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TIPs:綺麗な百合には毒しかない

まだ楽しかったあの頃

 これは、異世界転移を果たしてから3日かそこらの頃のお話。


「下着が、ぞわぞわするです!」


 とある女子生徒からこういう不満があがった。最初クラスメイトたちは王国から支給された現地の服を着ていたのだが、これが意外と着心地が良い。男子は着心地の良い服に興奮し、女子は可愛いドレスにやはり興奮していた。

 が、それも数日のこと。問題は下着だった。元の世界の下着と全く異なるものであったため、次第に不満は募っていく。そしてついに、クラスで会議が開かれることとなった。


「普通に裁縫職人の職業の子に作らせればいいんじゃないか?」


 白鷹語李(しらたかがたり)の発言。結論から言うと、この意見が採用されることとなる。


「そうですね。あれ、このクラスって裁縫職人のスキル持ちの子はいましたっけ?」


 笹乃が尋ねる。手を挙げたのは、


「俺だわ」


 戸沢菅都だ。1-5のムードメーカー、今では船形荒野の取り巻きみたいになっているがそれは置いといて。


「では戸沢くんが作ると言うことで……」

「え、待って、男子にアタシたちの下着作らせるわけ?」


 1人の女子が発言する。その目はマジだった。


「こいつが作った下着つけるの?マジで?」

「んだよ、なんか文句あんのか?」

「大アリよバカ!!」

「んだとこのアマッ!」

「ちょ、落ち着いてください2人とも!」


 笹乃が止めに入る。


「まぁ、たしかに男子が女子の下着を作るのもな……下心がないとも言い切れないだろうし」

「なんだよ白鷹、お前まで俺を疑うのか。目を見て信じてくれ……げへへ」


 戸沢菅都。サッカー部所属。性欲の強さと女関連の噂の酷さからついたあだ名は"お猿さん"である。


「却下だ。女子で裁縫スキルを持っている人は……」






「は、はい」


 おずおずと手を挙げたのは、転移した日に木葉にクッキーを作って失神した(こずえ)ちゃん。


「梢さん、頼めるかな?」

「う、うん。まか、せて」


 と言うことで、下着を製作する係が決まった。そのオーダーを男女別れてしていくことになるのだが……。


「えっと、梢ちゃん。それじゃあ測ってくれるかな?」

「え、ぁ、ぁぁ、む、むりぃ」


 バタンッと倒れる梢


「こ、梢ちゃん!?」

「とお、とい」ガクッ


 下着を作るために身体測定が急遽行われることとなり、女子たちは一室に集まっていた。まず木葉からと言うことになったのだが、そこは流石ガチレズホイホイ。ブラジャーを外して露わになった胸をガン見した梢は、速攻で失神した。遺言は『尊い』だそうだ。


「こ、木葉ちゃんの、おっ、オッパ」

「か、花蓮ちゃん?なんか怖いよ?」


 花蓮がスマートフォンを手にしていた。当然ネットは使えないが、カメラ機能くらいなら使える。それをすかさず止めたのは鮭川樹咲。スレンダーな体型と引き締まった筋肉がカッコ良い。


「やめろ花蓮。木葉が嫌がってるだろ」

「と、止められない時だってあるのよ!この衝動もう抑えられないわっ!」

「木葉、逃げろ。こいつはもうダメだ……」

「え、花蓮ちゃんどこか具合悪いの!?」


 花蓮の目前に木葉の胸がドアップで広がる。その瞬間、花蓮は鼻血を吹き出してぶっ倒れた。


「花蓮ちゃぁぁぁぁぁぁぁあん!!」

「ここが、天国……ガクッ」

「何言ってるの花蓮ちゃん!やだよぉぉ!死んじゃやだよぉぉ!」


 と、コントがはじまってしまい一向に身体測定が進まない。


「じゃあ木葉は後だ。とりあえず服を着てくれ」

「う、うん。樹咲ちゃん顔真っ赤だけど熱でもあるの?」

「な、ないないないない!だからその、早く隠してくれ……」

「う、うん。わかった」


 しかし好きなものは最後に残しても、結局最後の瞬間は訪れる。いよいよ木葉の番となった。


「さぁ、決戦よ」

「お、おう。覚悟はいいな、みんな!」

「「「ええ!」」」

「な、なんか怖いんだけど……」


 メジャー係は樹咲。測定メモは千鳥。撮影、花蓮……はつまみ出せ!


「いやぁぁあ!!撮るのぉぉ!!」

「はいはい後で王都の夕焼けでも取りに行こうな」


 ズルズルと花蓮の首根っこを掴んで部屋の外へと放り出す。


「じゃぁ、やるぞ」

「ご、ごくり」


 メジャーを木葉の胸に押し当てる。木葉に、メジャーの冷たい感覚が伝わったのか、


「ひゃっっ!!」


 甘い声が漏れ出る。


「ご、ごめん、てへへ」


 そう言って樹咲たちの方を見た木葉だったが、クラスの女子の大半はその顔を赤面させて手で覆っていた。実はこの時柊もである。


「反則よ、こんなの反則……」

「かわ、いすぎる。ていうかエロすぎる」

「何よ今の声、誘ってるの?誘ってるのよね?」

「お持ち帰りしたい」

「木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん木葉ちゃん」


 花蓮は再びつまみ出された。


「へ、変な声上げるなよ?じゃあ続けるぞ」

「うん、ごめん」


 その後はスムーズに身体測定が完了した。因みに木葉のバストは4月より大きくなっていた。


「はぁ、マジで疲れた……」

「今日はよく眠れそう」

「今夜のオカズに」「花蓮、消せ」



………


…………………………


「完成、しました」

「「「おおぉ!!」」」


 2日後下着が完成した。裁縫スキルを持っているものからすれば思ったより簡単な作業だ。


「木葉ちゃん、はいこれ」

「うわぁあ!ありがとう梢ちゃん!大事にするね!」

「ふわ、ふわぁぁ。私の作った下着が、木葉ちゃんに……」

「梢、今なら倒れても受け止めてあげる」


 梢の友達がすでに受け止め態勢に入っていた。


「わかった、倒れる」


 倒れるんかい。

 それは置いておいて、木葉は貰った下着を早速つけた。


「お〜!うん、完璧!すごくしっくりくる!」


 裁縫スキル便利!




 ガチャッ。




 と不意に、部屋のドアが開いた。入ってきたのはなんと……マリアージュ王女!?


「失礼します。執務の休憩にお会いしたい方が……あぁぁ!!尊い!!」


 パタッと失神する王女。部屋を開けてすぐ木葉の下着姿だった。木葉、あんたはメデューサか。


「うわぁぁぁああ!!王女殿下!!」

「起きてぇぇ!!目を覚ましてぇぇ!!」

「す、すぐに医者を!」


 騒ぐ女子たちと、その様子を不思議そうに眺める木葉。

 まだ1-5が賑やかだった頃の一幕である。

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