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「なんで64とスーファミしかねぇんだよ⁉︎」
あきるが帰った後もなかなか誰も来ず、全員が揃ったのは18時を過ぎてからだった。
そして今は暇つぶしに64版のスマブラをやっていた。
久しぶりにやると面白いな。
「あんまゲームやらないからさ。それに4人でやるならちょうどいいじゃん?」
「今のゲームはたいてい4人はできると思うにゃ〜」
知らなかった…
まぁべつに知らなくて困ることでもないか。
「むしろ僕ら世代でスーファミを持ってる方が珍しいと思うよ。」
武蔵、貴虎、隼人は意外とゲームに詳しいようでいろいろツッコンでくるが、ぶっちゃけよくわからない。
このゲーム機やソフトも母方の実家にあるやつをもらっただけだからな…
でもなんだかんだいいながらも俺ら4人は64版スマブラを2時間くらいやっていた。
戦績をつけていたわけではないが、貴虎、俺、隼人、武蔵の順で強かった。
貴虎はなんでも器用にこなすからな。
隼人は64をやったことがあるようでそこそこできているが、武蔵は2時間たった今でも使いこなせていない。
まぁこのあたりが筋肉バカの限界だろう。
「そろそろ飯でも食いに行くか。どこがいい?」
「ファミレスでいいんじゃないかな〜」
「ガストでいんじゃね?」
「安いし長居できるしいいんじゃないかな?」
「ガストだと少し歩くけどいい?」
「ど〜せ暇だからかまわないにゃ〜」
晩飯も決まり、ゲームを消して出かけることにした。
そのまま初詣に行こうということで荷物も持っていくことにした。
荷物といってもたいしたものはないけど。
家から徒歩で10分程度の場所にガストはあるのだが、大通り沿いにあるため2人二組にわかれて歩いている。
先頭が俺と武蔵、五歩ほど遅れて貴虎と隼人だ。
「そういや拝島のことはあきらめたのか?」
いつものくだらない会話の途中で武蔵にしては珍しい恋愛話をふってきた。
そういえば武蔵とは終業式以来となる。
だから出会ってすぐに告白してふられたことしか話していない。
2度目の告白にかんしてはその場にいた貴虎が知っているだけで、誰にも話していない。
話してしまうと本当に終わってしまいそうだから…いや、2度もふられてまだあきらめられないのを恥ずかしく思っている部分があるからかもしれない。
…前言撤回、あきるや母親には話してしまったのだった…さすがに母親には2度もふられていることは話していないけど。
「あきらめてないよ。」
一瞬だが武蔵が苦い顔をした。
「ふられたんだろ?」
「そうなんだけどさ。でもなぜかあきらめられないんだよな…一目惚れなのに。」
顔だけでこんなに人を好きになれるものなのか?
自分で自分に問いかけたい。もちろんなれるとしかいえないが。
「じゃあ今度はどうすんだ?懲りずにまた告んのか?」
「実は既に2回告白してるんだよね…」
「は?」
「もちろんふられたけどさ。」
「そりゃそうだろうな。」
馬鹿じゃねぇの?といいそうな顔をした。ちょっと呆れているようだ。
「一週間に2回とか馬鹿じゃねぇの?」
実際にいわれてしまった。
思ったことをいうのは武蔵らしくて嫌いじゃない。
「俺もそう思うよ。顔しか知らないのになんでそんなに突っ走るんだってね。だから、今度は拝島桃香のことをちゃんと知りたい。」
「知りたいって…何をだよ…」
「いろいろだよ。武蔵は何か知らない?」
むちゃぶりにイラつくかと思ったが、意外にも武蔵は答えた。
「拝島桃香15歳。大二中出身。1月24日生まれ。中学時代はソフトテニスで今は硬式テニス部。現在のクラスは1500。彼氏いない歴=年齢。告られた回数は俺が知っているだけで28回だから多分その倍はいってる。甘い物全般が好き。意外にもラーメンが好きらしいが、1人で食べには行けないらしい。辛いものはあまり得意ではない。運動神経はわりといいが、勉強は普通。…ぱっと思い浮かぶのはこんなもんか?」
スラスラと拝島桃香の情報を話す武蔵を呆然と眺めていた。
そこまで知ってるとなんか怖いんだけど…
「なんでそんなに知ってんの?ストーカー?」
「ちげぇよ!殺すぞ⁉︎」
ガチで睨んできた。
アーコワイコワイ。
「むしろ好きなやつならこんくらいは知ってて当然だろ?」
「それじゃあ武蔵も拝島桃香が好きみたいじゃん?」
「俺の場合中学一緒だったからってのもあんだけどな。」
ん?質問が流された気が…まあいいか。
「ってか同中だったの⁉︎」
「あぁ、3年間な。」
そりゃそうだろうよ。
転校生だったから1年だけとかならわかるけど、3年間ならあえていう必要がないだろ…やっぱり馬鹿なんだな。
それでこそ引田武蔵!




