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5章14話:不純同性交友

「では、言い訳を聞きましょうか」

「……寝てました」

「嘘ですね、女の匂いがします」

「……………」


 何故わかる……。


「酒と女性に溺れて約束をすっぽかすとか言語道断です!!!社会に出た時どうするんですか!」

「……なんか凄い教師っぽい」

「教師ですからね!!!ともかく、せめてキスマークを隠す努力くらいしてきてください!」

「え、ついてる?マジで?」


 深夜の3時頃、笹乃が泊まっているホテルの一室に怒号が響き渡る。約束の時間は21時だったので、実に6時間も遅刻してしまっている。

 それもそのはずロゼの怒涛の体力で身体の隅から隅まで快楽に浸った木葉は、そのあと疲れて眠ってしまったのだ。起きてからロゼを置きざりに慌てて笹乃のいる部屋に向かったわけで……。お陰様で服装は乱れ、至る所にロゼの噛み跡が残っているのであった。


「……下着の紐、見えてますよ」

「…………」

「取り敢えず、シャワーどうぞ」

「有り難く使わさせて頂きます……」

「宜しい」


 シャワー後仕切り直し。威厳もクソもないぞ。


「こほん……まぁ、楽しそうで何よりですけど、ですけど……。はぁ。木葉ちゃんが不良になっちゃいました……」

「この国だと16歳からお酒は合法だからさ」

「そっちもそうですけど不純異性交遊が……」

「同性だね」

「……………………まぁなんとなくそんな気はしてました。木葉ちゃんは、その、レズビアンなのですか?」


 恐る恐る笹乃が聞いてくる。そう言われると木葉としてもよく分からない。迷路やロゼと愛し愛されたわけだが、かと言ってそれで自分の恋愛対象が女性なのかというと正直よく分からない。


「分かんない。まだ2人しか経験ないし……」

「どちらも同性で」

「YES」

「限りなく分かりきった答えになってしまった気が……。例えば他に好きだなぁとか、その、裸を見たいなぁとか思ったりするのは、男性ではなくて……?」

「まぁ、うん、女の子だね。私やっぱレズなのかな?」

「よくわからないですね……」

「私も分かんない」

「……そうですか。……なら、試してみますか?」

「………………………へ?」


 そう言って笹乃は寝巻きのボタンを外し、脱ぎ始める。突然の流れに混乱する木葉はそれを止められない。

 そうこうしているうちに笹乃は下着姿になっていた。桃色のレースがついた大人らしい下着だが、見た目子供の笹乃が着るとそれはもうなんか背伸びしたように見える。


「どう、ですか?」

「え、や、どうって……。あ、え、っと」

「こ、興奮するとかしないとかそういうことです!」

「わからんわそんなもん!」

「な、なら、胸に手を当てさせるまでっ!」

「なにをそんなムキになって、あ、やめ、やめろぉ!」







 暫くわちゃわちゃしていたがそこで、


「笹ちゃん先生うるさい」

「なにドタバタやって……あ……」

「へ、ちょ、え?」


 入ってきた生徒たち。しかも男子もいて……。


「あ、ああ、ああああああああああああああああああああああ!!!」

「ちょ、男子目隠し!てか出てけ!」

「あわわわ、笹ちゃん先生が木葉ちゃんを襲ってる……」

「違います!!!」

「や、違わないけどね?」


 話の収拾がつかないので、木葉は取り敢えず服を着直して椅子に座ることにした。


……


………


………………


「コホン……取り乱しました。……下着姿の木葉ちゃんみてちょっと劣情を催した私をどうか殺してください……」

「や、うん、私も悪かったと思う、ごめん」

「教師失格です……生徒に、しかも同性の生徒に手を出そうとしたなんて……」


 言うまでもなく木葉は誰もが認める美少女であり、そんな美少女が先程まで誰かと肉体関係を持っててそのままの姿で現れたのだから笹乃は寧ろ我慢した方と言えるかも……言えるかな……?


「も、もしかして私も百合だったーー!?」

「さぁ……。それより本題、話す?折角みんな来たわけだし」

「あ、ああ」

「そだな、うん。俺たちは笹ちゃん先生の下着姿なんて見てない、うん、見てない」

「お前ら殴って記憶飛ばしてやろうか?」


 ボーイッシュガール:鮭川樹咲(さけがわきさき)が拳を作ったので男子2人は目を逸らした。


「なんか変な感じになっちゃったけど、まぁ、久しぶり?」

「……ですね。多分、9ヶ月ぶりくらいかと」

「「「「…………」」」」


 気まずい。凄い気まずい。お互いに何から話せばいいのかわからないと言った感じで部屋の中はみんな黙り込んでしまった。

 そんな中、意を決して笹乃が口を開く。


「私から言うべきですね。……まずは、無事でよかったです。本当に、よく無事で……うっ、うう」


 溜まり溜まっていたものがあったのか、涙が込み上げてきて決壊した笹乃は止めどなく溢れる涙をなんとか拭うも手で掬い切るのには限界がある、それほど大粒の涙がカーペットに溢れていった。

 木葉は立ち上がって笹乃の目元をハンカチで拭ってやることにした。そうして近くまできて、


 がばっ。


 笹乃に抱きしめられる。


「ほんとッ、に……無事で、よかった、ぐすっ、です……」

「ちょ、鼻水、鼻水凄い」

「しんばい、じだんですがらああぁ、あああああああ」

「わかった、分かったから鼻水拭いて!」

「ごめんなさいッ、守れなくて、ごめんなさい、うあああああああああああああ!!」

「………………もういいよ、気にしてないし。ほら、大人でしょ」

「ううえぇぇぇえぇん!!」

「泣き方からもう子供感隠すの諦めてるなこの人……」


 "ごめんなさい"と"心配した"を繰り返した結果、30分ほど泣いていた笹乃。漸く落ち着いた頃には木葉のパーカーは涙と鼻水でべっしゃべしゃであった。


「はいはい、こっちもやること詰まってるからいい加減離れる」

「うわぁあん、木葉ちゃんが冷たいですう……」

「分かってたけどめんどくさいなこの人……あー、で、そこの君らも言いたいことは今言ってよ。私、ケーキの苺は先に食べる派なんだ」

「…………」


 それでも口を開こうとしない生徒たち。みんな木葉のあまりの変わりっぷりに言葉を発することができないと言うか、そもそも本当に木葉なのかを疑っているのだ。


「まぁいいや。話すことなんかそんなにないけど、何を話す?思い出話とか?」

「……木葉ちゃん、なんだよね?」

「そうだね、お久しぶりだね鮭川樹咲」

「…………」


 ボーイッシュなバレー部女子の鮭川樹咲は、気まずそうに目を逸らす。花蓮や語李の時はここまで避けられなかったから正直どうしていいか分からない現状である。


「笹乃は、帝都に何しにきたの?」

「わ、私は……王都のみんなを助ける戦力が欲しくて、それで……」

「必然的に隣国に来た、と。よくストラスヴールを抜けてきたね、道中地獄みたいな情勢だったとは思うんだけど」

「結構大変な旅でしたね……でも、楽しかったんですよ?えっと、木葉ちゃんはどうして?」

「お使い、かな。目的地はもっと先なんだけど頼まれてたお使いをしに帝都に来たら巻き込まれた感じ。ほら、私冒険者だし」

「そういえば銅月級って凄いじゃないですか!木葉ちゃんがあんな強いなんて……って、あ、そう言えば『魔王』だって……」


 今更になって警戒感を滲ませる笹乃。これが普通の反応だとは思う。尾花花蓮やマリア姫が異常なだけである。


「心配しなくても魔王の力は制御できるし今のところそれを振るうのは今回侵攻してきた魔獣に対してだから肩の力は抜いてよ。私も、こんなところで貴方達と敵対する気は毛頭ないよ」

「……」

「……なんで言ってくれなかったの?って目をしてる。……言える訳ないじゃん、こんなこと。王宮にいたときは如何にみんなにバレないように隠し通すかばかりを考えてたんだから」

「このは、ちゃん……」


 笹乃は後悔で押し潰されそうになり、顔を歪ませた。そうだ、木葉は何かあっても笑顔を作って誤魔化してしまうような人間だった。


(どうして、どうしてあの時……パーティーの夜に木葉ちゃんの部屋で、私は気づけなかったのだろう。どうして、あんな酷いことを言ってしまったんだろう)

「ごめ、んな、さ……」

「謝るの禁止。気にしてないから。私の性格上魔王であることを隠すのは必然だったし。まあそれに、語李くんくらいだよ、私の作り笑いを見抜けるのは」

「ーーッ!!……白鷹くん……」


 笹乃にとっては故人の名前が出てきてまた泣きそうな顔になる。きっと木葉は知らないだろうと思い、語李の死を伝えようとするが、


「語李くんも久々に会ったらまたムカつく感じでさ。こういうの同族嫌悪とでも言うのかな……なんかカッコつけようとしてくる所、わかる?あれクソムカつくんだけど」

「…………………………………………へ?」

「や、なんなら2週間くらい前にも会ったんだけど、あのなんというか、全体的に保護者気取りな所がムカつくというか………………何その顔」

「や、あの、彼は、その……え?」

「……?あ、そっか、彼そういえば死んだことになってるんだっけ。これ言っていいのかな。生きてるよ、彼」


 ある程度話せるところまで事情を説明する木葉。色々とありすぎてもう何が何やらという顔の笹乃を置いて、木葉の話は進む。

 全て聴き終えた笹乃は少し考えます、とだけ言って黙り込んでしまった。その間木葉はさっきのロゼとの行為を思い出して悶々としてしまうのだが、笹乃以下クラスメイト達にとってはそんな易々と受け止められる話ではなかった。


「と、兎に角白鷹くんは無事なんですね。……よかった」

「で、話すこと他にある?割とこっちメインだと思ったけど」

「木葉ちゃんのこれ迄の話とか、聞いてもいいですか?」


 頷く木葉。こちらもある程度重要情報を隠しつつ淡々と今までの旅を述べる。念のため魔女の宝箱攻略についても省いた。霊脈の正常化やフォルトナ撃滅について話したら時間がいくらあっても足りないしそんな面倒ごとに時間を割く気にもなれない。それに、


(……船形荒野たちを殺したことも、まだ言うべきじゃない)


 笹乃は弱い。きっとこれ以上生徒が死んだことを伝えたら、彼女は折れてしまう。少なくとも木葉はそう判断している。故にかなり説明を省いた。


 さて全て話し終えた頃、木葉のもとに《念話》が届いた。迷路からだ。


「作戦立案完了。今どこにいるのかしら、木葉。まさかとは思うけど……」

「はいあとで説明しますごめんなさい……」

「……大方予想はしてたからまぁいいわ。すぐ戻って来れる?ちゃっちゃか終わらせたいわ」

「りょ。すぐ行く」


 幾らでも誤魔化しようはあったけど、木葉的にはすぐゲロった方が身のためだと判断した。後が怖い……。

 特に荷物もないので無言で部屋から出て行こうとするが、背後から笹乃の立ち上がる気配がした。


「私も行きます。木葉ちゃんにだけ任せておくわけにはいきませんから」

「要らない……って言っても付いてくるのはシャトンティエリで経験済み、か。変に動き回られるのも困るから着いてきてもらうとするよ」

「………………」


 冷たい物言いに身を強張らせるクラスメイトであったが、笹乃は意を決してそのまま着いていく。

 無言のまま歩き続けて約30分、ヴェニトアイト皇宮の奥に通され、指定された部屋に入るとそこには既に主要メンバーが到着していた。


「おかえり、木葉」

「おかえりなんよ〜」

「……なんか、ロゼのほっぺ腫れてるのは」

「私が一発殴ったわ」

「ですよね……」


 状況が飲み込めていない柊、子雀、ルーチェ。や、ルーチェはちょっと気づいていた。流石に長く生きているだけはある。


「迷路、いいパンチだったネ!アカネまけないヨ!」

「これ以上強くなる気かァ?帝国の未来は安泰だな、くかかかか!!」


 絶望的な状況にも関わらず何処か落ち着いているアカネとランガーフ。これは木葉への期待感も含まれているとは思う。


「迷路、作戦について、お願い」

「ええ。でもその前に、そこの連中はこの話を聞かせるに値するのかしら?」

「ーーッ!?そ、れは」

「木葉、シャトンティエリでの結末については話した?」

「まだだね。でも迷路の言いたいことはわかる。彼女らが裏切らない保証がない」

「て、ことよ。悪いけど退室してもらえるかしら。という内容を皇帝の勅命として出せる?」

「……いえ、別室で待機します。私達を信頼できないのは当然のことですから」


 彼女らには子雀と柊が付き添って退出することとなった。柊は柊で、クラスメイト達と話したいこともあるのだろう。

 部屋に残されたのは木葉、迷路、ロゼ、ルーチェ、アカネ、ランガーフ3世の6名だった。護衛がアカネ1人という事実が、帝国兵のアカネへの信頼感を表していると言っていいだろう。


「先ずは現状から。現在ライン魔族国家群及びゴダール山の残党魔獣10万が帝都ベルント目指して進軍中。フランクフル都市国は現在必死の抵抗を見せているけど陥落は時間の問題よ」

「うん、明日にでも陥落すると思って動いた方がいいよね」

「フランクフルから帝都ベルントまでは距離があるけど、途中の進軍ルートはライン地方を通るから此方からは手出しが出来ない。つまり、次魔族国家群とあいまみえるのは国境線沿いよ。今そこにはある程度守備兵がいるけど魔獣の大群に対抗できる戦力じゃない。そうよね?」

「あぁ。そらぁ間違いねぇなァ」


 ランガーフが答える。


「かたや此方の戦力は敵進行中の東方、南方以外の全戦力をベルントに結集させたとしても5万。しかも決戦までに間に合うかわからないわ」

「号令は掛けたが、戦力が整うかは微妙だな」

「現実的な戦力ラインとして、期待できるのは2万。主力はアカネ騎士団。……充分よ」


 迷路は魔女のような笑みを浮かべて杖を振るった。

 そこにはレイラ姫が使ったような立体地図が浮かび上がる。これやってみたかったらしい。


「侵攻ルートの割出しは完了。この侵攻ルート周辺の住民を国境線沿いの兵士と共に直ぐ帝都へ収納」

「してるぜ?舐めてもらっちゃ困る。一部兵士を除いて住民は帝都に収容済みだ」

「流石ね。神聖王国とはわけが違う。なら最後に残ってる兵士にはやってもらう仕事がある。計画的な焦土作戦よ」


 焦土作戦。これはシャトンティエリ戦でも採用された作戦だが、あれは人的資源の消費を前提とした欠陥作戦だった。しかし今回は違う。


「魔獣を殺す毒を村々に撒く。魔獣が補給出来そうな食料を全て焼き払う。帝都周辺へ大量の罠を仕掛ける。使える手を全て使って魔獣を減らした後、帝都籠城戦で決戦を仕掛ける」

「籠城戦……」

「木葉から聞いたシャトンティエリの中途半端な籠城戦じゃなく、本気のそれを。籠城戦は味方が来ることを前提とした作戦だけど、今回はそれが目的じゃない。目的は防御する場所の一極集中」

「成る程。シャトンティエリはただ逃げ遅れた人達が集まった最後の手段だったけど、帝都全体を餌にして魔獣とぶつかるわけだ」


 コクリと頷く迷路。


「帝都に至る過程で魔獣を徐々に殺し、最終的に竜頭蛇尾と化した大群を帝都目前ですり潰すわ。それが出来る戦力は十分に揃ってる。ロゼにはじゃんじゃか働いてもらうからそのつもりで」

「わかってるんよ〜、お詫びも意味も込めて全面賛成〜」

「ほんとにわかってるのかしら……。詳細はこの文書に。焦土作戦で失った損失に関してだけど、後で神聖王国から賠償金を貰いなさい」

「叩き潰すこと前提だね、燃えてきた」


 パキポキと指を鳴らす木葉。シャトンティエリでは木葉が作戦立案を行なったが、やはり頭を使う作業は迷路に任せるに限る。


「時間は掛けない。魔王軍の力、見せてあげましょう」

明日も更新します。

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