表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/206

4章1話:櫛引木葉の新たなる闘いとテンプレ

⚠︎2021/12/3 3章を2つに分けて後半を4章としました。


4章始まります!


4章は木葉が色んな女の子にちょっかいかけるのでヒロインが増えます。えぇ、それはもう増えます。迷路バリアがないので。

「ここ、どこ?」


 教会らしき場所で眠っていた私は、建物から出ようとドアを開けてびっくり。


 田舎。


「えー……」


 広がる田園風景。少し遠くに街が見えるので恐らく街の郊外なのだろう。だがしかし、状況を思い出せ私。


「エレノアお姉ちゃん……ハノーファー……」


 そうだ。私はヴェニスの戦いで多くのものを失った。私に協力してくれた冒険者たち。そして、お姉ちゃんと呼んでもいいと思えた女性。


 そして、私自身初めて敗北を喫した。白と黒の髪に分かれた美女:天撃のカデンツァ。魔王の力を持ってしても為す術なく敗北したのだ。


「ロゼや迷路もいないし……すくな、すくなは?」


 心に呼びかける。すると、


(おはよう、このは。今は元気かな、と聞くのさえ憚られるけれど、体調は大丈夫かな?)

「すくな!良かった。えっと、私なら……っていった……。カデンツァに斬られたところが痛む。けど、誰か手当てしてくれたのかな?」


バンッ!


 教会の扉が開いた。そして外から、


「起きたの!良かったの!」


 女の子が入ってきた。多分10歳くらいの女の子。レイラ姫より小さいかもしれない。


「教会で倒れてたからびっくりしたの!生きてて良かったの!」


 くすんだオレンジ色の髪の毛の少女は本当に安心したように近寄ってきた。その手の籠には薬草や包帯が入っていたので、恐らくこの子が手当てしてくれたのだろう。


「ありがとう、えっと……でも私《自動回復力強化》のスキルあるからそこまで心配しなくて大丈夫だよ」

「よく分かんないけど良かったなの!見つけた時はひどい怪我だったの!」

「そっか……。えっと、貴方。此処はどこで今はいつなのかわかる?」

「ここはシャトンティエリって街の近くのラグー村なの!今は第1周の第2曜日なの!」


 小さい子は少し苦手だけど、この少女は素直に答えてくれた。にしても、第1周の第2曜日ね。私がぶった斬られたのは第12周の第7曜日で、12周で一つの区切りだからあれから2日後ってことか。1日以上この教会にいた可能性がある。


 そして、なんだっけ。シャトンティエリ?どこだ?少なくともヴェニスの近くにそんな街なかった気がするんだけど……。


(シャトンティエリは王都:パリスパレス近郊の小さな街だよ!このは)

「……は?王都?え、何言ってんの?」


 すくながそんなこと言っていたが、頭に全く入ってこない。


(このは、このははあの時ヴェニスの地上海の磁場に巻き込まれたんだよ。結果として今、このはは王都の方までワープしてしまったんだ)

「……なんで、よりにもよって王都なの?」


 私は……神聖王国が憎い。満月教会が憎い。エレノアお姉ちゃんを、ヴェニスの街を徹底的に破壊した奴らが憎い。だけど、憎しみに囚われないで理知的に考える。あの夜、2日前の夜に私は決めた。






_________神聖王国を、満月教会を叩き潰してやる。それも、現実的な方法で徹底的に潰す。






(このは……)

「逃げてばかりじゃ駄目なんだよ。降りかかる火の粉は払わないといけない。それが戦い続けたエレノアお姉ちゃんや烽の皆、そして待ってくれていたロゼに対して私がしなくちゃいけないことだ。あはは……本当に決断が遅かった。ごめんね……エレノアお姉ちゃん、ロゼ」


 私の保留したものが全て降りかかってきたのだ。これは、私に対する戒めだ。罰だ。この世界が、この国が狂ってることを私は知ろうとしなかった。その結果が、ヴェニスの大虐殺だ。無関係な一般市民を虐殺し、生き残ったものはレイラ姫が言ったように生贄とする。

 この国では人の命なんてゴミ虫以下で、私はそれを間近で見てしまった。

 今でも脳裏に焼き付くエレノアお姉ちゃんの死。どんなに忘れたくても忘れられない、私への罰。


「神聖王国と戦う。邪魔する奴は教皇だろうが勇者だろうが異端審問官だろうが、神様だろうが殺してみせる。もう迷いたくない、見捨てたくない。だから、その為に情報が欲しい。協力して、すくな」

(……やっと、決めたんだね。それなら、落ち着いた時に話があるんだ。その時に色々教えてあげる)


 よし。それなら、取り敢えず此処で情報を得て王都に行こう。ここから、私の新しい闘いが始まる。私が先延ばしにしてきたことのツケを、今これから払うのだ。


「私はやるよ。神聖王国をひっくり返す。その奥に何が潜んでいようが、私が全部全部殺してみせる」


 真昼の月を、私は見上げた。



………


……………


 さっきの女の子から話を聞いたところ、このラグー村はシャトンティエリに併設された村で、農業専門の人々の出張村みたいな所らしい。王都の東門から東都:ストラスヴールに行く途中にある小さな街で、取れた農作物は王都と東都へと出荷される。


「おぉ……茄子がある。こっちは人参?で、向こうが主食の麦畑」

「おやお姉ちゃんべっぴんさんだねぇ!どうぞお野菜!」

「え、あ、ありがとう。おぉ、ネギだ」


 通りかかった農家のおじちゃんがネギをくれた。その後も市場では、


「痩せた身体してぇ……もっと食べなきゃあ駄目よ!ほら、これ此処で作ったパン!」

「こっちは汁物あんべ!ほれ、()ぇ!」

「牛の乳は健康に良いわよ!ほら、お嬢ちゃん!」


 滅茶苦茶色んな人に優しくして貰った。なんだろう、お爺ちゃんの家を思い出す。父の祖父母は縁がないので母の祖父の方。お爺ちゃんの家で育ててたカボチャはとても甘くて美味しかったなあ。


「うーん、沢山貰ってしまった。親切な人たちだなあ」


 みんな笑顔で幸せそうだ。それでも年貢の取り立ては中々にエグいらしく、私もびっくりな税率をしていた。この村は上手いことやってるんだろう。


「ラグー村はいい所さー。お嬢ちゃんはどっから?」


 直売所みたいな所で休んでいると、おばちゃんが話しかけてきた。ここの人は随分人懐っこいらしい。


「んと……東の方の国からかな。此処と似てるかも。あ、野菜お焼き1つ」

「待ってな。今うんまいもん作ってやる!」


 うんうん、何だろうこの安心感。おばちゃんからお焼きを作ってもらって村を歩いているとそのままシャトンティエリの街まで繋がっていたので行ってみることにした。


「はえぇ、小ちゃい街だな」


 ラクルゼーロ、リヒテン、ミラン、ヴェニスという大都市にばかり立ち寄っていたから感覚がアレなのかもしれないが、レイラ姫と会談したクラーカより小さいかもしれない。


「本当に村と街が近いんだね」

(ラグー村は正式名称じゃなくて呼称だからね。要はシャトンティエリの一画みたいなものだよ!)

「そっか。迷路やロゼと来たかったなぁ」


 2人は……無事だろうか?方舟に乗っていたから早々やられるはずは無いが、それでも心配だ。けれど奥羽、そして氷馬車を失った私じゃ今はヴェニスに行けない。


「ん?」


 前の方で男達が数人、路地裏へと入っていく。路地裏は如何にもという感じで雰囲気が悪そうで近づくのは憚られた。


「てか髪染めてないからめっちゃジロジロ見られてるな。お面かぶろ」


 と言ってお面を被ろうとした時、


「きゃああああああ!!」


 と叫び声。さっきの路地裏からだった。


「うわ。めんどくさ」

(気持ちはわかるけどねー!でもいいの?助けなくて?)

「私は英雄でも勇者でもない、なんなら魔王なわけだけど……」


 思い出されるはエレノアお姉ちゃんの言葉。


「……優しくなれる心、ね。私が人間でいる為の大切な心。


……助けるよ、すくな」

(それでこそこのはだよ!)


 すくなは、何度か私の心を試すように私を壊した。けれど多分、彼女は私に今のような感じになって欲しかったんだと思う。人を殺す覚悟を持った上で、人に優しくなれる心を持ち続ける。それが、今の櫛引木葉なのだ。



…………


……………………


 路地裏に入ってみると、どうやら1人の女の子が男達に取り囲まれているようだった。


「ほぉ、貴族様がこんなとこ彷徨いてるなんてラッキー!こいつ捕まえて身代金ふんだくろうぜ!」

「いや全員で廻すのはどうだ?結構可愛い顔してんじゃねぇかぁ、なぁ!」

「い、いや……やめ、て……」


 随分お決まりのチンピラ達が身なりのいい女の子を襲っていたが、その数約10人。中には冒険者と思わしき連中がいて、武器まで持っている。


「ひひ、大人しくしてな。俺のナイフがうっかり綺麗なお顔を傷つけちまうかもなぁ!」

「うひひ、俺もう我慢できねぇ。先ず俺からヤるわ」

「おいおい、脱ぐのがはえぇなあ!」

「いや、いやあああ!」


 頃合いかな。あまり精神衛生上宜しくないし。


「そこら辺にしようかゴミ屑共。見た目も頭も性格も悪いとか役満過ぎるから今すぐ消えて」

(このは、口が悪いよ?)


 うっさい……でもまぁ、私の挑発に乗ってチンピラ共は私に向かってきた。


「おい、ガキ……いやぁ?可愛いなぁおい!待て待て待て!美少女いるぞ!」

「うひっ!本当だぁ!この子ベロベロしたぁい!」

「やべぇ、更に上玉が来たぞ!ついてるぜぇ」


 キモい……。ハァと溜息を吐くと、付随スキル:威圧感を発動させる。


「なッ!?身体が……」

「なんだ、こいつ……?やべぇ、足が震えて……」

「ひいいいっ!?」


 震え出すチンピラ。中にはその恐怖から逃れようと剣を取って向かってくる馬鹿もいた。


「そ、そこの人逃げてええええ!!!」

「し、死ねえええええ!!!」


 女の子が叫ぶと同時に剣を振り下ろすチンピラ。装備は……初級術具か。


「邪魔」


 《居合》を発動させ、瑪瑙を鞘に戻した時には男の持つ剣は真っ二つに。そして男は真っ裸になっていた。


「な、な、なななな……」

「次はソレ、切り落とすよ?」


 男の下半身をゴミを見る目で見る。威圧感を更に強めていたので男は今にもちびりそうになっていた。


「ひ、ひいいいいい!!!ごめんなさああああいい!!!」

「ま、待てよふるち……フルーチ兄貴!」

「兄貴ぃい!置いてかないでくれええ!!」


 フルーチというらしい。一瞬ふる○んって仲間から言われそうになってて実に哀れだ。どうやらリーダー格だったらしい。


「ふぅ」

(お見事!流石の腕だね、このは!居合い抜き、しかも鞘に戻すなんて初めて見たよ!)

「よゆー。さてと、無事っぽいし飯屋にでも……」


 と思って立ち去ろうとすると、


「ま、待ちなさいよ!」


 後ろから声が聞こえて来る。けど、櫛引木葉はクールに去るぜ、ぐえええっ。


「待ちなさいってば……ってうわっ!本当に可愛い!?」

「いきなり首引っ張っといて第一声がそれ?あぁまぁいいや。お礼とか別にいいから早くお家帰りなよ。身なりからして金持ちでしょ?」

「そうはいかないのよ!あんた、名前は!?」

「教える意味がない、さよなら」

「ちょっとおおお!!最低でもお礼だけはさせて!助けてくれた人に何も返さないなんて、テグジュペリ家の人間として恥なのよおおお!」


 うっさいなぁ。私を掴む金髪縦ロールの女の子はなんだかヒステリック気味に騒ぎ出した。これは、面倒なのを助けてしまったかもしれない……。

 金髪縦ロール、瞳の色は綺麗な琥珀色。大きな五芒星の髪飾り。そして、貴族らしい上品な桃色のドレス。オマケになんか有名そうな家まで名乗っている。


「その家がどんだけ有名かは知らんけど、取り敢えず離してよ。そんで早くお家にお帰り」

「ムキー!!テグジュペリ家を知らないなんてどんだけ田舎もんなのよー!!てか、せめてなんか返させて!ほら、なんかあるでしょ欲しいもの!富でも名誉でも!」

「んじゃ翼が欲しい」

「はあぁ!?」

(このは……)


 コホン、ふざけ過ぎたな。昔合唱コンクールはこの曲だったんだよね。


「……じゃあご飯奢ってよ。それでチャラ。お腹ペコペコなんだよ私」

「お安い御用よ!最初からそういえばいいのよ、おーっほっほっほ!」

「貴族擬きの笑い方してらあ」

「貴族ですもの!!本当に知らないわけぇ!?」

「私貴族詳しくないし……てか路地裏歩いてる貴族令嬢って何さ」

「お忍びなのよっ!まぁいいわ、耳かっぽじってよぉく聞きなさい!


 私はテレジア・フォン・テグジュペリ!テグジュペリ侯爵家の令嬢よ!以後、お見知りおきをっ!」


 瞳の中から星マークが飛び出て来る。ていうか、道路の真ん中で大きな声で貴族であることを明かさないで欲しいなぁ。なんて思いながら私はスタスタ歩いて行った。


「ちょっ!なんで無視するのよ!?待ってってばあー!!」


 ま、ご飯奢ってもらうとしよう。この厄介そうなお嬢さまキャラに。

テレジア……名前が、ふむ、似ている。


神聖パルシア王国はフランスが元になってます。フランスでテグジュペリというと星の王子様の作者:サン=テグジュペリですね。出身地はフランスのリヨン、私は去年の9月にリヨンに行ってきました。因みにラクルゼーロはリヨンを元にしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こういった借りは終盤で役に立ってくるんだろうな。だからといって勝てるか負けるかは知らぬが
[一言] …テレジア、ふむ、貴族か 良きかな良きかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ