彼の夢
『Vampir__吸血鬼は、日光や香草を嫌い、人の血液を好む。一般的には男の姿をしており、主に女性を襲うとされている。また稀に、満月__』
「気に入ったのかい?」
「!!…い、いえ、何故こんなに吸血鬼関連の本があるのかと…」
此奴は少し考えたそぶりを見せた。
「ああ、そうだね…それは単純に、私が吸血鬼に興味があるから、という回答では駄目かい?」
「いえ…大丈夫です…」
***
__戻ってきてくれ。
そのためにだったら何でもしよう。
君は私のたった1人の__
***
__何故だ、どうして、私の子供なのに。
君は、私と同じなのに。
どうして力を持っていない。
……そんなお前なんて、必要ない。
「っひっ…!嫌だ、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いっ!!く、来るな…ああっ…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ…助けて助けて助けて助けて!!!」
ガチャっ!!
「レオン!どうした、大丈夫か…っ!?」
半月より少し満月に近い月の夜。
私は自分の部屋で本を読んでいた。
「ああ…君は今どこにいるのだろうか、会いたいよ、今すぐに…」
「っひっ!!嫌だ、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…」
「!?」
部屋が離れていても、はっきりと聞こえるレオンの声。
一体、何があったっていうんだ!?
そして、勢いよくレオンの部屋の扉を開けた。
「レオン!どうした、大丈夫か…っ!?」
そのとき、はっきり救済を求めながら、レオンは寝ていたのだ。
息は荒く、涙をながしながら。
「…寝言…だか、起こした方が…」
「アアアアァアアァ!!!止めて!お父さんっ!!ぎゃあアッ…」
「レオン!!起きろ!!レオン!!」
「嫌だ、許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さいっ!!」
「レオン!!!」
気付いたら、俺はレオンを抱きしめていた。
そして、その反動で少しひるんだレオンの口を奪った。
「んんっ」
「んっ!?」
「っはっ…」チュッ…クチュ
「!!!え、エーベ…さんっ…!?」
「!!!っはあっ!…す、すまない。レオン、君はとてもうなされていた。…一体、どんな夢を?」
「…分からないです…ですけど…とても体が疲れている感じがします…」
「すまない、あまりに泣き叫んでいるから、どうしても起こしたかった。…忘れてほしい。」
「すみません…」
「謝るのは私の方だ。」
その時、レオンの髪が一部白くなっていたのには、私は気づかなかった。
次の日の朝、起きるとレオンが庭に出ていた。
レオンは木の下で本を読んでいた。
昨日読んでいた、吸血鬼についての本だ。
「__ばれるか?いや、まだだろう__」
***
『また、稀に満月の光に反応して、髪が白く染まる吸血鬼がいる。しかし、それは本当に稀であり、世界でまだ、1人しか確認されていない。その名は』
「ランベルト__」
昨日、夢を覚えていない、というのは嘘だ。
知らない男の人が、俺を泣きながら、そして笑いながら殴る。
俺は拒み、逃げるけれど、逃げられなく、どんどん強くなっていく。
男の人の髪は、月光を浴び、白く、白く染まっていた。
『何故!お前は私の__』
「っクソっ!!一体、なんだってんだっ……!」
早く奴を殺して、ユリアのところに帰りてぇ……
いや、どうせユリアは、他の暗殺に忙しいか。
「そういえば、あいつあの後どうしてるんだ?っていうか、あいついつも夜、ガサガサうるせーんだよ。」
そっとドアを開け、エーベルの部屋に行く。
少しドアを開け、中を覗く。
エーベルは、アルバムのようなものを見ていた。
そして、独り言を言っている。
「いつか絶対に取り戻す……絶対に……
私の__ユリアーナ__」