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6章9話:あつまれ日本人!

日本人大集合!

温度差がすごそうです。

あと木葉はどんどん堕ちていきます、色んな意味で。

「新たな世界秩序、ねぇ」

「魔王って……いや、今の政府は何してんだよ……」

「魔王とも亜人とも手を取り合う社会の実現なんて本当にできるのかねぇ」

「でも件の魔王はロゼ・フルガウド様と恋仲なのじゃろう?」

「なんと!? あの竜王陛下と? ううむ、信じてもよいのだろうか……」


「世間が割れてるわねえ。木葉ちゃんは本当にいい子なのに!」

「ま、こんなもんでしょ。魔王への憎悪を抜きにしても、神聖王国の国民は自国が覇権国家であることを誇りに思ってた筈で、それが魔王によって崩された訳だから思うところもあるだろうし」


 トゥリーが不満そうにスコーンを齧っているのを見て、木葉は微笑ましげに呟いた。

 フォレストの孫娘であるトゥリーは新政府の法務省で働いている。木葉と迷路の推薦が大きかったそうだ。


「こーんなに可愛い子だって分かったらみんな掌返すのになー! ぎゅーーっ!」

「むぎゅぎゅくるし……。ぐぇ、げほっ。……でも元気そうで何より。正直戦いに巻き込んだこと後ろめたく思ってたから……」

「私もラクルゼーロ大学のみんなも木葉ちゃんに感謝してるんだから。やっとこれで恩を返せたと思ったら、法務省に推薦までしてもらっちゃって! ありがとね、木葉ちゃん!」

「ラクルゼーロ大学の学生が優秀なのは分かってるし、その辺有効活用してもらいたいからね」


 プイッと赤面してそっぽ向いた木葉が可愛くて仕方ないトゥリー。まだまだ彼女の抱擁が続いた。


 さてここ数日間でマリアージュ女王は『メルカトル協定』を発表し、魔王や亜人、メルカトル大陸中の国家による平和宣言を行った。

 みなを虐げていた旧王都政府の悪行も暴露され、それを成敗した新女王とロゼ・フルガウドへの期待の声は日に日に高まっていく。

 一方で魔王という単語に反応し、また現時点で王都政府は一党独裁状態であることを踏まえて政権批判を行うものも多い。しかしこれに関しては反対派の旗頭となるべき存在が居ないので大きな問題にはなっていなかった。


 政権交代で多少の混乱はあったものの、今こうして木葉とトゥリーは喫茶店でお茶できている。そんなくらい王都の治安は良い。

 迷路は草案策定、ロゼは東方遠征中、子雀は今はなわての看病をしてくれてて、ルーチェも笹乃も何か忙しそうにしている。やはり木葉は暇だった。

 故にこうしてお茶をしたり、お店を回ったり、あとはまぁ復興のために色々やったりしている。


 そんな暇してた木葉に一枚の招待状が届いたのは、王宮決戦から3ヶ月経ったある日のこと。ロゼが東都を制圧したとの報せを受け、木葉専用の執務室(読書するだけの部屋)で他の手紙等を読んでいる時だった。


「えーっと、これ何……」

「貴方に来ていた手紙の大半は私が捌いといたわ。……とはいえ、こればかりは木葉の考えを聞きたいし」


 肩に頭を乗せて甘えてくる迷路がピンっと手紙を差し出してきた。

 中を開いてみるとそこには、


『日本人会、やりませんか?』


 という見出しの手紙。この筆跡はテストの時に幾度と見た。笹乃だ。


「うっわ……。まじかよ」

「行く行かないは木葉の自由よ。そもそも行く義理ないし」

「そーなんだよねぇ。ヒイちゃんとか行くのかなぁ」


 迷路は木葉の代わりに政治的なアレコレをこなしてくれているので、出来れば迷路との時間は大切にしたい。こんなめんどくさそうな誘いの話をしたくはないのだ。


「えっと……今日も、する?」

「ええ。王宮の離れは今誰もいないもの」

「……………誰かに見られるかも」

「木葉はその方が興奮するんでしょう?」


 主従プレイ的なのにハマった木葉は百合行為の幅をどんどん増やして、今では王宮の離れの塔で迷路に可愛がってもらうのがお気に入りとなっていた。

 

「ーーっぷは。わんわん……なんちゃって」

「あら、まだ恥ずかしいの? その首輪がついてるうちは私のペットなのよ、木葉?」

「はーい♡」

「ふふ、ふふふふ。あの木葉が、みんなが恐れる魔王が、今こうして私にお外で、首輪をつけられて、生まれたままの姿で愛されてるなんて、こんなところ見られたら色々やばいわね?」

「こんなふうにしたの、迷路だからね……?」

「そうね。さ、もっと可愛がってあげる」


 服従のポーズで舌を出す木葉。加虐的な笑みを浮かべた迷路はそんな木葉にもっと様々なことを教えていく。


 ーー手紙のことなど頭からすっぽ抜けていた。


……


…………


……………………


「ああいうこと外でやってんじゃないわよ」

「……………………………………見えてたの?」

「蠍の目なめんな。いやあんたの性癖にケチは付けないけどね、魔王があのザマは見られたら権威やばいでしょ」


 医務室行ったらさっきのプレイをなわてに見られてたことが判明した。下から見えないような位置の筈なんですけどね。


「ただでさえコーネリアとピッチカートの全裸大行進で神聖王国の風紀乱れてんのにさ」

「……アレはロゼに言ってね、私反対したもん……」

「裸族衆に今あんたの名前も加わったから。はあ、最近のガキませてるなぁ……全裸ペットプレイとか、異世界こわ」

「私より7年長く異世界にいる癖に今更この世界の怖さに気付いたか」

「んなどうでもいい話しに来たわけじゃないんでしょ? 本題、早く」

「なんか怒ってない?」

「さっきのよりもっとハードなことして欲しいの?」

「……ちょっと気になるけど、まぁ本題はこっちね」


 いそいそと手紙を取り出す木葉。中身は『日本人会』の件だった。


「一緒にいかない?」






 笹乃はどうやら結構大きな部屋を取ったらしい。

 中に入ると大きなテーブルにはいくつも料理が並んでおり、日本人は結構揃って食事をとっていた。しかし木葉となわての登場に一同静まり返る。

 嫌な空気だなぁとか思いながら、なわての車椅子を押しながら木葉も席に着く。


「木葉ちゃん! 良かった、来てくれたんですね……って、貴方はあの時の!?」


 驚く笹乃に木葉が解説を入れた。


「ああ、そっか、正体知らなかったんだっけ。磐梯なわて、筆頭司祭だけど日本人だよ」

「そ、そうだったのですか」

「久しいわね、最上笹乃。なわてよ。改めてよろしく」

「はい、あの時は本当に助かりました! ありがとうございます……貴方のおかげです……」

「いいわよ、そんなに感謝しなくても。あんたの予感通りちゃんとまた会えた。それで充分じゃない」


 笹乃は王都脱出の際になわての力を借りている。そして再会できる予感がするとも言った。そんな2人は数ヶ月の時を経て再会の握手を交わしたのだった。

 割と感動的なシーンなので木葉は少しうるっと来ていたが、それをぶち壊すかのように男の声が響いた。


「よし、全員揃ったな。それじゃあ日本人会議、始めようじゃないか!」

「さんせーい!」


 何故か取り仕切り始めた勇者:松本シンと聖女:上田おとめ。3ヶ月間も王宮に閉じ込められていたから、随分と暇だったらしい。

 木葉としては日本人たちの今後の動向を知っておく必要があったので出席したが、積極的に話し合いに参加するつもりはない。ということで皿に乗っていた大量の蟹をむきむきし始めた。


「まず現状、俺たちは世界を救わなくてはならない! それは分かるな?」

「そうだね! その為に木葉ちゃんと仲直りするんだよね!」

「その通りだ」


 根底から間違っている。しかし訂正するのは怠いので木葉は蟹を剥く。剥いたそばからなわてに食われたのでムカついたのだが、まぁ病み上がりだしということで許した。


「くっ、許してないじゃない! 返せあたしの蟹!」

「私のですぅ! ほらもうお腹の中なので返せませーん!」

「幼稚な真似を!」


 2人がなんか遊んでる間、向こうはヒートアップしていた。


「違いますよ松本くん、上田さん。散々教えましたよね? この国の非道と世界の状況。そして今回の『メルカトル協定』で漸く国同士が連携して教会勢力に対抗できるようになったんですよ!」

「だが俺たちはそれを目で確かめていない! そこの魔王が人々を洗脳しているのかもしれないじゃないか!」

「貴方達だって見る機会はあった筈です! それを見てこなかっただけなのに他人に責任を押し付けないでください!」


 笹乃の正論に、そーだそーだーと5組からも声があがる。特に4組連中へのヘイトが溜まっていた花蓮と零児は珍しく感情的にキレてた。


「そーよクソバカども! 木葉ちゃんの悪口言ったの絶対許さないわ!」

「花蓮に同意……ってほどじゃねぇけど4組が気に食わねぇのは同意!」


 花蓮が率直な暴言吐くのは珍しいぞ……。


「落ち着け、みんな! 4組と5組の意見に相違があるのは見てきたものが違うんだから仕方ないだろ」

 

 語李が仲裁に入ろうとするが、なんか逆にヒートアップした。さっきからヒートアップしかしてない。


「TSしたカタリナちゃんは黙ってて!」

「うるせー黙っておっぱい揉ませろ語李ー!」

「語李くん可愛くなったよねー!」

「くっ……早く元の体に戻りたい……」


 木葉は見ていないが、語李もといカタリナが日本人会の会議場に入った時はなんかもう煩かったらしい。他の5組男子は「これがTS……ゴクリ」となり、語李をかっこいいと思ってた女子は何故か喜んでいた。

 後で着せ替え人形になるんだろうなぁ、と木葉は他人事のように蟹を剥いて口に放り込む。ちゅぱちゅぱ。


「木葉! 蟹食ってないでなんとかしてくれ! なんかコイツらTSに対する興味が凄いんだが!?」

「あー、私にもおっぱい揉ませてくれたら何とかしてあげるよカタリナちゃん」

「このはああああああああ!!!」


 これぞファンタジー、な光景が4組にとっては珍しいのだろう。


「コホンッ。木葉ちゃんの今後について、聞いてもいいですか?」


 笹乃が仕切り直そうと木葉に話題を向ける。だが今度はなわてが茶化し始めた。


「木葉の今後ねぇ……変態露出ドMレズが今後更にどう開花していくか私も気になるわね」

「なわて!? 何言ってくれちゃってんの!?」

「木葉ちゃんが露出!? カメラ、カメラはどこ!?」

「むりぃぃぃぃぃぃぃ」

「わああああ梢が出血多量ー!?」


 梢は担架で運ばれていき、花蓮は「カメラ……カメラ」とブツブツ呟きながら樹咲にはがいじめにされていた。


「あんたの影響力やばいわね……」

「なわてお前マジでやめろ……流石の私も恥ずい……」

「あのー……そろそろ仕切り直しても……?」


 笹乃が可哀想なのでちゃんと仕切り直してあげることにした。



………


…………………


「ちゃんと世界の全容を知らない4組のみなさんも、状況を一部しか知らない私たちも、これからどうすれば良いかなんて分からない。だから、木葉ちゃんに聞く必要があるんです」

 

 もっともな意見だ。よく考えたら月光条約同盟にいるのに、笹乃にはちゃんと目的を話していない。

 とは言えこの話は4組連中にするわけにもいかない。こいつら直ぐ色んなところに吹聴しそうだし。


「私の目的ねぇ。最後の【魔女の宝箱】を攻略して【大魔法創造の魔法】使ってみんなを日本に帰す。そんな感じじゃね?」

「え!? 帰れるのか!?」

「そーなんだよ帰れるんだよ松本シン。おめでとう、君たちは危ないこと一切経験せずにお家に帰れるよ」


 松本シンをはじめ、4組のみんなは動揺していた。だって、だって……。


 ーーまだ、異世界堪能してねぇ……。


「し、しかしこれから異世界の冒険が」

「色んな人との出会いとか、色んな街に行ったりとか」

「可愛い女の子に出会ったりとか」

「強え敵と戦ったりとか」


 異世界に何か幻想を抱いてる4組諸君の眼差しが鬱陶しい。なのでバッサリ切った。


「もう全部経験した。その上で言うけどこの世界ヤバいから日本人は全員帰った方がいいよ」


 重みがちげぇや……。笹乃らは一応木葉のトラウマをシュトラウス氷河で覗き見ているため、その言葉の重みをずっしりと感じている。

 この世界は並の異世界モノより幾分かハードモードなので何も知らない日本人が冒険とか求めて旅する世界ではない。5組のみんなはそれを嫌と言うほどわかっている。


「そ、それなら私達は何をすればいいの!? 私も木葉ちゃんと一緒に世界を救いたいよ! 苦しんでる人がいるなら助けてあげたい、一緒に旅しよう!」


 上田おとめは目に少し涙を溜めて言った。なんていい子なんだ……と4組連中は感動している。なんなら5組の洗脳されてた組も感動している。


「何すればって王宮で大人しく待ってなよ。あとは魔女倒せばそれで終わり。みんな無事に帰してあげるって。あー笹乃と語李くんには少し残ってもらうけど」

「私も戦いたい! みんなを救う!」

「あーほんと私こいつ苦手……何これ昔の櫛引木葉そのまんまじゃん……」


 上田おとめの姿が、かつての自身に重なって思わず吐きそうになる木葉。すくなが木葉の真似をする時のレベルじゃない。そんな木葉の感情を知ってか、笹乃は苦笑いしている。

 するとここで、ずっと蟹を剥いてたなわてが漸く口を開く。


「誰と、何のために戦うかわかってんの?」

「え、と……分かんないけど、それは木葉ちゃんが教えてくれれば」

「いや、何で知りもしない相手とそんなバトルなんてやりたがるわけ? あたし見たら分かると思うけど腕はもげるし目は潰れる、なんなら心臓も潰れる。ゲームじゃないのよこの世界」


 なわてが頭に巻いてる包帯を解く。本来眼球がある部分は黒く窪んでおり、笹乃含めた多くの日本人が顔を顰める。なんなら4組勢は悲鳴を上げた。

 再び静まり返る会議室だったが、木葉からすればこういうの見慣れてるので今更感はある。


「そーそーよく言ったなわて……っておいお前蟹残ってねーじゃん!?」

「ふふん、厨房から貰ってきなさい。って口引っ張るな! もう口の中にはないわよアホ!」


 じゃれあって雰囲気台無しにしてる2人だが、なわての言ってることは正しい。だが4組勢のお花畑感は相当なものだった。


「うん! だからみんなで協力すればきっと怪我もしないよ!」

「そうだな、俺たちが力を合わせればどんな困難も乗り越えられる。おとめ、良いこと言うな」

「えへへ〜♪ ありがとシンくん!」

「ずるいぞ! おれもそう思ってたからなおとめちゃん!」

「あたしもほら、サバサバ系だから思ってたわー」





「どーするよこれ」

「あたしに聞かないでよ……つーかいい加減蟹スプーンで中から取るのは諦めなさいよ、もうないわよ中に蟹の身は」


 木葉が蟹を取りに厨房に向かって仕切り直し。


「もうあたし何も言わないから、あとは好きにしなさいよ。あんたもさっきから喋ってないけどなんかあたしに言いたいことでもある? 夜弦くん」


 なわての視線の先、褐色の青年:夜弦はバツが悪そうになわてに向かい合った。


「磐梯さん……磐梯さんはこれからどうするんだよ」

「ノルヴァード・ギャレクを殺す。ついでに教皇とフォルトナも殺す。以上」

「……じゃあ目的は一緒だわ。……こんなこと言う資格ないかもだけどさ……俺、磐梯さんが生きててくれて良かったって思ってるから」


 多分それだけ言いにきたのだろう。夜弦は会議室から出て行った。入れ違いのように木葉が更に大量の蟹を乗せて戻ってくる。


「罪悪感あるんだろうね。ずっと隠れて見つからないようにしてきたこととかさ」

「異世界での生き方なんか人それぞれなんだからどーでもいいわよ。夜弦くんもそろそろ解放されていい頃よ……ってあんたお代わりの量エグくない?」

「なわてが食い尽くしたからな! 畜生、これ全部私のだからなもぐもぐもぐ!」

「アンタやっぱ子供だわ……」


 まだ会議より蟹のことで揉めてる2人に、4組勢はイライラしていた。


「で結局俺たちはどうすればいいんだ! 蟹食ってないで参加しろ!」

「「「そーだそーだー!」」」


 4組のブーイングになわても木葉もブチギレ寸前である。


「うるっさいわね。じゃあ聞くけど……これからやることは人殺しよ。ファンタジーだと『倒す』とか『やっつける』とかいう表現してるけど、あれちゃんと『殺し』てるってわかってる? アレと同じよ。あんたらガキにそんなこと出来るの?」

「あ、あんただって子供じゃ」

「あ"?」

「ヒィッ!?」


 なわてにその話題は禁句だよぉ。怒りのあまり右腕から悪魔の腕が伸び、空中をフヨフヨと漂っている。

 だがそんななわてに臆さず、上田おとめは反論した。


「殺さないよ! 傷つけないで話し合う! その道を模索しないで傷つけ合うなんて良くないよ!」

「木葉、コイツボコボコにしていい?」

「あー、うーん、一応抑えてもろて」


 ノルヴァードに親友を殺されたなわてにとって、ノルヴァードと話し合うなんて選択肢はない。無論それを指示した教会の連中、果てはフォルトナも同罪だ。というかそいつらは元凶だ。

 木葉とてフォルトナを殺さないことにはこの世界の殺戮を根本的に止めることは出来ないので、そこだけは譲れない。


「人を信じようよ! 色々傷ついて疲れちゃったから、木葉ちゃん達は今そんな思考になってるんだよ!」

「そーだねえ。疲れたねえ、うん、疲れた。主にお前らの対応に……。そろそろこの会議終わりにしようよ、んでみんなで蟹食おうや蟹」


 おとめの発言があまりにもお花畑なので、木葉はもう会議自体辞めたかった。

 これ以上話し合っても無駄である。さっさと終わらせよう。


「あーもう、私の目的だっけ? 


まずノルヴァード・ギャレク以下敵対する教会勢力を殺しまーす。そんでフォルトナをぶっ殺します。悪魔を全部取り込んで両面宿儺を復活させたところで、私がこの世界の神となる。


日本人はみんな帰してあげるよ。そのあと思う存分この世界を支配して私のものにする。素晴らしいね! あは、あはははは!!!」


 大袈裟に色々言って敵対感情を煽ってみようとしたが、ベシッと後頭部を柊に叩かれた。


「いたぁ!? ヒイちゃん何すんの!?」

「木葉! お前黙って聞いてりゃまたそーやって……」


 帝都決戦以降、どこか隔たりのある柊は木葉のことが心配で仕方ない。だからこそ悪役に徹しようとする木葉をなんとか止めたいと思っている。

 

「木葉やなわてさんに任せとくと話進まねぇから代弁するけどさ、アタシらは世界救うために戦ってる。相手はこの世界で1000年に渡って虐殺を続けてきた奴らで、話し合いなんかもう出来る段階じゃねぇ。お前らが思っている以上に此処はやべぇんだよ。歴史の教科書で見たような大虐殺がいま、ここで起こってる。


頼むから、バカみてえな理由で命を散らそうとしないでくれ…………」


 柊の本気の訴えに、おとめたちも思わず息を呑む。一気に話したからか少し興奮気味な柊は、その辺のコップを口に運んで水を流し込む。


「笹ちゃん先生、アタシとアンタは要だぞ。木葉が暴走してくだらねぇ真似するのを止める。花蓮、語李お前らもだ、一緒にとめろ。みんなで生きて帰るんだ、ぜってーにな」

「そ、そうですね」

「ああ、わかってる。言いたいこと全部言ってくれて助かった」

「真室さん……ありがとう」


 柊の本音をちゃんと聞けた気がした。

 自分のやろうとしていることを言ったら、きっと柊はブチ切れる。今のあの台詞でそれだけは確信を持って言える。けど、


(……こんなに思ってくれてるのは、嬉しいなぁ)


 こんなにも胸が温かい。



 こうして日本人会は荒れに荒れたものの一応幕を下ろした。

 ちなみに蟹は木葉が食い尽くしたし、オレンジジュースはなわてが全部飲んだ。

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[一言] ノクターンでガッツリ書きません? 主従プレイ読みたいです!
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