彼の夢2
「__ユリアーナ??」
ユリアーナって誰だ?恋人の名前か?
いや、恋人はいなかったはずだ。
奴から取り戻す……奴って誰だ?
そこにはいつもの紳士らしい優しい顔はなく、物凄い形相の奴がそこにいた。
「あいつも、あんな顔するんだな。」
……にしても、折角あいつから仕掛けてきたのに、あの悪夢のせいで、発展させることができなかった。
こんなんじゃ、いつまで経っても殺せやしない。
とにかく、考えれば考えるほどおかしくなってきそうだ。
布団にダイブし、いつの間にか眠りについていた。
「……ん、朝か……」
「随分と、いつもの怖い形相じゃなく、可愛い顔だね。」
「うわあっ!?な、なんで居るんですか……」
「結構前から居たよ。レオンは警戒心強そうだから、すぐ起きるかと思ったが、案外そんなことなかったな。」
「そ、そんなのひどい……」
「ははは、済まなかったな。……で、昨日の夢、本当に覚えてないか?」
「……え?」
「僕はね、君の叫び声から察したような夢を、見たことがあるんだ。」
「……」
「まあいいさ。今日は仕事があるんでね、何かあったら、ドミニクに言ってくれ。」
「は、はい。あ、あの……」
「ん?」
「失礼ですが、エーベルさんって、どんな仕事を...?」
「まあ、証券会社系の社長かな?まあ、たいしたことはやっていないさ。」
「そうなんですか?」
「ん?何か、腑に落ちていないようだね?」
「いや、あの、やっぱり、あの図書室の吸血鬼関連の本、多いと思うんです。あと……鍵が掛かっていた所も、多く見受けられました。なので、本当に、そういう関連の、例えば」
「ヴァンパイアキラー……とか?」
「……はい。ヴァンパイアキラーとか、です。……そうなんですか?」
「本職ではないさ。まさか、出会ってまもない少年にばれるとはな。レオン、君は人を観察する能力、つまりは洞察力に長けているね。」
「そ、そんなことありません。」
「いや、そんなことあるよ。是非とも、私の職の手伝いをしてほしいものだ。……レオン、君は吸血鬼を信じているかい?」
「……信じられるものは、目に見えるものだけです。僕は、吸血鬼を見たことがないから、今は信じていません。」
「ははは、君はバカ正直だね。」
「そ、そんな」
「すまないすまない、どうか怒らないでくれ。いや、そんなバカ正直だからこそ、そんな能力が備わっているのだろうな__それに__」
「?」
「いや、何でもない。」
「……あ、あの、ヴァンパイアキラーって、どんな事をするんですか?」
「そうだな……何かをする、という訳じゃなく、私達は吸血鬼に肉体的に触れると、浄化させられる。」
「……肉体的に、触れるというのは?」
「自分に含まれる成分を、相手に注げばいい。例えば血とか。汗とか唾とかはあまり効果はないらしいな。まあ、精液とかも、可能らしい。それが1番、手っ取り早い方法かもな。」
「肉体的って、そういう事ですか……」
「ああ。生々しいが、本当なんでね。」
「ヴァンパイアキラーって、家で継がれる物なんですか?」
「あ、ああ。私、ブルーメンタール家は、列記としたヴァンパイアキラーの家系だ。ヴァンパイアキラーの仕事は、代々二つの家で継がれてきた。1つは、我が家、もう1つはクンツェンドルフという家さ。……っといけない。これじゃあ、会社に間に合わないね。すまないが、この話はまた今度。じゃ、行ってくるね。」チュ
「!?」
突然おでこにキスされた。
「君が悪夢を見ないように。まじないだ。」
「……あ、ありがとうございます……?」
なんだよ、あいつ。
なんか、殺すタイミングつかめねェ……
人というものは、大体、スキがあるものだ。
しかしあいつは、スキどころか、本心がよく分からないような奴だ。
あいつは、俺をどのように見ているのだろうか。
待遇的に、まるで、俺、あいつの子供みたいな……
まあ、いい。もう大分慣れちまったし、しっかりとタイミングをつかまなくては。
***
__君は?
__僕は、君さ。
__意味が分からない。
__正確に言うと、僕は君の力だ。
__……
__奪われてから、君はそんなことも忘れてしまったのかい?
__もう一度聞く。お前は誰だ。
__僕はね……
____君の***さ...!!!____