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6章19話:Let's 心臓クッキング

最終話まであと7話くらい?

 フォルトナは西洋の民だった。迫害されて当時の中国を訪れたフォルトナは、そこでも迫害されていた。理由は彼があまりに多くの人を殺したからだ。迫害される理由としては申し分ない。

 中国大陸からさらに東、当時既に近畿地方を中心に一定の勢力圏が築かれていたヤマトへやって来たフォルトナは、そのもの珍しい見た目から時の朝廷に呼び出された。


「黄金の髪、高い鼻、面白い。朕の元に仕えよ」


 当時の帝に気に入られたフォルトナだったが、彼は自分がペットのように扱われることに耐え難い屈辱を覚えた。西の文明国からきた自分がなぜ極東の野蛮国の王に仕えなくてはならないのか、と。

 近畿から逃げたフォルトナが向かった先はその東、飛騨の山奥だ。


 はじめ、飛騨の民たちはフォルトナを警戒したが、彼らはお人好しだった。傲慢な態度でかつ言葉もマトモに通じないフォルトナに食べ物を分け与え、衣服を与え、村に迎え入れた。

 迫害され続けたフォルトナにとってはようやく見つけた安住の地だ。誰かに縛られることなく、自由に生きる。それでいて周りのものは自分に優しい。


 ーー彼は心から飛騨の民を愛していた。


 傲慢な自分を受け入れてくれたみんな。そんな彼らに応えようとフォルトナも時々狩で手に入れた食糧を振舞った。飛騨の民と会話するために言語を覚えた。


「言葉、覚えたんだね! 嬉しいな!」


 飛騨の民の少女。彼を村人に紹介してくれた心優しき女の子。フォルトナはそんな彼女が好きだった。

 自分はここで生き、ここで死ぬ。遠い遠い東の果てで見つけた安息の地。



 ーーここが滅ぼされるまで、フォルトナにとっては確かに安息の地であった。



「許さん、朕と飛騨の民を滅ぼしたヤマトの民を、朕は決して許しはしない。櫛引の姉妹も、所詮はヤマトの民の血が混じったものだ。奴らも涅槃に引き摺り込んで殺して……」


 混濁する意識の中、フォルトナはふと我に帰る。ここは、どこだ?

 暗い暗い世界。上も下も右も左もない、どこまでもただ暗く深い闇。


「ここは、涅槃?」


 自分は悪魔を纏め、再び現世に、満月の世界に戻った筈だ。なぜだ、何故ここにいる? 自分を涅槃に引き摺り戻したのは、誰だ?


「フォルトナさまああ」

「フォルトナさまあ」

「フォルトナ、さまああああああ」


 闇の中、足を何者かに引っ張られる。この声は覚えている、500年前から悪魔召喚に利用してきたものたち。その声だった。


「や、やめろ、お前たち何をしている! ノルヴァード、何故お前もそこにいる!?」

「やだ、死にたくない、フォルトナさま、死にたくない」


 いつもの彼とは違い、か細い少年の声でフォルトナに助けを求めるノルヴァード。ノルヴァードはフォルトナ復活に際してその一部をフォルトナに譲渡していた故、その内部に彼もまた存在している。彼によってフォルトナはさらに深く深く沈み込んでいった。


「やめ、ろ、朕は、朕は……まだヤマトの民に、復讐を……こんなところで消えるわけには」

「いいや、消えるんだてめーは」


 フォルトナを羽交い締めにする男の声。こいつは500年前に聞いた声だ。確か、


「よくも俺達をこんな目に合わせてくれたな。3代目は好かんが、お前は俺たちが責任を持って連れて行く」

「初代、魔王!」

「そーだよ、てめーが復活の為に分霊を食い散らかし、魔女を悪魔に変えたことでてめーの体に入ってたクープランの墓様だ」

「亡霊がぁ! 身の程を弁えろ!」

「亡霊を連れて行くのもまた亡霊の役目だ。な、みんな?」


 同意を求める先には、フォルトナを取り囲む女達ーー魔女がいた。


「ふん、よくも妾の部屋を粉々にしてくれたな! 死んで詫びろ、かーっかっか!」

「きゃははははははははははははは!!! あたくしみたいな美女に引き摺られるとか光栄でしょ!? きゃははははははははは!」

「うるさいわねぇ、お姉さんの耳がちぎれちゃうじゃない」


 ダッタン人、カヴァレリア・ルスティカーナ、美しき青きドナウ、その他にも喋らない魔女達が集結していた。更には、


「いやあんたら笑ってないでちゃんと引っ張ってね!? なんで僕がこんな肉体労働を……」

「頑張ってくださいアリエス!」

「君も引っ張ってねスプリング!?」


 平凡顔の勇者:アリエスがスプリング以下アリエスハーレムと共にフォルトナを引っ張る。


「勇者の成り損ない風情が!」

「はぁ? れっきとした勇者です〜! ステータスプレートにもそう書いてあります〜、はい論破〜!」

「アリエス、そういうとこちょっとダサいです……」


 小物感溢れるアリエスに呆れるスプリングだが、表情はどこか嬉しそうだった。


「貴様ら、朕の中で朽ち果てていればよかったものをッ!」

「はは、魔王との戦闘中に散々お前を邪魔してたのは何もサファイアだけじゃなかったってことさ。ちょっとは助けになっただろ、魔王」


 涅槃の向こう側にいる魔王、櫛引木葉に問いかけるアリエス。彼は最後の一仕事とばかりにフォルトナの足を力づくでもぎ取った。


「ぎいああああああああああああああ!!!」

「同情はする。けどお前のやったことはヤマトの民と同じだ。まじでクソ、地獄に堕ちろ」

「おしそのまま抑えとけ3代目勇者ぁ!」

「え、それ僕のこと?」

「は? お前3代目じゃねーの?」


 クープランの墓はアリエスを3代目と評価した。だがアリエスは首を横に振る。


「僕はアリエス、ただのアリエスだ。別に何代目とかどうでもいいな、知ってる奴だけが僕を勇者と呼べば良いんだ」

「…………そうだな。ちげぇねぇ。気に入ったぞお前。こいつ引き摺り込んだら向こうで酒でも飲もうぜ」

「あ、僕下戸だからオレンジジュースで」

「だっせぇ……」

「う、うるせぇやい!」


 フォルトナのことなんて歯牙にも掛けないような2人。そんな彼らによってフォルトナは深い闇に沈み、そして、


……


…………


………………………


 フォルトナは涅槃に飲み込まれ、消滅した。その中にいた悪魔達は共に消滅し、涅槃はもう開かない。


「塔が……戻って行く」


 天まで届く黒い塔は元の姿に戻った。


 ーーーー戦いが、終わったのだ。


「木葉! 無事!?」

「こののん!」

「やぁ魔王、元気そうで何よりだ」

「木葉ちゃん! 無事だったんですね!」

「てか迷路!?」


 なわて、ロゼ、カデンツァ、笹乃、柊が最上階に駆けつける。そんな彼女らを見て、


「とりあえず、帰ろっか」


 疲れた表情で木葉は言った。


 





 戦いの結末として、味方は誰一人として欠けることはなかった。ユウはパヴァーヌと共に消えていったが、それは既定路線だったので問題ない。

 塔の麓で戦っていた連合軍も水子の消滅によって勝鬨をあげた。勇者と聖女もそこそこ頑張っていてくれたらしく、お祭り騒ぎの兵士たちに混ざって飲み食いしていた。ちなみに千曲ともえはすぐ気絶して役に立たなかった。


 街の被害は少なく、テレプシコーレが地下で受け入れていた避難民もじきに家に帰れるだろうとのこと。

 王宮も被害はなく、マリアとレイラは直ぐに休息所を開けてくれた。そこで泥のように眠った木葉は、翌日普通に朝起きることが出来た。


「体が軽い」

「あらおはよう」


 用意された別邸のダイニングで既に迷路が寛いでいる。


「迷路……生きてる?」

「生きてる生きてる。ほら、こっち来なさい。ミルク温めたから」

「うん、ありがと」


 隣あって座る。カップを口に運び、温かいミルクを喉に流し込んだ。


「うま……」

「こんな朝が来るなんて思わなかったわ。幸せね」

「それは、誰の感情?」

「みんなよ。私もサファイアも、長いこと迷路を通してでしか生を実感できなかったんだから。貴方まだ色々葛藤してるの?」

「まぁ……うん。ごめん」

「仕方ないわよ」


 迷路はその後特に何も言うことなく、トーストを齧り始めた。


「みんなは? まだ寝てるの?」

「ロゼやなわては疲労も激しいでしょうし、当分はベッドの中でしょ。他は庭に出てるわよ」


 ちらりと中庭の方を見ると、ルーチェと子雀と柊がサングラスかけて日光浴してるのが見えた。何してんだアイツら……。


「さて、と。これからどうするの?」

「少し遊ぶ」

「それはいい案ね。けど、その先は見据えないと」

「……世界を正常にする。これは確定路線だったからやり遂げないとだよ」

「貴方が犠牲になる必要はないと思う。大事なのは『勇者』と『魔王』がこの世界から消えること。その影響力を残し、世界の勢力均衡に一役買った上で、ね」


 木葉の元々の計画、それは『必要悪』の計画だった。魔王である木葉を、勇者に討たせる。その為に勇者である松本シンを残さざるを得なかったが、サファイアの存在が発覚してからは迷路に討たれるつもりではいた。

 これにより世界から悪魔保持者を消滅させ、勇者と魔王という世界の危険分子を取り除く予定であった。


「日本に戻ろうがいつか私が死んだ時、涅槃に悪魔が解き放たれるよ」

「でもそれは今じゃない。100年後の世界なんて、私たちの知ったことじゃないでしょう?」

「……それがこの1000年の悲劇に繋がったことを、迷路はよく知ってるじゃん」

「…………」

「飛騨の民の怨念たる悪魔は残らず消滅させる。それは既定路線だよ」


 木葉の意志は固い。迷路の説得にすら応じないのなら、考えを変えるのは難しいだろう。

 それより現状の問題点は山積みなのだ。


「残る悪魔保持者はピッチカート、なわて、ロゼ、カデンツァ、木葉。カデンツァはどのみち契約に時間制限があるからいいとして」

「てことは残るは……」


「おはよ〜2人とも〜」

「早いわねぇ。あたしまだ頭重いわー」


 ロゼとなわてが起きてきた。余裕綽々なフォルトナ戦とは異なり死闘と呼ぶべき戦いを繰り広げた2人は数日起きてこないんじゃないかと心配していたが、杞憂だったようだ。


「まだ眠いよ〜」

「寝てていいんだよ? 戦後処理はレイラ姫とマリア、ラン君がやってくれてるし」

「戦後云々よりめーちゃんに抱きつく為に起きて来たんよ〜」

「わわわ!? ちょ、めろんおっぱい! 重いわよ!」

「えへへ〜このノリ懐かしいんだぜ〜」


 寝起きでグデグデしてるロゼは迷路にのしかかって甘えていた。


「ごめんね」

「……貴方は色々抱え込みすぎよ。大方私より味方の撤退の心配をしたことに罪悪感を覚えてるとかでしょう?」

「わぁお見通し」

「感謝してるのはこっち。貴方が体張ってくれなかったら今私たちは此処でこんな風に戯れあっていなかった。ありがとう、ロゼ」

「めーちゃんー!!!」

「重いのよ!」


 戯れ合う2人を微笑ましそうに見ながら、木葉はもう一眠りしようとソファに寝転んだ。


「取り敢えず、ダラダラしよう」


 木葉のこの言葉に異論を唱えるものは当然いなかった。


……


…………


……………………


 1週間思う存分ダラダラした後、一行はお互いの情報を摺り合わせ、今後の方針を決めようとしていた。


「涅槃にいた悪魔の大半は消えたってこと?」

「うん。酒呑童子曰く、食べた奴らに引き摺られて消滅したっぽいね。まぁアイツ最後の方は自分で食った悪魔を放出しまくってたから仕方ないけど」

「放出した結果がこちらになりま〜す」


 ロゼはドロドロのヤバそうな黒い物体を箱から取り出して見せた。決戦後、余力を残したロゼとなわて、カデンツァ、ピッチカートらによって討伐された悪魔。ノルヴァードの心臓が彼らを捕食する役目を負ってくれたお陰で、掃討作戦はだいぶ楽に進んだ。

 そのせいでノルヴァードの心臓ーー福音の悪魔は今や凄まじい呪物と化している。


「涅槃に悪魔はもう居らず、ここにある心臓とここに居るみんなが最後の悪魔保持者ってわけだ」

「このろくでもない存在はさっさと抹消するに限るわね。取り敢えずこれはアンタが食すのが1番よ」


 なわてが目線を向けてくる。


「あーうん、もう慣れたけどね」

「焼いたら美味くなるんじゃないですかね的な」

「ハーブで臭み取ったらいけるんじゃないかな〜。結構生臭くて食えたもんじゃないんだよね〜」

「やっぱ煮込むのが1番でしょ」

「汁を全部飲まなきゃならんから却下だな」

「ゲテモノ喰いの趣味は私にもないさ」


 上から木葉、子雀、ロゼ、なわて、ピッチカート、カデンツァだ。

 黒い心臓をどう食すか楽しそうに議論する一行をドン引きした目でみるルーチェ。


「こいつら悪魔じゃ……」

「その通り悪魔で……いや子雀お前違うだろなにしれっと混じってんだ」


 結局ハーブと塩入れたお湯で茹でて豪快に生でいくことになった。


「……………どうですか? 我が主」

「まっっっっっっず!!!」


 奮闘虚しくゲロまず評価。


「うええええ、蟹、蟹くれ!」

「木葉貴方、王宮決戦で普通に食べてたじゃない……」

「あれとは比べものにならないくらい不味い! あああうう、蟹味噌うまあ……」


 蟹味噌は用意しておくに限るね。

 何はともあれ、これにてこの世界で悪魔を召喚できる可能性は限りなく低くなった。この場の5人が最後の保持者となるだろう。


「それで、僕たちはこののんに食べられればいいのかな〜?」

「心臓を差し出す、というのが悪魔捕食の方法ではあったけど、なわての事例もあるからね」


 なわては蠍の悪魔との再契約時、腕の一部を食べた。要するにその悪魔と合意形成出来るのなら、どこを食べようが特段変わらないのだ。


「ならば我輩は目、だな」

「……それ、ちゃんと意味わかってる?」

「両目ではない。片目だ。我輩のして来たことへの償いという意味でなら、幾らでも差し出そう」

「…………………恩に着る」


 ピッチカートは肩の荷が降りたようだった。ピッチカートは後ほど片目をくり抜くと言ってそれ以降は黙って話を聞く側に回った。

 

「あたしは腕ね。後で千切ってあんたのスープに混ぜといてやるわ」

「潔いな……あとそれ嫌がらせだから……」

「もう充分よ。命があるだけ儲け物。悪魔をアンタに集めることで争いの火種をなくす、これは必要な儀式よ」

「腕ないと不便じゃない?」

「元々戦闘時以外は使えてなかったんだし、もうないことに慣れちゃったわ。目も、まぁ片方残ってるから何とかなるわよ。元々そのつもりで日本に帰る予定だったんだから」

「そっか……」


 なわても心が晴れたような表情をしていた。全ての清算を終えた今、彼女を縛る鎖はなくなり7年ぶりの自由を謳歌出来る。


「私の場合、この鎌がそれだ」


 カデンツァは神話級の術具:天津殺シを差し出してきた。初代国王パルシアが神話の中で振るった最強の術具。まさか、これが、


「初代国王パルシアは悪魔と契約していた。悪魔を現世に留めておく上で、これを触媒にさせてもらっている。この術具を溶かし、君に食べてもらおう」

「……………契約が満了したらお前は」

「ああ、君のことも忘れる。いろんな思い出は消え去り、私は2度と冒険に出ることはなくなるだろう」

「……いいんだな?」

「勿論。その為に仲間を作ってきた。それに、これで人生が終わる訳じゃない。言っただろう? 生きてれば何とかなると」

「……………………ありがとう」


 カデンツァは冒険の終わりを見越して仲間を集めていた。彼女の仲間は皆生きており、きっと全てを忘れた彼女を支えてくれるだろう。


「最後は僕かな。こののんになら心臓を食べられても良いんだけど」

「それは駄目」

「だよね〜」


 ロゼはあいも変わらずのほほんとしながらジョークをかましてきた。

 

「僕の場合、明確に契約した訳じゃないからどうすればいいか分からないんだよね〜……。心臓を食べるのが一番手っ取り早いと思うけど」

「私がその選択肢を選ぶことは満に一つもないからな」

「だから困ってるんよ。このままだと僕はこののんと心中することになっちゃう」

「なんか嬉しそうなのは気のせい?」

「気のせいじゃないんよ〜」


 思わずため息を吐いてしまう。そう、1番の問題はロゼの扱いだった。ロゼは多くの異端審問官の心臓を食し、その結果として契約を結んでいる。つまり多くの悪魔を抱え込んではいるもののその象徴たるものがなく、ロゼから悪魔を引き剥がす方法がないのだ。そして恐らくそれは……。


「狙ってやったよね? こうなることがわかってて」


 ロゼを非難するような目をする木葉。大変珍しい光景だ。けれどロゼも怯まない。彼女も存外頑固である。


「そうだよ。めーちゃんとこののんが心中しようとしてるのは知ってたからね。それなら僕も一緒に行こうと思って。でもそんなの絶対こののんは許さないだろうから、許さざるを得ない状況にした」

「悪魔を集めるにはロゼを死なせなくちゃならず、それが出来ないなら私は生きるしかなくなる。……ねぇ、ロゼ」

「やだよ?」

 

 木葉が何か言う前にロゼはそれを遮った。

 悪魔の譲渡は本人の意思によるものも大きい。ピッチカートは罪悪感、なわては達成感、そしてカデンツァはもう契約満了なのでタイムリミット的にも悪魔を保持する理由がない。

 しかしロゼは違う。これは木葉と迷路を生かすための保険なのだ。ロゼには悪魔を手放す理由がない。


「次の話題に移ろうか〜。この話し合いは絶対平行線だと思うから」

「…………………」

「こんな顔しないでよこののん。ここまで予想できなかったのは仕方ないと思うんよ。めーちゃんもこののんも働き詰めだったし」


 ロゼが悪魔と契約を結ぶ可能性を考えなくもなかったが、それが最後の最後でこう響くことになるとは思っていなかった。迷路もしてやられたという顔をしている。


「なわなわよろしく〜」

「はいはい。ほれ持ってきてやったわよ」


 なわてが木葉に向かって放り投げたのは透き通る桃色の水晶だった。


「落としたらどうすんだよ!?」

「そしたら日本に帰れなくなるわね」

「そんなしれっと……ってもしかしてこれ」

「そう。最後の【魔女の宝石】、【ライプツィヒの紅水晶(べにすいしょう)】。ワーグナー大聖堂にあった筈の宝石よ。ノルヴァードが持ってたから奪ってきたわ」

「死体を漁って?」

「そう、死体を漁って」


 心臓をくり抜き、宝石を奪い取る行為は字面だけなら正しく強盗である。




「これで、日本に帰れるわ」

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