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授業の終わりを告げるチャイムで目が覚めた。
珍しく早く登校したせいで誰も教室におらず、今朝の失恋の悲しみを誰にも聞いてもらえずふて寝を選んだせいで1時間目を寝て過ごしてしまったようだ…
顔を上げると前の席の秋川貴虎が体ごとこちらを向いていた。
「りゅう、どうした〜?元気ないにゃ〜?」
貴虎は間延びした喋り方とたまに変な語尾を付ける。
中学の時に1度会ったことがあるがその時は話し方もキャラも違った気がする…
これも高校デビューなのかね…
こんな話し方でもイケメン星人はモテるから不思議だ…もとい羨ましい…
「聞いてくれよ貴虎〜」
中学の時にあったことがあるということもあり、高校入って1番最初にできた友だちで、自分でいうのもなんだが仲も良い。
イケメン星人なだけあり恋愛ごとでは頼りになるはず!
今まで恋バナなんてしたことないからわからんが…
でも俺よりは間違いなく経験豊富だから相談もかねて今朝のことを全て話した。
「…で走って逃げられた…」
俺を挟んで前後から笑い声がした。
「体をはってネタを作るなんて、さすが龍司だね。」
後ろから笑いながら会話に参加してきたのは昭島隼人、仲良い友だちの1人だ。
いい意味で普通のやつだ。
うちらが調子に乗りすぎてしまったときには止めてくれるし、だからといってノリが悪いわけではない。
真面目な話とかをしやすい友だちだ。
「りゅうが女の子にちゃんと興味があってよかったよ〜」
「どういう意味だよ…」
「だってりゅうが女の子の話をすることなかったし〜、女の子と話してるとこもあんま見たことなかったからさ〜」
確かに女子とは必要最低限の会話しかしてなかったし、恋愛感情を抱いたことがないから話題に上がることもなかったから、何もいい返せない…
でも、俺にだって女子にモテたいと思う気持ちはある。でも面倒くさいから付き合いたいとは思わない。っていったらまた反感かうだろうから黙っとこう…
「それで、相手は誰なの?」
「髪がフワッとしてていい香りで、目が潤んでたな。身長は150くらいかな?」
「いやいやいや!特徴じゃなくて名前を聞いたんだけど…」
「知らん。」
今朝初めて見かけたのに知るわけがない。
スパンッ!
軽快な音とともに頭に激痛がはしった。
「いってぇな!」
立ち上がって振り向くと俺より10センチくらいデカイ男が立っていた。
「途中から聞いてたらあまりにバカすぎてつい。」
「ついってツッコミにしては強すぎだろ⁉︎」
「バスケは手首のスナップが重要だからな。」
ふざけたことをいってるこのデカイやつは引田武蔵といって仲良い友だちの1人だ。
1年のなかで唯一ベンチ入りしてるバスケ部の次期エースらしい。
確かに運動神経だけはいい。だけはな。
俺はこの4人でよくつるんでいる。
むしろ部活をしていない俺はこの4人でしかほとんど遊んだりしていない…
「とりあえずご飯食べようよ。そろそろお腹すいたしさ。」
隼人が珍しく早弁の誘いをしてきた。
「さすがに早すぎでない?朝飯食べてないの?」
3人が可哀想な目で俺を見ていた。
「そうとうショックだったのかにゃ〜」
「初恋らしいから仕方がないよ。」
「…もう昼休みだぞ?」
「マジか⁉︎」
どうやら俺は1時間目だけでなく午前中を寝て過ごしたらしい。