぞ。


「この近くに、正規ルートとは違うけれどショートカットルートがあるわね。少人数しか通れなそうだけど」

「私と迷路ちゃんとロゼちゃんだけだし、行けると思う。誰が先頭に立っても多分迎撃出来ると思うし」

「じゃあここに行こっか〜。楽しみだなぁ〜」











「ショートカットコースの入り口って……」

「鍾乳洞?」

「うわ〜綺麗なんよ〜」


 地図に沿ってショートカットコースに立ち寄ったは良いものの、なんとその入り口は水で阻まれていた。


「でも人の手が入ってるってことは、多分水路を通って行くと内部に出る感じだね〜。さて、どうするのかな〜?僕は泳げるけど」

「私も泳げるよ!平泳ぎ得意なんだー!」

「て、ことは……」


 ちらりと2人は迷路を見る。がしかし、


「何期待してるのよ!泳げるわよ多分!1人だけ勝手に泳げないキャラにしないでもらえるかしら?」

「いや〜、パーティーメンバーあるあるってやつだよ〜」

「迷路ちゃんが泳げなかったら、私が迷路ちゃんを連れて行ってあげるからね!」

「別にいいわよ……。それに、いざとなれば魔笛を使って潜水艦を作るわ」

「何ヶ月かかるかなー?」

「う、うるさいわね。とにかく、泳げるんだから問題ないわよ!」


 さて、洞窟の入り口にて準備をする3人。その準備とは、


「どうさね〜?」

「流石ねメロンおっぱい」


 白と桃色のヒラヒラのついたビキニを身につけた美少女。桃色の髪に良くあっている。ロゼはその豊満なボディーをメイロに見せつけるかのようにしつつ、木葉の腕に胸を押し当てた。


「わわわっ!ロゼちゃん!?」

「泳ぐと言ったらやっぱ水着なんよ〜!持っててよかった〜」

「胸!胸当たってるよ〜!」

「女の子同士だから何の問題もないんよ〜」

「はわ、はわわわ」


 ロゼの持つ甘い香りに思わずくらっときてしまう木葉。木葉の細い腕に柔らかいものが密着し、次第に赤面して行く。


「あ、あの……恥ずかしい、よ」

「こののん可愛いんよ〜!こののんの可愛いとこ、もっと見たいかな」


 なんて耳元まで近づいて色っぽく囁いて来るものだから、木葉の理性は若干やばいことになっている。


(おかしい、おかしいよ!相手は女の子なのに!なんかすっごいドキドキする!?うぅ……)


「えへへ、照れてる〜ってあれ寒い!?」

「いい加減木葉から離れなさいメロンおっぱい、殺すわよ?」


 周りに冷気を撒き散らしながら、近づいてくる迷路。少しずつ水面が凍り始めているのには気づいてますか?


「まぁまぁ、怒らないで欲しいんさ。それより、めーちゃんとこののんはどうするのかな〜?」

「別に。下着のまま泳げばいいわよ」

「あ、でも1時間くらい貰えれば私の裁縫スキルで迷路ちゃんのも作ってあげられるよ?」

「おお〜こののん裁縫スキル持ってるんだ〜。じゃあ身体測定からやっちゃいますか〜」


 ロゼがその目を輝かせながら迷路ににじり寄る。


「ちょっ!?なに、何よそのわきわきした手は!?」

「へっへっへ、観念するんよ〜。カラダの隅から隅まで調べ尽くしてあげるんよ〜」

「ちょっと、やめ!きゃぁっ!」


 迷路を押し倒しその手を絡ませるロゼ。迷路は、というと、


(綺麗な顔ね。それに、いい香り……って何考えてんのよこんな奴に!)


「えへへ、怯えるめーちゃんはなんか唆るんよ〜」

「発言が完全に変態のソレよ。それに怯えてなんかいないわ」


 睨む迷路と、余裕そうに笑みを浮かべて顔を近づけるロゼ。木葉がハラハラしながら見守る中、ロゼはふっと息を吐くと、迷路から次第に遠ざかった。


「冗談だよ〜。でも、水着作るならちゃんと身体を計らないとダメだよ〜?そのお胸とか〜」

「な!?あ、貴方という人は……」

「今だよこののん!」

「ガッテン!」

「なぁぁああ!?いつのまに後ろに!?」


 迷路を羽交い締めにする木葉。そして、ワキワキと手を動かしながら悪い顔を浮かべるロゼ。


「さぁ、今度こそ観念なんよ〜」

「ちょ、やめ、やめなさい!や、きゃ、



 きゃあああああああああああああああああああ」


 このあと無茶苦茶身体測定した。








〜1時間後〜


「わぁ〜!めーちゃんとこののん!とっても可愛いんよ〜!」


 水色の水着の迷路と黒の水着の木葉。満足げな木葉も、ユデダコのように真っ赤になりながら目を背けて恥ずかしそうにしている迷路も、どちらもその格好で握手会開いて長蛇の列作らせるくらいには美人だった。


「今度それでお金とってみよっか〜」

「い・や・よ!なんでそんな変なことやらなきゃいけないのよ!」

(あ、そっか、こっちの世界ではアイドル、みたいなものはないんだよね)

「よーっし!!泳ぐぞー!!」


 湖に飛び込む木葉。バシャンと大きな音を立てて木葉は水に潜っていった。


「ぷはっ!おーい!気持ちいいよー!」

「あはは〜、こののん元気だなぁ〜。僕たちも行こうよ〜」

「えぇ、そうね」


 木葉、迷路、ロゼの3人はそれぞれ基礎魔法:《点灯》を使用し暗い水の中を進んでいく。木葉は時々楽しそうに水中をくるくる回ったり、もっと深くまで潜ってみたりと遊んで、その度に迷路に小突かれていた。完全に子供である。

 因みに何故そんな長い間3人が呼吸できているのかというと、それも当然魔法だ。いや、魔法の道具である。


(アイテム【人魚の涙】。食べれば最大7分間無呼吸で水中を進むことができる魔法アイテム。かなり高価だけど、いくつか購入しておいて良かったわ)


 洞窟探索においてはあらゆるフィールドの変化への対応が求められるため、様々なアイテムの調達が必要となってくる。今回は木葉が面白いものを見つけてきたと言って勢いで買ってしまったものだったが、それが役に立ってしまった。


(どれくらい進んだかしら?熱探知のスキルで水面を調査してるけど、一向に出口が見えてこないわ)


 すると、ロゼから念話が入る。


(スキル《音叉》である程度位置は把握してるよ〜。もう少し進んだ先かな〜)

(了解だよっ!)


 水中は暗いが、随分と綺麗な水だ。当然入る前に水質調査も行っているが、途中から何が起こるかわからない。と思って入ったのだが、正直杞憂だった。


(ん、出口!)


 水面から光が差してくる。その光を頼りに、木葉たちはゆっくりと上昇して、


「ぷはぁっ!ついたー!!えっと、ここは」


 あたりを見渡そうとする木葉だったが、そこにいたのは、


「グルゥうううぅぅぅう!!!」

「へ?」



「があああぁぁあああああああああああああ!!!」


 鎧のように硬い全身、大きな体躯、真っ黒なツノ、凶暴な牙、そしてその手には大剣。つまりそれは、


「うしさん?」

「ミノタウルスよばかっ!ってことはここは23層!ミノタウルス王の出現地帯!」

「おぉー!いきなり大当たりってことだね!」

「大ハズレよっ!!なんでいきなり23層!?いや木葉!!早く避けて!!」


 ミノタウルス王はその黒い目で木葉たちを一瞥すると、右手に持つ木葉の数十倍もの大きさの大剣を振り下ろした。


「木葉ッ!」

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