5章19話:異世界転移1年記念
今回もまた描写に気を遣ってます。
「はい、【バルトの真珠玉】。適正次第だけれど、貴方達2人が持つに相応しいわねぇ。うっふふふ」
物凄いハスキーな声でドナウは言った。
迷路、笹乃の両名は真珠が1粒付いた首飾りを首に下げた。
「「アイテム:バルトの真珠玉を手に入れました。
特殊技能 《ゼノンの逆説》を手に入れました」」
「ゼノン……?なんのこと?」
「あ、私も貰えるんですか!?」
「貴方達は護りたいものがあったから乗り越えられた。それは大切な人を守るための力。お姉さんはその意思に報いるわぁ」
ドナウはニコニコしていたが、迷路はそれどころではない。
「問題はさっきの発言よ。何、旅のパーティーって。まさかとは思うけど」
「そのまさか♡お姉さんも旅がしたいのぉ」
「……スキルを獲得した今お前の言うことを聞く義理なんて」
「初代魔王を知る魔女の存在は、貴方達にとってもメリットになるとは思わない?お姉さん、何でもしちゃうなぁ♡」
「黙りなさい。信用できるとでも?」
「残り2つの宝箱の在処、2代目勇者の行方……何より好きに使える戦力として、情報面でも軍事面でも力になれるわよぉ?」
「なぜ、そこまでして」
迷路の問いにドナウは、
「勘のいい貴方は気づいてるかもだけど、お姉さんはね、生きてるのよ」
「……………………魂魄魔法。魂を肉体である魄に移して生き延びる方法、ね。貴方、それ一体何人目の体よ」
「さぁねぇ。でもこの地域は結構狂っててね、お姉さんに生贄を差し出してくるの。魔女様、怒りを鎮めてくだされ〜ってねぇ」
「屑め」
「そのお陰でお姉さん500年も生き延びてる。何が言いたいかわかる?」
「暇だから外に出たい、と。一生ひきこもってなさいゴミ屑」
「魂魄魔法の使い手を自由に出来るメリットをまだ理解してないのねぇ?下手をすれば死者蘇生だって可能な世界の禁忌。それに……貴方なら、その必要性はよーくわかってるんじゃないかしらぁ?」
押し黙る迷路。訝しげに子雀が覗き込むが、迷路は難しい顔をしたままだ。その苦しそうに葛藤してるかのような表情に子雀は違和感を感じた。
「決まりね!よろしく3代目魔王の愛人達ぃ。お姉さんも魔王ハーレム混ぜて混ぜてぇ」
「あ、あああああああ、愛人!?!?」
「あらぁ、違うのぉ?でもあそこの竜の姫は、今魔王とおせっせしてるけどぉ?」
場の空気が凍りつく。迷路は予想していたが、他のメンバーは何も知らないのだ。
「え、ヤってるってことですか?」
「子雀、あんたもうちょい表現控える努力ってものをしなさいよ」
「どぉぇぇ!?あの2人出来てたんですかぁ!?ちゅんは、ちゅんは許しませんよ!娘は渡さん的な!」
「あんた、母親ポジと姉ポジが埋まってるからって父親ポジ狙いに来るのなんなのよ……」
その辺結構子雀は潔い。
「え、あの桃色の美少女だよね?てかやっぱ木葉って……レズ……」
「あああああああああああああああああああ推しが他の女とおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ脳が壊れるうううううううう」
「うわ梢がぶっ壊れやがったぞおい!」
樹咲と梢は少なからずショックを受けているようだった。柊は、なんか察してたらしい。
「良いのか迷路。お主の恋人じゃろうが?」
「……良くないけど。ロゼなら木葉の心を癒やしてあげられるから。現状じゃ私1人には荷が重いのよ」
「《色欲》モードとかいうのを恐れてるように見えたが?」
「…………………………や、ほんとに1人じゃ無理なのよ」
色欲を抑えた際に三日三晩に渡って行為を行なっていた身としては2人でも足りないくらいだと、遠い目をする迷路。
暫く時間を置いて戻ってみると、そこには首筋等に噛み跡が見える木葉とロゼが乱れた服装でテントから出てくるところだった。
「なんでギリギリまでヤってんのよ!」
「ち、違うし!」
「違わないわよバカ!もう全員にバレてるから隠す必要もないわ」
「めーちゃーん、腰が痛いんよ〜……」
「何でもいいからちゃんと着替えてから出てきなさいそれくらいの時間は待ってあげるから」
少女着替え中。
「木葉、もう大丈夫なの?」
「………………大丈夫ではない、かも。手、握ってて」
「はいはい。これでいい?」
「恋人繋ぎじゃないとヤダ」
「ヤバい今日の木葉すごい可愛い」
精神崩壊の影響は大きく、迷路とロゼで両手を握り、更に子雀が膝の上に……猫かよ。
「てわけで、魔女が味方になったのだけど、大丈夫かしら?」
「初めまして3代目魔王ちゃん。お姉さんは美しき青きドナウ。ドナウお姉さんでいいわよぉ」
「……ドナウお姉さん」
「あら、なんか素直」
「あんたのせいで木葉がめちゃくちゃしおらしくなっちゃったじゃない、可愛すぎてこっちの心臓が持たないわよ」
「えぇー、お姉さんのせいなのぉ?試練なんだから仕方ないじゃなぁい」
しおらしいままの木葉を一刻も早く暖かい環境に戻したいとのことで、一向は軍艦に乗り込み航行を始める。
船に戻るとドナウは「これから南の海も見れるかしら、はぁ、お姉さんのボディを砂浜で晒す計画が現実のものにぃ」とか痴女じみたことを言い出していたが、誰一人ツッコむことなく全員の注意は木葉に割かれていた。
簡素型のお風呂を船内に用意して入れることになったのだが、1人が嫌だとのことで今度は迷路が木葉とお風呂に入る。その間にもキスをせがんだり、ずっと手を握ったままだったりと迷路的にはかなり美味しい展開ではあったが、同時にその精神状態への不安は増すばかりだった。
お風呂から出た後は暖かいお部屋にて木葉の好物ばかりを調理し、提供した。途中蟹漁船と交渉して何とか蟹の入手に成功したため蟹鍋をみんなで突くことになる。
「ほら我が主、美味しいですか?」
「うん、もっと要る」
「はいあーんです的な、なんちて」
「あーん、ぱく」
「ひぇぇ!?我が主、どうして「やらねーよ」とか言わないんですかぁ!?なんか怖いです的なぁ!!」
「子雀羽毛触らせて」
「ひゃああああああなんか役得ですぅぅう」
夜には1人で眠れないとのことなので迷路とロゼが寝室に入って共に眠ることになる。
さてその間、それ以外のメンバーは集まって会議をしていた。
他のクラスメイト達も事情を聞き、さっきからの木葉の様子の可笑しさに漸く納得がいったのである。
「……木葉、予想以上にヤバそうだったな。や、あんな過去背負ってたらそうなる、のか」
「うん、知らなかった。冷酷そうに見えて、やっぱりまだ私達と同じ年齢だもん。普通は精神壊れたまま、それこそ千鳥ちゃんみたいになっちゃうかもしれない」
「正直めちゃ可愛かったので偶にならこの状態も良いかもとか思ってしまったちゅんなのでした的な」
子雀は癒し枠として終始木葉の玩具でした。
「話を聞いていると、シャトンティエリやゴダール山決戦、帝都決戦で木葉ちゃんにとって大変なことばかりが起こりすぎていて、こうなるのも無理はなかったとは思うんです。寧ろこのタイミングでSOSがわかってよかったとさえ思います」
「笹乃とやらに同意じゃな。ただでさえ魔王の力を抑えるのに必死なのに周りで大変なことが起きすぎておる。聞けば異世界転移してまだ1年しか経っておらんのじゃろう?流石に波瀾万丈すぎじゃよ……」
元の世界の暦で言えば、木葉達が異世界転移してからもうすぐ1年が経とうとしている。歴史書を編纂するとしたら、今年は激動の1年だったに違いない。
「戻ったよ、あいやあいやお疲れ様だヨ」
「おかえり的なアカネ様。なんかありました?」
「やー、ちょっと面倒なことになったネ。ケーニヒスに戻るのは良いんだけど、国境部でまた連邦軍が集結してるヨ。しかも、なんかこの海域に他の国の軍艦がいるっぽくて」
「ちゅん?それおかしなことなのですか?」
子雀の疑問は最もで、ヴァル海とて他国の軍艦が通るのは問題ない公海のはずだ。
「ヴァル海はほぼ全てが帝国、そしてその友好国たる北方帝国によって沿岸部が統治されているネ(詳しくは紹介するよっ!その5 参照)。連邦に関しては現在嫌な動きを見せてるから『対敵通商法』を発動して海上封鎖の動きまでチラつかせてるんだけどネ」
(ヴァル海はバルト海にあたる)
「………?もうハテナしか浮かばないです的な」
「要するに経済制裁の一環として連邦のシーレーンを使用不可にしてしまおうという話じゃな。ヴァル海以外には不凍港を持っとらん連邦はこれからの時期海が使えないというのはかなり不味いのじゃよ」
ルーチェが解説してくれる。
「そそ。つまり連邦じゃなくて西からやって来た船なんだけど、報告に寄ればそれ、連合王国の軍艦なんだヨ」
ブルテーン連合王国。メルカトル大陸において、神聖パルシア王国と肩を並べるほどの大国で全世界に植民地を持つ巨大帝国である。連合王国は北方帝国や帝国とも友好的なのだが。
「王立海軍の旗艦:ヘルシング、強襲揚陸艦:アークブリタニア、補給艦:ナイチンゲール……etc。間違いなく主力艦隊だヨ。なんでこんなところにいるのかなぁって」
「せ、戦争でもおっぱじめるんですか!?ちゅんは嫌ですよ帰りますよ!」
「んー、そうならない為にも一度ケーニヒスに戻って待機しておきたいヨ。何か間違いがあってからまたこっちに来るのは大変だからネ。それとこっちも問題なんだけど、神聖王国の軍艦も帝国領ユトランドの海域で捕捉されてるんだよネ。正直何考えてるのかわからないヨ」
不穏な動きを見せるヴァル海周辺の各国海軍。だがそんなことはお構いないしに、ドナウは久しぶりのお酒を堪能して良い気分になっていた。
「んー、お姉さんも魔王を襲いにいこうかしらぁ。うっふふふ」
「誰かあの痴女止めてこいよ」
「えー、ちゅん関わりたくないです」
「てことじゃ、頑張れ笹乃」
「私ぃ!?」
「おやぁ、笹乃ちゃんが相手でもいいのよぉ。うふふ、大人のお姉さん同士、オトナな遊びをしましょう♡」
「へ、へ、へ?!いやあああああ、ちょ、誰か止めてくださいよぉおぉぉ」
こうして重苦しい雰囲気だったはずの室内から笹乃とドナウが叫び声をあげて出て行ったことで、全員の表情が少し緩んだ。
ちなみにこの後笹乃は、
「オトナな遊びって……玉突き(ビリヤード)ですか……」
「やだ笹乃ちゃんったら、玉突きだなんてえっちぃ」
「え、ええー……」
困惑する。
「ジョークジョークぅ。貴方、魔王のこと好きなのに良いのぉ?ほっといて」
「なな、ななななななななななな!?何を!」
「あの子、多分貴方のことも好きよ。攻めれば落ちる。今更愛人が何人になったところであの子はもう気にしないわぁ」
「……私の国の感覚では、それは許されないことです。木葉ちゃんはもうそんな事言ってる余裕すらないんだとは思いますけど」
「此処は貴方の国じゃない。そして、貴方にとっての今の居場所は此処。笹乃ちゃんだって本当はすっごく辛い思いしてるでしょぉ?全部忘れて好きなことしちゃえばいいってそう思うわぁ。オトナでいることってもっと自由で我儘でいい筈なのよぉ」
「…………………………………わた、しは」
ウィスキーのグラスを傾けるドナウ。
「お姉さんは自由に生きるわぁ。規則だけがオトナじゃないもの。うっふふふ」
「……………………羨ましいです」
これは、笹乃の本音が出た瞬間でもあった。
……
…………
……………………
一方木葉の寝室はというと、
「迷路、お願い」
「…………………わかったわ」
「さ、3人で、なんよ」
「あんた私にやったらぶっ飛ばすから」
「え〜めーちゃんの意地悪〜」
「はっ倒すわ……きゃああ」
木葉が迷路の口を口で塞ぐ。その隙にロゼは迷路の下着を脱がし始めた。
「ん、んんっ」
「ままま、夜は長いんよ〜。僕めーちゃんの方にも興味あるから〜」
ロゼが妖艶な表情で微笑む。そんなロゼを見て迷路は赤面しながら言った。
「………………ロゼのそれ、触らせてくれるなら」
「………………めーちゃんそれ可愛すぎない?」
我慢できずにロゼが手を伸ばすが、
「ねぇ、2人で盛り上がらないで。私を愛して……ね?」
「「………………もちろんよ(なんよ〜)」」
結局木葉を優先ということでロゼと迷路2人で木葉を一晩中可愛がる(意味深)ことにした。
「すごい、疲れたんよ……」
「同意……」
朝目が覚めて、裸の2人は木葉を挟んで見つめ合った。迷路は昨日ロゼにいいようにされたことも思い出して顔を逸らす。
「えへへ〜求めてくるめーちゃんも可愛かったんだぜ〜」
「……忘れなさいよ、ばかっ」
布団に潜って誤魔化す迷路。それでも小声で一言、
「あんたも……悪くなかった」
キョトン、とした顔をするロゼ。
「あー、やっぱめーちゃん可愛いなぁ。こののん居なかったらベタ惚れだったかも〜」
「私も……………木葉が居なかったら多分そう」
迷路が恋人である木葉の身体をロゼにだけ許してるその理由は、ロゼも迷路にとっては恋愛対象だからである。
事の発端は帝都決戦後、迷路がロゼを自室に呼んで木葉を襲ったことを詰問した際、お酒の勢いで色々あってそういう繋がりを持ってしまったことにある。
黙っていることは出来ないので木葉に白状したら、なんだか木葉は嬉しそうにしていたので今のままに至るわけだ。
3人が3人それぞれ共依存のような関係になっているぐちゃぐちゃっぷりは、一般的に見たら歪んでいるのだろうが、彼女らにとっては1番幸せな形でもあった。
「最初はあんたの事木葉にたかるライバルだと思ってたけど……分からないものね」
「僕は最初から結構めーちゃん好きだったけどね〜。ツンデレって感じで」
「ふふっ」
「あはははっ」
「なんか2人の世界作ってない?」
木葉の呆れた声がした。ドキッとして2人とも布団に入る。
するとコンコンコンとノックの音が鳴った。
「あの、ご飯出来てるんですけど、どうしますか的な」
「あぁ、えっと、その」
「失礼します的な」
「失礼するなちょっと待て!」
ジト目の子雀が部屋に入ってくる。そして3人の裸を見て、
「……まぁ、なんとなくそんな気はしてました的な。迷路さんの反応がヤケに淡白だったので」
「え、と……子雀も混ざる?」
「はい、喜んで!!!」
「ちょ、何言ってんのよバカ!朝ごはん食べるわよ!」
「えぇー、娼館で培ったちゅん流の秘技、見せて差し上げますよ的なー!」
「あんたのそのネタはツッコミ辛いからやめてよ……」
そんなこんなあって2日を海上で過ごし、4日振りの陸地に降り立った木葉達。ケーニヒスで再び10泊。その間10日間とも、木葉ロゼ迷路の3人は毎晩絆を深めていた(意味深)。こうして10日経つ頃には木葉のメンタルも相当に回復し、普通にお風呂も1人で入れるようになった。
またその間ドナウとも話し合う機会を設けて話し合いした。
「うっふふ。お姉さんとお話ししてはくれないかと思ってたわ」
「ごめん、本当にメンタル死んでたから」
「いいのよぉ。元々お姉さんの所為でもあるんだしぃ」
「それで、私達と旅してOKなの?魔女の宝箱は……」
「休暇よ。長期休暇」
「あそこ年中無休じゃないんだ……」
魔女はブラックバイターです。
「私の目的は世界を回る事。そして、クープランの墓の思い出をめぐる事。ああ、今度ボロディン砂漠にも連れてって頂戴ねぇ。久しぶりにあの子にも会いたいしぃ」
「あの羊狂いも多分喜ぶと思う。でもその前に6つ目の宝箱を攻略したい。出来れば王都から1番遠いところの」
「はいはーい。地図、あるかしらぁ?」
迷路が立体地図を取り出すと、今の技術は凄いわねぇとか言ってドナウは目を輝かせていた。
さてドナウの指さす地点、そこは、元の世界で言えばバルカン半島南部の山岳地帯に値する場所である。
「バルトーク天空要塞。東方共同体にある山岳地帯ね……」
「そうよぉ。潜む魔女は【中国の不思議な役人】。ここは割と未開拓の地ってこともあって中々誰も近寄らないから発見されてなかったのねぇ」
「これまた行きづらいところに……」
今までが神聖王国周辺に点在していただけに、一気に遠いところになったのでめんどくさい事この上ない。
「ま、これからよろしくねぇ。木葉ちゃぁん」
「んーまぁ敵対しなければなんでもいいや……」
さて今日は実は元の世界の暦で数えて、異世界転移1年記念である。365日目だそうだ。
てわけで月光条約同盟メンバーで結構派手にお祝いをした。めでたい訳じゃないけど。季節は真夏ということで、氷菓子パーティーである。
「んー、やっぱこの季節はシャーベットに限るねぇ」
「冷たくて美味しいです的な〜」
「まさか異世界でアイス食えると思わなかったぜ。あたしもこれで商売始めてみよっかな」
「私のこと氷製造機か何かと思って見るのはやめなさい」
「めーちゃんの氷結構上質だけどね〜」
「あらぁ美味しいわねぇぇ♡こんなのはじめてぇ」
「頭キーンってするヨ!!!」
「わしは何でコイツらとまだ氷菓子食っておるんじゃろう……」
ルーチェは離脱するタイミングを完全に見失っていた。まぁ一応は烽の連中と連絡取ってるらしい。どうやら帝都を中心に烽あらため国憂騎士団として再編成するつもりのようだ。それまでは月光条約同盟のオブザーバーとして残ってくれるらしい。
さてこうしてケーニヒスブルクに残っているのも単に休暇を楽しんでいるわけではない。連邦に入るきっかけを探すために滞在しているのだ。そう簡単に入れないだろうからのんびりと機会を待つつもりでいた。
だが国際情勢は木葉が思うより早く動いていたらしい。
パーティーから更に21日後、遂にその時は訪れる。
「木葉、急用だヨ。司令部まで来て欲しいネ」
朝、ホテルの部屋に手紙が届いた。何だろうと思いながらケーニヒスの軍司令部にぞろぞろと向かう月光条約同盟の面々。
執務室に通され、そこにはキリリとした表情を見せるアカネの姿があった。
「おはようアカネ、なんかあった?」
「おはよう木葉。いや、この場はリルヴィーツェ帝国外交特使として、魔王陛下に接することをお許し頂きたいですネ」
かなり真剣な話だと理解したので、木葉も表情を引き締めた。
「良いよ。話したまえ」
「連合王国の王立海軍指揮官:ハンプティー・ダンプティー海軍大将がケーニヒスに寄港してます。既に帝都では我が皇帝陛下に謁見済み。そしてつきましては魔王陛下に謁見したく、この場に参られるとのこと」
レイラ姫が抱く構想の一角、連合王国が自ら飛び込んできてくれたらしい。さて、吉と出るか凶と出るか。
「成る程。分かった、通せ」
次も3日後で!
感想など頂けたら嬉しいです!




