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初恋は終わらない  作者: 葉月二三
独りよがり編
12/20

2-2



なんとかあきるを落ち着かせて時計を見ると13時を過ぎていた。

1時間以上もぐずってたのかよ…


「ってか腹減った…下に飯ってあった?」


「ねぇよ!カップ麺でも食ってろ!」


まだご立腹のようだ…

あとは時間が解決してくれるだろう。

ぶっちゃけもう面倒だ。


「まぁ食えりゃなんでもいいか。」


「うがー!」


「グハッ…」


部屋から出ようとした俺の背中にタックルをしてきやがった。


「そこは私に頼めよ〜」


なんて面倒くさい生き物なんだ…

あきるの料理は美味しいから作ってくれるならむしろありがたいけど、カップ麺でも食ってろっていったのはあきるだぞ…

余計に面倒くさいことになりそうだからいわないけどさ。

ここは乗ってやるか。


「私はあきる様の料理が食べたいので、作ってはいただけませんか?」


「しょうがないな〜今日だけだぞ。」


あれ?なんだろう…幼馴染みだからなのか?

すごくイラっとした…

でもあきるの機嫌は直ったようだから、ここは我慢しよう。

俺って本当に大人だな。


満面の笑みのあきるが台所に走って降りていったので、俺も降りて行くことにした。

そういやさっきの話しぶりだとこれから作るっぽいけど、いいのかな?

そろそろ貴虎たちが来ると思うけど…まあいっか。

階段を下り始めた…


「チンッ!」


思いっきり電子レンジの音がしたけど、作るんじゃなかったの?

まぁ食えりゃいいけどさ…


リビングに入るとテーブルの上にはサラダが置いてあった。

俺が降りてくるまでに5分もかかってないから、間違いなく既に作ってあったんだろうな…


「何か手伝うか?」


「あと3分くらいでできるから手伝うことはないよ。サラダに使うドレッシングだけ選んでおいてもらえる?」


部屋から出ると普段のあきるに変わる。

部屋から出たところで家には俺とあきるしかいないのだから変える必要もないだろうになぜか変わる。

というか俺の部屋でのあきるが異常でそれ以外が普通なのだから常にこのままいればいいんでないかとは思うが、その辺りの質問にはいつもはぐらかされてしまうから最近は聞いていない。


「チンッ!」


ドレッシングを選んでテーブルに戻ったところでまた電子レンジがなった。

今日のご飯はもしかして冷凍食品の寄せ集めか?

そんなことを思っていたらあきるがミトンで器を持って俺の前に置いた。

すごくいい匂いがする。


「器熱いから気をつけてね。」


一言だけそえて、あきるは俺の前の席に座った。

この4人用のテーブルは父、母、俺と座る場所が決まっている。

残る一つはあきるの特等席といっても過言ではないほど、あきるはうちでご飯を食べることが多かった。


「あきるは食べないの?」


器は一つだけであきるの分がなかった。


「私はサラダだけでいい。」


そういって、サラダを小皿に取って食べ始めた。


俺はたいした返事もせずにグラタンをスプーンですくった。

こ、これは⁉︎

グラタンではなくドリアだ!

しかもこれは⁉︎

スプーン山盛りにすくったドリアを口に運んだ。


「やっぱりこれはチキンライスか!」


「よくわかったね。チキンライスとベシャメルソースってけっこう合うからさ。」


話しながらあきるが小瓶を俺の目の前に置いた。


「そしてこのバジルソースをかけるとより美味しくなるよ。もちろん好みはあるけれど。」


「とりあえず試しに少しだけ。」


端の方に少しバジルソースをかけて一口頬張った。


「どう?」


「ヤバいなこれ⁉︎バジルの強烈な香りが鼻にくるのにチキンライスやホワイトソースの味もしっかりしていて混ざり合う…うめぇ…」


「よかった。バジルソースは手作りではないんだけど、このメーカーのバジルソースはすごくバジルの香りがするのにしつこくないから料理の味を壊さないの。ここの他の調味料はオススメしないけど、バジルソースは本当にオススメだよ。」


料理の話は俺にはよくわからないが、あきるの料理はなんでも美味しい。

失敗作は食べたことないどころか見たことすらない。

俺の幼馴染みは完璧超人だからな…

昔はそのせいで劣等感に耐えられなくなった時期もあったが、あきるが努力をしていることを知っているから、今では素直に凄いと思える。


「そういやそろそろ貴虎たちが来ると思うぞ?」


「…は?」


サラダを食べる箸が止まり、眉根を寄せて睨んできた。


「今日は24時近くまでうちで遊んでから初詣に行く予定だからさ。」


「聞いてないんだけど?」


「まさか年末の朝からうちに来るとは思ってなかったからさ…」


「あっそ、もういい、帰る。」


そういって箸を置き、そのままリビングを出て、玄関のドアを開ける音がした。

どうやら本当に帰ったようだ。

なんで怒ったかが全くわからないのだが…

まあいいや。とりあえず飯食おう。

そう思って一口、二口と食べていたらまた玄関のドアが開く音がした。

すぐさまリビングのドアが勢いよく開かれた。


「なんで追ってこないの⁉︎」


あきるが戻ってきた。


「え?べつに家隣なんだから追う必要がなくないか?」


「はぁ〜…」


あきるは深い溜息をつきながら、自分で使った食器を洗い場へ持って行き、洗い始めた。

洗い終わると改めてリビングに戻ってきて、諦めの目で俺を見ていた。

え?何その目⁉︎やめて!


「もういいや。私帰るね。」


「お、おう。良いお年を。」


「良いお年を。」


今度は静かに帰っていった。

…これは追うべきなのか?それとも今回は普通に帰ったのか?

ってかなんでそんなことで俺が悩まなきゃならねぇんだよ…


本当に女ってのはわからねぇ…

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