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初恋は終わらない  作者: 葉月二三
独りよがり編
19/20

2-9



本当に一つだけだったようで、拝島桃香についての話は俺からいくら聞こうがあれ以上は一言も発さなかった。

ようはガン無視だ。


飯田橋駅まで来たところであきるに振袖を返却に行くから先に帰ってていいよといわれ、1人電車で帰宅中だ。


それにしてもあきるはなんであんなことをいったんだ?

仮に本当だとしたら、あれだけ反対していたあきるがわざわざそんなことするのか?

仮に嘘だとしたら、俺に希望を持たせてあきるになんのメリットがある?

それにあきるはそんなくだらない嘘をつくタイプではないと思う。

考えれば考えるほどわからない。

珍しく考え事なんてしていたせいだろう、降りる駅を乗り過ごしてしまった…


引き返すために1度荻窪駅で降り、新宿方面行きの電車を待っていると先ほどあきるがしていた香水の香りがした。


結構人気のある香水なのかと何気なく隣を見て固まった…


隣は俺が見たことに気づいたようでこちらを見て少し驚いた顔をしていた。


「こんにちは。奇遇だね。」


驚いた顔から笑顔になり、普通に挨拶をしてくれた。

拝島桃香的には気まずくはないのだろか?


「お、おう。拝島も家ってこっちなの?」


なんとか声を絞り出し、緊張していることがバレないように必死だ。


「違うよ。今日は友だちのお家にお泊まりして、これから帰るところだよ。」


「そういえば大二中だったっけ?帰るの大変だな。」


また驚いた顔をした拝島がすげぇ可愛い。


「武蔵が同中だっていってたからさ。武蔵って引田武蔵ね。」


「引田くんと友だちだったんだね。」


「あと拝島が知ってそうなやつだと隼人ともよく遊ぶよ。」


「隼人って昭島くん?」


「そうそう。確か同じ部活でしょ?」


「そうだよ。でも同じ部活だけど男子と女子で基本は別だからあまり関われないけど、昭島くんは高校入る前から知ってるよ。」


「そうなんだ〜。」


…ヤバい、話のネタがない…

あと1分で電車が来るからそれまで何か話題を考えなければ…


「私たち、初めてちゃんと喋れたね。」


拝島はさっきからずっと笑顔なのになぜか少し悲しそうに見えた。


「拝島。」


あっ…これはヤバい…

止まれ!俺!


「やっぱり好きだ。」


告るタイミングじゃねぇだろ、俺!


「しつこくてウザいかもしれないけど本気なんだ!付き合ってください!」


拝島から笑顔が消え、悲しそうな、辛そうな顔になった。


「ごめんなさい…私には熊川くんの本気っていうのがわからない。」


まっすぐに俺の目を見る拝島の視線から耐えられず、俺は目をそらした。

ちょうど電車が来たが、さすがに同じ電車に乗る勇気はなく、動かなかった。


「またね。」


俺が電車に乗らないのを見て、律儀に挨拶をしてきた。

俺が返事をすることなく、電車のドアが閉まり発車した。


なんで告ったんだろう…

後悔に押しつぶされてホームの下を見る。

楽になれるのかな?


ふと右ポケットに入れていたスマホがバイブした。

ポケットから取り出すと画面には貴虎と表示されていた。

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