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青月の薔薇  作者: あをに
9/9

赤い涙

「……」

「……」

「あの……続きは?」

「終わりだ。」

「へっ?」

「窓が勢いよく開いたことまでは覚えているんだが、ここから先の記憶はない。」

「な、何故ですか?」

「それは分からない。まるで穴があいたように、そこだけ記憶が抜けているんだ。……気づいた時には、ユリアーナは椅子から消え、父様は笑いながら血を流し、死んでたよ。」

「っ……!」

「しかも首には、噛み付きあとがあった。これがどういうことか、分かるかい?」

「……吸血鬼……!」

「ああ。君ほどの洞察力の持ち主なら、この情報でだいたいのことは分かっただろ?……って、ん?……レオン、何故泣いているんだ?」

「へっ?……あれ、どうして?涙……」

なんで、俺、泣いているんだ……?

「あの、ぼ、僕…理由なんて、分からないです……でも、何故だか、とても申し訳ない気持ちになったんです……お、おかしいですよね、あ、あはは……っくっ...えっぐ……」

ギュッ

「!?」

エーベルは俺を抱きしめていた。

「レオン、君は優しい子だね。こんな私...暗殺対象(・・・・)に、涙を流してくれるのかい?」

「っ!?」

「私も、人の嘘を見抜くのが得意でね。」

「……じゃあ、何故俺を家に入れた?」

「それは、君が、なんだろうか、とても、愛らしくみえてね。」

「……ははっ、やっぱり、ホモなのか?」

「うーん、ホモ、というよりは、好きになる人の性別は、とくにどうでもいい感じかな。」

空は、いつの間にか曇天になっていて、ポツポツと雨が降り出した。

「……ははっ、じゃあ、テメェは分かってて、俺で遊んでいたってことか。」

「違う」

「違わねェよ。……ほら、殺せよ。」

「?」

「暗殺対象に感づかれる暗殺者なんて必要ない。さあ、殺せよ。抱きしめたままじゃ、俺も逃げれねェから殺りやすいだろ?」

「……それをすることで私に何か得はあるのか?」

「……」

エーベルはとても冷たい顔をしていた。

「……実につまらない。君も、そうなのか?」

「は、テメェ何言ってんんっ!?」

いきなり、エーベルが俺の唇を奪った。

「んんうっ!?んっ……」

次第に、舌が入ってくる。

「んんっんあっ……」

「っはあっ...レオン、俺の目を見ろ。」

「っ」ガクガク

「嗚呼、その恐怖に満ちた顔、たまらなくいいね。んっ……」

「んっんんっ!!」

エーベルは雨の中俺の服を脱がし始めた。

木の下なのであまり濡れないが、それでもズボンは冷たかった。

あっという間に脱がされ、エーベルの指が入ってくる。

「んっ!?かはっ!!っああっ!?エーベっ……やめ...!!」

「聞こえないな?第一、今から死ぬんだろう?だったら何されても関係ないだろ?」

「っ……」

「……お前はただヨガっているだけでいいのだよ、レオン。」

「っい、あっ!いやっだっ!!っ……んんっ!!」

「イっていいんだよ。」

「イっ……あ、イくっ...!!あっ、アアアア!!」ガクン

「...おや、気絶してしまったようだね。指だけでイってしまうとは。生憎、気絶している所を襲う趣味はないのでね。」

「……ごめ……なさ……お父……様……」

「……?」


***


「……ごめ……なさ……お父……様……」

「……?」

速やかに着替え、レオンに服を着せようとした時、

気絶しながら、レオンがそう呟いた。

……昔、何かあったのか……?

「……」

レオンを抱き抱え、上着を掛け、林檎畑の奥へと向かう。

そこには、作業用の小さな小屋があった。

とりあえず雨が止むまでそこにいよう。


ギイイイイイイイイ__

しばらく使ってないから、埃臭いな……

ベッドを軽く叩き、レオンを寝かせた。

その後、年季の入った椅子に腰掛け、窓の外を見やる。

__やってしまった__

記憶がない苛立ちから、ついヤケクソになって、レオンを……

久しぶりに、記憶をたどった。

あまり思い出さないようにしていた。

ユリアーナは、どうなったんだろう。

生きているはずだよな、絶対に。

止むどころか、どんどん酷くなっていく雨音を聞いていたら、いつの間にか寝てしまっていた。


***


「レオン、レオン。起きなさい、レオン、起きてるんだろう?レオン、レオン?」ドンドン、ドンドン

__嫌だ


____嫌だっ!!


「起きていることなんて、分かっているんだよ?……はあ、仕方ない子だね。」

バァンッ!!!!!

「ひぃっ!?」

ドアの鍵は、何錠にもかけた。

しかし、それも無駄だった。

銃によりバラバラに壊れた鍵の山が落ちる。

__もう、もうダメだ。


____嫌だ


______殺されるっ!!!!!!


ガチャ

「やあ、おはようレオン。よく眠れたかい?」

「あ……ああ……」ガタガタ

「さあ、では__


始めようか。」


***


「っはっ!!!」

今の……夢?

あの男は……俺の……親父?

「……っくそっ……頭痛てぇ……」

いつの間にか雨は止んでいて、窓からは月光がさしかかっていた。

窓辺の椅子には、眠っているエーベルの姿。

金髪の髪が月光に輝いている。

自分に掛かっていた薄い毛布をエーベルに掛け、外に出た。


「……」

外は凄い景色だった。

無数の林檎が、月光の淡く、青い光に包まれている。

全てが青い光に包まれている。

「すご……」

「凄いよね、この景色。」

「……え?」

そこには、黒い……まるで吸血鬼の衣装のようなものをまとった男がいた。

「君は……?」

「ああ、名乗ってなかったね。」

そう言って男は礼儀正しくお辞儀をし、


「僕の名前はハート。よろしくね、レオンくん?」


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