1-3
「たぶん桃香ちゃんだろうね〜」
4人で昼飯を食べながら今朝の話の女の子について話していたら、貴虎が聞いたことない人名をあげた。
「確かに8時前に学校に来てて、身長が150くらいで髪がふんわりした可愛い子っていったら拝島桃香かもね。それなら一目惚れするレベルの可愛さってのも納得いくしね。」
どうやら有名な人らしい…
「ってか学年ツートップすら知らねえとかお前って男好きなのか?」
武蔵が鳥肌が立つようなことをいいやがった…
「んなわけねぇだろ!確かにツートップなんて初めて聞いたけどさ…」
「ムサ高1年の癒し姫と氷の女王って聞いたことないかにゃ〜?」
「聞いたことないけど、ツートップってことはこんな都立高校の同じ学年に拝島桃香レベルがもう一人いるっていうのか?」
それは素直に驚きだ。
初めて可愛いと思えた女の子と同じレベル…見てみたい…
「まぁ好みによるだろうけどね〜スタイルはアヒルちゃんの方がいいと思うよ〜」
アヒル?変わった名前だな…
「確かに好みによるね。氷の女王は一部の人間には大人気だし。僕は近づこうと思わないけど…」
隼人に敬遠されるってことは性格に難ありか?
「まぁ綺麗系が好きか可愛い系が好きかって感じじゃねぇ?」
武蔵がザックリとまとめた。
「そのアヒルって子は…」
「アヒルってのは一部の人が呼んでるだけで本名は東あきるだよ。」
「考え事してるときにアヒル口になるんだよね〜あのギャップが本当にかわいいにゃ〜」
「どうせ告白すんなら東にしてくれりゃ面白かったのにな!」
武蔵が笑いながら俺の背中を叩く。
「それはない。冗談でも告ったりしたら笑えないことになる…」
「龍司もさすがに東さんのことは知ってるんだね。」
「つまんねぇな。拝島に振られて午前中ずっとふて寝するような精神だったら、知らずに東に告ってりゃしばらく不登校になるレベルのショックを受けてる熊川が見れて面白そうだったのによ。」
ひでぇなこいつ…ってかなんか勘違いしてるぞ?
「俺が告ったら付き合わなきゃならなくなるから笑えないんだよ…」
一瞬時間が止まった感じがした。
実際に止まるなんてありえず、周りの話し声は聞こえているのだが、間違いなく俺たち4人…いや、俺以外の3人の時間が止まっていた。
「はぁ?」
しばらくして、実際には2.3秒だろうが、顔に血管を浮かべた武蔵が聞き返してきた。
「だから冗談でもあいつに告白なんてしたら付き合わなきゃ…」
顔面に衝撃がはしったと思ったら目の前は天井で星が散っていた。
一拍おいて顔面と後頭部に激痛がはしった。
「ほざくなナルシストが!」
武蔵の怒声で周りが静まりかえった。
どうやら俺は武蔵に顔面を殴られた勢いで椅子から落ちて後頭部をうったようだ。
いきなり殴るとかありえないだろ…
しかも本気の一撃だったし…
なんかムカついてきた…
俺の気も知らないで好きかっていいやがって…
「冗談は顔だけにしろ!」
プチッ
「好きかっていってんじゃねぇぞ⁉︎」
背筋を使って勢いよく飛び上がり、武蔵に掴みかかろうとした瞬間、貴虎に羽交い締めにされた。
それを力ずくで振り解こうとしたら、今度は隼人が「まぁ落ち着け。」と間に入ってきた。
…え?俺が悪いの?
とりあえず冷静にならなければちゃんとした判断ができないのも確かだから落ち着こう…
ヒッヒッフー
違うなヒーフーヒーフー…
…なんとか落ち着いてきたけど、俺悪くなくねぇ?
「落ち着いたみたいだね。」
「ヒッキーの気持ちもわかるけど〜急に殴りかかっちゃダメだよ〜」
なんで俺が悪者みたいになってんの?
なんで?
「ちょっと待て。なんかおかしくない?俺が悪いみたいになってるよ?」
武蔵の怒声で少し静かになった教室がさらに静まりかえった。
「もう一発いいか?」
誰ともなしにそう質問した武蔵は笑っていた。
目以外が…