TIPs:異世界風俗
2代目勇者ユウ。木葉に勝手に名前をつけられたこの男は、現在笹乃の身体でとんでもないことをしようとしていた。
「おい、離せ餓鬼ども!俺様はなぁ、男として行かなきゃいけねぇところがあるんだよぉ!」
「ダメだよっ!流石にその身体で風俗行くのだけは私たち止めるよ!?」
「笹ちゃん先生の顔で"ボインのねーちゃんぱふぱふしてくるぜぇ"とか言われたら止めるに決まってんじゃん!」
ユウが顕現して2ヶ月近くが経過したが、既に彼はクラスメイトたちと仲良くなっていた、多分。
彼は100年前非常に女癖の悪い青年であるが、倫理観などは日本人としてある程度常識を備えている。とはいえ、
「いーだろ別によぉ。んくっ、んぐ、ぷはぁ。異世界の酒はうめぇなぁ」
「ちょ、何酒飲んでんだよ!」
「笹乃は意外と酒強えから沢山飲めていいなぁ。けけけっ、こりゃ女にも強いかなぁなんちって!」
「つまんねー……。じゃなくて!」
「こいつレズなんだろ?じゃあWIN-WINじゃねぇか!新たな扉開こうぜぇ!」
「笹ちゃん先生の自由意志なしに扉開こうとすんじゃねぇえええ!」
「……なにしてんの」
叫びながら笹乃に巻き付く鮭川樹咲を見て、木葉は冷たい視線を向ける。
「木葉!ちょうどいいところに!こいつ止めてくれ!」
「あー、今ユウなのね、はいはい。で、帝都の風俗かぁ……どんなのがあったかな」
「この、は?」
樹咲の目が冷たい。そんな目で見られても困る。
「ジョーク。てかユウってどういうのが好みなわけ?」
「あぁん?てめ……や、木葉のパーティーに1人いるだろ。そう、ボインだ」
「……ロゼに手を出したら捻り殺す」
瑪瑙に手をかける木葉をみて、ユウは前のトラウマから再び震え上がった。
「や狡いっすよ魔王さん、そりゃねぇっすよ、あんないい女独り占めしてるのは人類の損っすよ」
「わかる。いい女なのはめちゃわかる。故にロゼが私に惚れている事実で優越感えぐい」
「木葉!?」
「あああああああああああああ推しの惚気がてぇてぇよぉぉぉおおおおおお」
「梢うるさい……」
推しから罵られる梢はなんか身悶えしていた。
「つまり俺様にもヤらせてくださぴええええええっ!?」
「遺言はそれでいいか?戒名もついでに私が付けといてやるよ」
「ヤるは冗談にしてもさぁ!魔王さんあんたハーレムすぎだろ!俺様より侍らせてる女の数多いってどゆこと!?!?」
「お前の時代の勇者パーティーって何人いたんだよ……」
ちょっと気になる。
「ゆーてそんなに居なかったんだぜ……4人くらい娼婦連れて冒険したら仲間の騎士に怒られてよ、美女画コレクション全部切り刻まれた」
「その娼婦スキル持ちとか?」
「や、ただの娼婦」
「自業自得だよ馬鹿。てか伝承と食い違ってるな、お前滅茶苦茶ハーレム野郎って残ってるんだけど」
「仲間のうち1人を除いて食ったぞ?」
「王都政府もここだけは情報捏造して欲しかった」
いつも捏造大好きなのに……。
「パーティーには女が4人居てな。3人は食った。因みに一度やったらみんな冷めてた」
「どんだけ酷かったんだよ……。ちなみに残り1人ってのは?」
「教会出身の奴だな。ピッチカートって名前の堅物女だったぜ……」
その時物陰がパッと飛び出してきた少女ーーロゼ。
「ピッチカート……?」
「お、ボインの嬢ちゃん!なんだぁ?俺様に惚れでもしたかぁ?」
「あ、それはないです」
「ロゼが敬語って相当だぞお前……で、知り合い?」
「んー、筆頭司祭にそんなのいたなぁって。まぁどの道僕の抹殺リストに入ってるからね〜」
それを聞いてもユウは特に何かを言うわけでもなくただ酒瓶を取ってグイッとやっていた。笹乃の身体でそれをやられると中々違和感が凄い。
「あれ、てかロゼいつからそこにいたの?」
「……今なんよ〜」
「顔赤いぜぇ?けけけっ、さっきの話聞いてただろ?あー、ぷはぁっと。良い女の照れ顔が1番の酒のつまみだな。やっぱ抱かせろよ!」
「笹乃の顔で言うと殴り辛いからムカつくな。渡さねえよ私の女だよ」
「へっ!?」
ロゼを抱き寄せる木葉。ユウはやれやれとばかりに肩をすくめた。
「そーですかぁー。じゃあ俺様はボインの嬢ちゃんよりいい女を頑張って探しに、風俗行ってきますかねぇ」
「そんな奴いないけど、まぁ頑張れ」
「おっ、魔王のお墨付きもあることだし、どうだ、餓鬼どもおめーらも」
「え、俺らっすか」
クラスの男子達が食いつく。それをまた樹咲達が止めるという構図。というか側から見ると教師が男子生徒誘って風俗行こうとしている図はヤバい。
そんなこんなで再びわちゃわちゃ揉め始める一向を見つつ、木葉はロゼの方を見た。顔が真っ赤だった。
「どしたの?」
「……褒めすぎなんよ〜」
「事実だし。どうする?私達も風俗いく?私、一応夜の女なんだ」
王都地下街、翠玉楼の美女ここに見参。とまぁ木葉の冗談はさて置き、そんなドヤ顔の木葉を見てロゼも表情を緩める。
「今日はワインの気分かな〜。いい銘柄入ってる〜?」
「勿論。君のような美しい女の子に、乾杯」
ふざけ合う2人。
「……僕も凄い優越感あるよ、こののん」
「私だって。ふふ、あはははは!!」
「ふふふっ。めーちゃんの事は好きだけど、やっぱりめーちゃんより愛されたいなぁって、そう思った。負けないんだぜ〜」
「3人でってのもいいけどね、私」
「誰かの1番で居たいと思うのは自然な欲求なんよ。だから今日は僕のターン。沢山語ろう、こののん。僕、ボインだけが取り柄じゃないから〜」
「……知ってる」
こっちはいい雰囲気で終わりそうだが、その向こうでは風俗行く行かない論争が終わらないのであった。
感想あったら是非!




