5章13話:同率1位
カッコいい木葉と可愛い木葉、どっちも味わえるお話ですね、はい。
今回もかなりR15の限度を超えないような描写を意識しています。
「……ひ、かりさん、何で!?」
「……………」
シャトンティエリ以来の再会である。積もる話もあるだろうし、置き手紙の事も聞きたいに決まってるだろう。
が、タイミングが悪い。何てったってここは、
「で、こりゃどうしたもんかねぇ。なぁアカネ」
重々しいトーンの声が響き渡る。その場の人間全ての視線をその男に釘付けにするくらい、男の声には不思議な力があった。木葉もゆっくりとそちらを向く。
えらく交戦的な目をした男は面白そうにこちらを眺めている。灰色の髪と金の瞳、その頭の上には権威を示す黄金の冠。華美でなく慎ましくそれでいて厳かな装飾を身につけて玉座に座る男。彼の視線はただ一点、櫛引木葉に向いていた。
「陛下、突然の謁見申し訳ございません。ですが、このお方を連れてきたのには理由がありまス」
「ほう。では済まないが客人、一度はけてくれるかね?」
「ーーッ!?そ、そんな!私達は!」
食い下がろうとする笹乃だったが、男の視線がギロリと動くと蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまう。
このままだと可哀想なので木葉が助け舟を出してあげることにした。
「直ぐ終わるからその場にいていいよ、最上笹乃」
「え?」
そして前に出た。挑発的な目をする皇帝を前にお面の下で木葉も挑発的に笑う。
「何者かはしらねぇが、面を取るのが礼儀じゃねぇかい?」
「勿論」
そうして木葉は面を取る。最早何も恐れるものはないのだから。
「へ………………………?」
笹乃の声が響く。木葉は一切そちらを向かずに男を見つめた。
「お初にお目にかかります皇帝陛下、私は櫛引木葉。3代目魔王:月の光といえば分かりやすいでしょうか」
「……………………ほう。成る程、これはこれは」
男ーーリルヴィーツェ皇帝:ランガーフ3世は興味深そうに目を細めた。目の前に唐突に現れた、魔王を名乗る白銀の少女。この世のものとは形容し難い不思議な美しさを持つ少女に対しての興味が尽きず、頭の中に大量の疑問符が飛び交う。しばらく沈黙する2人だったが、その沈黙を破ったのは2人の外側であった。
「このはちゃん!?」
笹乃、そして鮭川樹咲や梢ちゃんと言った面々も驚き過ぎて固まってしまっている。が、漸く笹乃は正気に戻ったらしい。
ふらふらと木葉に向かって歩いていこうとするが、
「陛下の御前である。控えよ、客人」
「ま、まって、このは、ちゃん、なんで?」
「聞こえないのか!」
帝国騎士に止められるが、それでも尚歩を進めようとする笹乃。それを木葉は手で制する。
「……何やら事情がありそうだが?」
「お気になさらず皇帝陛下。それより建設的な話し合いをしましょう」
「15.16って言ったところか?その年齢で俺相手に大した度胸だ。流石は魔王、なのかねぇ?」
「さあ。私には分かりかね……」
「あーあー、敬語は良い。俺はおめぇが気に入った。というかお前が魔王だってんなら、魔の国を治める帝とリルヴィーツェの地を治める帝としてその立場は対等な筈だ。……それに、おめぇは権力者に媚び売るタイプじゃねぇよなぁ?」
挑発するように口を歪ませるランガーフ帝。まだ30代後半くらいだと言うのにこちらも随分肝が据わっている。相手は500年前と100年前に世界を滅ぼしかけた最悪の存在の後継者だというのに。
木葉としても皇帝がこう言ってくれたんだし、じゃあいっか、という風に結論つけた。
「そ。それならタメで話すね。あ、呼び方注文ある?」
「くかっ!そう来なくては!何でも良いぞ、魔王!」
「じゃあラン君で」
「おいおいマジかよおめぇ最高だな!俺のことをそんな風に呼んだやつは1人もいねぇよ、くかかかかかかかっ!」
「不良漫画だと偉い人って君付けするからさ」
普段なら諌めるところだが、2人の帝王を前に帝国騎士は何も口出しできない。そしてランガーフ帝がここまで楽しそうなのも久しぶりにみたと、後に兵士たちは語る。
「アカネぇ!お前どこでこんな面白い奴見つけて来たんだよ!」
「ミュンヘルンだヨ。てか陛下ー、アカネも呼び捨てでいいよネ?」
「あぁ、いいぞいいぞ。お前ら2人は特別だ」
「やったネ!木葉、お揃いヨ!」
「いやお前は立場的にもマジかよ……」
友達グループかってくらいフランクに打ち解ける3人。この場に置いて後落ち着いてるのは、迷路とロゼ、それにルーチェくらいだろう。
「まぁいい。取り敢えずアカネの要件から聞いてやる。その上で魔王木葉、おめぇの話も聞いてやらぁ」
「ほんと?陛下、アカネ先でいいノ?」
「ほれ言ってみ」
「うん!……なんでミュンヘルン中央庁舎を制圧させてくれなかったノ?」
声のトーンが変わる。アカネは怒っているのだ、ミュンヘルン首脳部さえ制圧していれば、帝国は本土防衛を迫られる必要はなかったのに、と。
だがランガーフ帝は諭すように告げた。
「……おめぇらに情報が入ってるかはしらねぇが一応言っとく。12日前、詰まるところミュンヘルンが降伏する前にとある連絡が入った。
魔獣の大群、10万が帝都に迫ってる」
「ーーーナッ!?」
「……帝都に?」
驚くアカネ、訝しむ木葉。なぜなら木葉は最近似た状況に直面している。そう、シャトンティエリ攻防戦だ。
だがあの時、シャトンティエリにそれ程までの大群が侵攻してきたのは東の魔王とジョスランの子守唄という連中が揃っていたからである。その2体とも滅びた今、10万という大規模は魔獣の侵攻が起こるわけ……。
「ああ、成程、アリエスのスキルか」
忘れていた。アリエスが東の魔王から奪い取った《魔獣操作》のスキル。あれはゴダール山に生息する魔獣を操作するスキルだった。もしアリエスのそのスキルが王都政府に奪われていたとすれば……?
「……自軍をすり減らす事なく敵を滅ぼす、か。つくづくムカつく連中だな」
「アカネをミュンヘルンに留めておけば、アカネ騎士団が帝都防衛に間に合わなくなる危険がある。何より、魔獣に臆したミュンヘルンの連中の手元にお前を置いといて万が一にも何かあったら帝国は終わりだ」
「……けど」
「けどじゃねぇ。アカネ、おめぇは帝国の希望だ。ミュンヘルン牽制の為におめぇを置いといたが魔獣の大群相手じゃぁおめぇの存在はミュンヘルンにとっては牽制にもならねぇ。それならとっとと撤退して本土防衛を固めちまった方がマシさ。……幸い、フランクフル都市国が盾になって今必死の抵抗が行われてる」
「そん、な……」
「数の暴力っつーんは恐ろしいもんでな。リルヴィーツェ帝国は知っての通り平地の国だ。遮るものが何もねぇから肉壁を使うしかねぇんだ」
「……」
平地の国、それで傀儡国を盾に焦土作戦を実行中ってことか。惨いことだが冷静な損切りだ。土地にこだわって兵力をすり減らせるよりは大局的にみて良い判断だと思う。
「ちなみに南から大公国、東から連邦の軍も迫ってる。と、まぁ帝国は瀕死もいい所なわけだが、魔王。そんな瀕死帝国の皇帝に何の用だ?」
若干投げやりな態度。成程、こんな絶望的状況だから寧ろ楽しそうにしてたのか。痛々しいことで。
3方面作戦を強いられている帝国。しかし元が軍事国家であることを考えると脅威になるのは10万という数の暴力で押し潰そうとしてくる魔獣だけだ。他はどうとでもなる。……それならば、そこが交渉ポイントだ。
「ラン君、取引しよう」
「あん?取引だぁ?」
疑問符を浮かべるランガーフ帝。しかしその目は生き生きとしている。まだ全然諦めてもいない目だ。
「神聖王国、倒したいと思わない?」
「……そりゃ、どう言う意味だ?今直近の脅威は魔獣で」
「そんなもの脅威でも何でもない。私がみてるのはその先だよ、ラン君」
「先、だと?」
「そう。回りくどいのは無しにしたいから端的に取引内容を述べるね。
帝国丸ごと私に服従しろ。
その代わり魔獣は皆殺しにしてやるし、神聖王国をひっくり返してあげる」
「ーーーーーーッ!!!おめぇ、自分で何言ってるか分かってんのか!?」
謁見の間が騒つく。そんな状況をロゼや迷路は、
「流石こののん、王者の器だね〜」
「傲慢さも時には交渉能力に直結するものね。今のはインパクト大よ」
「いや、何呑気に解説してるです的な……。我が主結構やばいこと言ってますけど」
「木葉が出来るっつーんなら出来るんだろ。アタシらは信じようぜ!」
「我も同意じゃな。ハッタリで言ってるわけじゃない。今、ここにはそれを為し得る戦力がちゃんと揃っておる」
彼らの動揺を他所に、月光条約同盟の面々は慣れたと言わんばかりに冷静であった。
「勿論。数ヶ月前なら微妙だったけど今は自信もって言えるよ。私なら、『私達』なら10万の魔獣を皆殺しに出来る。もちろんラン君とアカネの協力が必要にはなって来るけどね」
「……問題はその後だ」
「うん、神聖王国はひっくり返せる。それもラン君たちの働き次第だけどね。まぁでも詰まる所」
玉座まで歩いて行き、ランガーフ帝と目を合わせた。
「ラン君に夢を見せてあげられるよ。滅びの夢じゃなく、希望に満ちた未来の夢を。負けが決まった悲痛な戦いがしたかったならこの話は蹴ってね。
でも、ラン君がまだ帝国を諦めてないって言うなら……。私の手を取れ。私と組め。私がお前に未来をくれてやる」
「………………未来」
「帝国を滅ぼした無能って後世の教科書に書かれたくないでしょ?なんかラン君プライド高そうだし。……そのギラギラした目のままで諦めたフリとかやめて欲しいんだよね」
「く、くか、くかかっ!おいおい、おめぇ、本当によぉ……」
「力を貸してやる。だから力を貸せ。さすれば魔王が『なんとか』してやる。……まだ言葉が必要?」
ランガーフ帝を挑発するように首を傾げて笑う。
そして、皇帝の目に炎が灯ったのが見えた。
「……いいや。俺は帝国の民が救えるなら、そして俺の魂を燃やし続けられるなら、悪魔とだって手を組むぜぇ?
乗った。おめぇが俺を、帝国を使って何しようと企んでるのかは知らん。だが、面白れぇ。まずは魔獣を何とかするところを見せてくれよ。そしたら『その次』も絶対協力する。いや、させてくれ」
「交渉成立♪ま、悪いようにはしないよ。それじゃ先ず南と東の軍隊を除き、帝国の全戦力を帝都に集めて。
シャトンティエリの5000倍はマシな籠城戦をしてあげるから」
……
………
…………………
「まって、待ってください!!」
「…………」
「ま、待って!!木葉ちゃん!」
「…………」
「え、ちょ、普通止まりません!?てか歩くのはやっ」
「…………」
「ほんとに早いんですけど、え、無理疲れた、きゃあっ!」
どてっ。と、廊下で盛大にコケる音がした。ので仕方なく手を差し伸べて起こしてあげる。
「最上笹乃、貴方ただでさえ身長的に歩幅が小さいんだから早歩きなんて怪我の元だと思うよ?」
「う、うるさいですね!そういう木葉ちゃんだって身長大して変わらないじゃないですか!」
「鍛え方が違うし。私一応こっちでも毎日剣振ってるもん」
「私だって筋トレしてますー、サボってないですー」
「や、聞いてないし」
「っっっって!!!そんな話をしてる場合じゃないんです!!!」
「あぁもう煩いな、詳細な作戦内容を迷路がまとめ上げる前に帝国名物のビアガーデン行ってみたいからそこどいてよ」
「ビアガーデン!?未成年飲酒はダメです!!!先生が絶対許しません!」
「個人的にはフルーツビールが気になる、私ワインいける口だから。最上笹乃も来る?」
「行きません!!ていうかワイン飲んでるんですか!?」
笹乃に手を握られっぱなしなので、外に行こうにも行けない。手なんか貸すんじゃなかった、と反省した。
「なんで、黙ってたんですか」
「………」
「その髪も、目も、雰囲気も、性格も、全部変わっちゃったけど貴方が木葉ちゃんだってちゃんとわかります。生きてるって教えてくれるだけで、私は……私は……」
何かを溜め込んでいるのか、今にも感情が爆発しそうな笹乃。そんな笹乃を見て、真面目だなぁと木葉は呆れたようにため息をついた。
「……はぁ。最上笹乃」
「先生って呼びなさい!」
「笹乃」
「ふぇ!?い、いきなり呼び捨て……こ、こほん。で、何ですか?」
「ビアガーデンいっていい?」
「貴方話きいてました!?!?」
ハヤク、お酒、ノミタイ。
というか向こうの無駄にシリアスな空気にあてられてどんよりするのなんか嫌である。迷路には苦労をかけるが、今日はもう疲れたので外で待ってるロゼと美味しいもの食べに行きたい、と木葉は思う。
「ちゃんと、話をしませんか?何があったのか、これからどうするのか」
「それ2週間前に花蓮にも話したからもういいや」
「尾花さんに会ったのですか!?」
「ん、仲直りした。もうヨッ友よヨッ友」
「それはヨッ!ってする友達のことです……まぁでも良かった」
笹乃は安心したように胸に手を当てる。
さて今気付いたが、笹乃以外は全く木葉に寄ってこない。話しかけづらい空気でもあるのだろう。やはり負い目を感じてる生徒もいるんだろうなぁとか考えてみたりする。
「はぁ、じゃあこうしよう。今、会議室借りる、私と話す、私夜にビアガーデン行く、WINWIN」
「いやだから未成年飲酒……」
「今ここで話さないならもう話さん」
「わ、わかりました!ですが此方も心の整理をつけたいので、夜に会いませんか?」
「む、じゃあ21の時を過ぎたらでいい?」
「えぇ、場所は此方のメモに」
「りょーかい。よーしいっぱい食べて飲むぞー」
「だから未成年飲酒、ああもう!!木葉ちゃんが不良になっちゃいました!!!」
スキップする木葉を見て笹乃が頭を抱えるも、やはり木葉が生きていた喜びが勝って顔が綻ぶ。
とは言え樹咲や梢と言った昔の木葉をよく知るものたちは複雑げな表情であった。
皇宮の門の前でロゼは待っていた。亜人族への当たりがまだわからない以上、ルーチェと子雀が遊びに行くのは躊躇われるし、柊は酒は嫌いだと言っていたので仕方なく2人で行くことになったのだ。迷路は作戦立案中。
「あ、こののん遅かったね〜?」
「ごめんごめん。行こっか!」
「話、いいの?」
「なんか夜に話すらしい。てことで昼から飲む」
「帝国の飲酒年齢は16歳以上だし、こののんも僕も飲めるね〜!」
「ロゼは前にエレノアに潰されてたから不安だよ……」
ヴェニスでワインを飲んだ時、ロゼも迷路も酔ってしまって大変だったことを思い出す。そう言えばあれの後に直ぐマスカーニ地底湖攻略、ヴェニス戦を経てシャトンティエリに飛んでしまった訳だから、ロゼと遊ぶのは久々だ。
「ビアガーデン!!!すごい規模だねー!」
「お祭りなんよ〜!取り敢えず好きなものいっぱい買いに行こ〜」
期間限定ビアガーデンが開催されていると知ったのはランガーフ帝が教えてくれたからだったが、ここまでの規模だとは知らなかった。
ソーセージ盛り合わせ、チーズ盛り合わせ、ザワークラウト、パテ、バゲット、生ハム、そして、ビール。川を見下ろせる位置に席を取った2人は、ご満悦といった顔で目の前のご馳走を見下ろしていた。
「ふおおおおおおおおおお〜興奮してきたんよ〜〜〜〜!!!」
「写メ、写メ撮る!やー、戦争中だってのに物資は意外とあるんだねぇ」
「なんかやばい戦争前はいつもこんな感じらしいんよ〜。最後の晩餐的な?」
「ま、そんなことはさせませんけどねー。よし、乾杯しよう」
「「乾杯!!!」」
うん、この一杯が沁みる。
アルコールに強い木葉はお酒がまぁまぁ好きである。ロゼもロゼで思ったより強いので酒がどんどん進むし、食も進む。
たくさん話して沢山食べて、ロゼはかちゃりとナイフを置いた。
「こののんが居なくなって、めーちゃんも僕も不安で不安で仕方なかったんよ。めーちゃんとそう言う話はした?」
「……一応。でもまだどんな思いだったかしっかり聞いてないかな」
「ちゃんとお話聞いてあげてね。僕たち3人はこれからも一緒、ずっと一緒。その関係性が変わることはないって、信じてる」
「……………」
「色んなことは変わっちゃったけどね〜。めーちゃんになんか取られてたし」
「あ、あはは……」
「まぁ僕もこののんの事貰っちゃうんだけどね〜。えへへへ〜」
そう言って抱きついてくるから、多分ロゼは酔ってる。それでもその抱擁を抵抗なく受け入れたのは、木葉としてもロゼを手放さないようにという意味だ。
心情的に木葉は迷路とロゼ両方愛している。そこに優劣などない。ボロディン砂漠で宣言したように木葉にとってはどっちも大切で、どっちも欠けることなど許されないのだ。
「別に2番でもいいんだけどさ〜」
「2番なんかじゃない!!」
「へ?」
「……2番なんかじゃない。ロゼが私にとっての2番だったことなんて、出会ってから1度もない。それは、違うんだ」
「……こののん」
ロゼは思う。木葉にとって恋愛は初めての事で、だから全てがわからないのだ。迷路を取ることによってロゼを想うことが変わってしまうと言うのなら、木葉は迷路から離れてしまう。木葉はそういう女の子だ。
ーーだから、ロゼは一計を打った。
「こののん……」
「何?」
「女の子同士の恋愛なら、全員同率1位なんだぜ〜?それが世界の常識なんだぜ〜?」
「え!?そうなの!?」
刷り込みである。
「え、うーん、それ所謂うわk」
「違うんよ〜愛するものは誰も止められないんよ」
「いや、せやかてロゼ。迷路が、なんていうか」
「でももう僕こののんと関係持っちゃったんよ〜?」
「……まぁ、うん」
「こののん、ほら口開けて〜」
「……?」
酔った勢いなのか、そのまま木葉の口に舌を入れるロゼ。
「んんんんんん!?!?むーーーー、んむー!!!」
抵抗しようとするが、次第に大人しくなっていく木葉。そして後はロゼに為されるがままに体を預けた。
ロゼが離れても暫く放心状態であったが、ロゼが会計を始めた辺りで漸く目が覚める。
「え、ちょ、なにして」
「スマートな女はスマートに払うんだぜ〜?」
「キスまでの流れはスマートっていうか唐突だったけどね!?」
「まぁまぁ〜。酔い、覚めてないでしょ〜?」
「……え?」
木葉は自分が結構酔っていることに今気付いた。話し込んでいる間に随分と酒に手をつけていたらしい。
体が覚束ない。ていうか頭痛い。クラクラする。
「ね?そんな状態だから、今日は僕が払うんよ。……そして、まだ時間、あるよね?」
ロゼは木葉の腰に手を回すと、支えるようにして歩き出す。かなりやり手な動きだが、木葉はお酒で判断力がかなり鈍っていた。
「まぁ、約束は深夜だし」
「まだおやつ時だもんねぇ〜」
「……なにするの?」
「女の子同士なら同率1位なんだぜ〜?」
そう言って連れてこられた場所を見上げるとそこには、
『帝都は愛の巣、昨晩はお楽しみでしたね』
という看板が掲げられた建物があった。……このセンスは日本人だと思う。
そのまま中に入って階段を上がり、部屋に入ると、うん、まぁ……うん。綺麗なベッドが整っていた。
「や、え……ここ」
「ちょっと休憩なんよ〜」
「いやいやこのピンク色のベッドはどうみても」
「休憩場なんよ〜」
「は、はれ……頭がぼぉーっと……」
「ほらほら、休憩するんよ〜。
たっぷり、ね?」
「………………休憩、する。…………んんっ」
そのまま再び木葉の唇を奪うロゼ。木葉は最早まんざらでもなさそうにそれを受け入れる。2人はそのままベッドに倒れ込んで……………………。
この後建物内でめちゃくちゃ休憩()していった木葉は、当たり前のように笹乃との約束の時間をすっぽかしたのであった。
主人公総受けの百合ハーレムなので自然に二股しましたねこの子……。迷路もこうなることは多分分かってますけど。ていうか酔った勢いで色々やり過ぎですね……。
さて次回は約束をすっぽかされた先生のターンです。




