TIPs:小説のネタ
あけましておめでとうございます!
今年中にこの作品ちゃんと完結させるので最後まで見届けてください!
「あーしのスキル?なんに使うのそんなの」
迷路がラクルゼーロに赴く前、彼女らはとある人物と再会していた。
明るい茶色の髪をボブカットにした気怠げそうな女の子は赤く塗られた爪をふーふーして乾かしていた。
「ルチア・オリバード、貴方の【歌詠みの一族】としてのスキルは『文化の保存』に特化したものだったはず。それはつまり、魔法を継承するための術式を何か物に保存できる力もあったりするんじゃないかしら?」
ヴィラフィリア兄妹の妹の方、ルチア・ヴィラフィリア。東方司令部で捕虜となっていた彼女は心の傷も癒えて元気そうにしていた(柊の章参照)
奥羽でダート地方 (現実で言う低地地方:ベネルクス三国)に下ろして貰った兄妹は、その後ダート総督のネーデル中将を筆頭に北方領主を味方に付け、木葉やレイラ達との歩調を合わせようとしていた。
そんなルチアに協力を要請しに、迷路&柊はダート地方最大都市:アムステルダンにやってきたのである。
「あるけど……オリバード家って滅亡してるじゃん?」
「えぇ、まぁ」
「あーしの羊皮紙はオリバードのスキル《稗田阿礼の編纂》を模倣して作ってる限定品なんさ」
「オリバード家の特殊スキルは……確か奪われていたわね」
「そ。これはまぁあーしの血脈が受け継いでる遺伝みたいなものでさ。数に限りがあるの。つまりあーしらの決戦にも必要なわけ」
「…………………何を欲してるの?」
ルチアの話は至極単純。対価の要求だ。
「あんま難しいことは求めない。戦後のダート地方への食糧供給優先権とか、オリバードのスキルを発見したら横流しして欲しいって、もうそっちには伝えてあるし」
「へぇ。それなら」
「だから、小説のネタの方をちょうだい」
……………………?
「は?」
迷路が間抜けな声を出す。
どうせ交換条件が必要なのだからと色々準備してきたのに、なんか予想外のところから玉が飛んできた。
「しょう、せつ?」
「そう!あーしさ、本書くのが好きなん。歌詠みとして将来は歴史書の編纂もやりたいって思ってるくらいだしー」
「へ、へぇ、それで……?」
「魔王とそのハーレムのイチャラブ生活でお話書かせてくんない?」
作者は少し読みたいっす。
「は、はああああああああああ!?」
「や、勿論それで稼いだお金はちゃんと支払うし」
「そういう問題じゃないわよ!え、何を書くって?」
「イチャラブ生活。あ、性活でもいーけど?」
「いーけどぉ?じゃないわよ!!何を思ってそんなの書こうと……」
「や、歴史書の編纂って疲れるじゃん?本業の作家が時たま他の作品を書きたくなるのと同じように、時々娯楽小説書いてないと心が疲れちゃうわけ」
「だからって私たちはやめなさい!魔王のイメージが崩れたら世界秩序が乱れるわ!」
「そんなに乱れた性活送ってんの?」
「ちがああああああう!!」
キャラ崩壊しそうなほど真っ赤になって叫ぶ迷路。柊は耳栓をつけていた。
「ま、乱れてる、よな」
「おっしナイスだしー」
「柊!!」
ガッツポーズをするルチア。R18作品はいつの世も需要があるはず。
「なーなー、魔王ってSなん?Mなん?」
「なによ頭の悪い会話……」
「やっぱ猫っぽいお姉さんがネコなん?」
「私はタチよ!!!……あ」
「ネタげっとー」
「るーちーあー!!!」
墓穴を堀り、真っ赤になりながらルチアを追いかける迷路。楽しそうに逃げ回るルチアを見て、柊は平和になったなぁとか思いながら恐らくルビライトお手製であろうケーキを頬張っていた。
「あたしからルチアにネタ提供しとくから、迷路は先帰っててもいいぜ?」
「あんたに任せたらあることないこと吹き込まれるかもしれないでしょ!……これもスキルノートの為よ。背に腹は変えられないわ」
「んじゃ沢山ネタ提供してもらうしー。やー、百合は初めて書くけど結構ジュルリなの出来上がりそうジュルリ」
「よだれ、よだれ垂れてるぞルチアー」
柊に涎を拭いてもらう。
この後迷路は散々根掘り葉掘り聞かれてくたくたになって帰る羽目になる。
(ごめん……木葉、ロゼ)
この本は後の世に魔王の評価を覆す重要な歴史的資料にな……ったらいいね。




