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隼人と貴虎が武蔵をなだめて昼食が再開された。
俺は納得いっていないが、べつに喧嘩がしたいわけではないから仕方なくあきらめた。
武蔵があらためて深呼吸してから口を開いた。
「マジ顔で冗談をいうもんだからつい殴ってしまった。悪かった。」
冗談じゃないんだけどな…
それに武蔵のやつまったく悪いと思ってねぇな…
「そういえばアヒルちゃんとりゅうって同中だよね〜中学でなんかあったりしたの〜?」
なんであきるの出身中学まで知ってんだよ?
「同中なのか⁉︎」
武蔵が驚いていた。
まぁ学校では1度も会話してないからわかるわけないか。
「龍司も阿っ中から来てたんだね」
と隼人が確認してきた…
「…え?普通逆じゃねぇの⁉︎なんで俺のを知らずにあきるの出身中学を知ってんの⁉︎」
「そういや最初に出身中学の話のときにいってたっけな。覚えてなかったけど。」
武蔵までもが酷いことをいっていた…
なんだろ、涙が出そうだ…
「しょうがないよ〜アヒルちゃんは人気者だからさ〜それで〜2人はつきあってたの〜?」
貴虎がてきとうにまとめて恐ろしい質問をしてきた。
「いや、ねぇよ!」
「熊川があんな美人と付き合えるわけねぇじゃん。」
「そんなことないよ〜りゅうは昔はかっこよかったよ〜」
笑いながら俺を否定する武蔵に貴虎がフォローをしてくれた。
“昔は”は余計だがな…
「あきるとはただの幼馴染みだよ。」
「幼馴染みってぇのは意外だけどよ、幼馴染みだからいつでも付き合えるとかいう勘違いは痛いぞ。」
「それが鬱陶しいくらいに結婚するだの彼女にしろだのいってくるんだよ…」
可哀想なものを見るような目をしていた武蔵の目が変わり、拳を握っていた。
それを止めるように隼人が間に入って確認をしてきた。
「それって小さい頃とかの話でしょ?最後にいわれたのだって何年も前でしょ?」
「最後にいわれたのは3日前だな。」
怒りを通り越したのか、3人とも唖然としていた。
10秒ほどの沈黙のあと、隼人が慌てたように口を開いた。
「ちょっと待ってよ。全然想像できないんだけど。べつに龍司がこんな嘘をつくとは思ってないけどさ、氷の女王の東さんだよ?同姓同名じゃなくて?」
「同姓同名のやつがいるかまでは知らねぇし、氷の女王ってのも今日初めて聞いたけど、阿っ中から来てるのは俺とあきるだけだから間違いないと思うぞ?」
なんでそんなに否定させたいのだろうか?
俺が人に好かれるのって異常なことなの?
まぁあきるの求愛は異常だがな…
「でもりゅうがアヒルちゃんと話してるとこ1度も見たことないよ〜?」
「学校では一切話そうとしないんだよな。理由はわからんが俺もわざわざ学校で話さなきゃならんこともないから話しかけないけどさ。」
ガタッ
我慢できなくなった武蔵が立ち上がり、俺の腕を掴んで引っ張った。
「ちょっと来い。」
「急になんだよ⁉︎」
「確認しに行くぞ!」
有無をいわせぬ力で引っ張られた。
さすがは体力バカなだけはある。
無理やり振り払うのはできなくはないが、また争うのも面倒なので付き合うことにした。