置手紙
「…ん、ん?」
眩しい光に目が覚めた。
今…何時だ?
「ふわあっ…んー10時…ちょっと寝すぎたか…なんか、妙にベットがふかふか…ってここどこだっ!!」
勢いよく起きたものの、状況はよく呑み込めなかった。
ベッドの横の机には、黒い何かが書かれた紙があった。
あれ、俺何してたんだっけ。
確か…標的に会えて…
ここあいつの家か!!なんで寝てるんだ…
たしか、あの月の部屋で夕食を食べて…
ま、まさか、あの時寝ちまったのか、俺…
とにかく、奴がいないか確かめないと。
キイィ__
ドアを開けると、さっきの眩しすぎる光は感じなくなった。
__昼間も薄暗いのか、この屋敷は。
普通、こんなに暗いもんか??
長すぎる廊下を、あてもなく歩く。
案の定、何処だか分からなくなった。
「__やらかしたな…」
「わっ」
「ギニャッ!?」
いきなりの後ろからの声に、変な声が出てしまった。
「あはは、すまない、驚いたか?おはよう。」
「…はい。おはよう…ございます…」
「本当に心底から驚いた顔をしているね。ベッドの横の机の上の置手紙に、起きたら右に2個進んだ部屋に来いと書いておいたと思うんだけどな。」
「っ…」
俺の顔を見て、納得したように奴はこう言った。
「…ああ、すまない。とにかく朝はいつもその部屋に来てくれ。…ん?『いつも』に引っかかっているのかい?君、行く場所がないんだろう?落ち着くまでここで暮らせばいい。」
「そ、そんな!!こんなによくしてもらってるのに、悪いですっ…」
「なに、どうせ部屋なんて有り余ってる。家の住人なんて、私と、執事のドミニクだけだ。むしろ住んでくれた方が、私は嬉しい。」
「そんな…じゃあせめて、何かさせて下さい!掃除とか、そんなのしか出来ませんが…」
「あはは、じゃあ、家事は少しお願いしようか。」
「はいっ!!」
「よし、決まりだ。じゃあ私は朝食の支度をしてくる。ここにいてくれ。」
「あっ、何か手伝いをっ」
「いいや、今は構わないよ。」
「そ、そうですか…」
奴が部屋を去ると、俺はゆっくり椅子に腰掛けた。
さっき、俺が手紙のことを言われて黙ったとき。
あいつは何も言わなかった。
__そう。俺は読み書きができない。
教育なんて、受けたことはない。
これまでの暗殺は、体で、ものを言わしてきた。
初めて、俺宛の手紙をもらって、改めて、俺は世間知らずのガキと思った。
せっかくだから、読み書き教えてもらおうか。
…いや、よそう。こんどユリアにでも教えて貰えばいい。あいつが出来れば、の話だが。
しばらくして、奴が戻ってきて、朝食を食べる為に移動した。
昨日、夕食を食べたところと同じだか、やはり明るいと、改めて広く感じた。
朝食の時に、執事のドミニクさんを紹介された。
昨日はたまたま、いなかったという。
優しそうなおじいさんだ。
朝食の後、俺はふいに奴に話しかけられた。
「そういえば、この屋敷を案内していなかったね。今日は仕事もほぼないし、私が案内しよう。」
「あ、ありがとうございます…」
「…ここがまあ、客室かな?まあこれだけあるから、好きな所にいてもらったらいい。」
…客室、多すぎだろ。ざらに数十部屋あるぜ…
そのまま、色んな所を案内してもらい、最後に大きな扉の前に来た。
「…あの、ここは…?」
「ここはね…」
にこにこしながら奴が扉を開けた。
ギイイイっという音と共に扉が開く。
中は薄暗かった。
奴は中に入り、カーテンを開けた。
ザァァァっ…!!
「!!」
そこには、信じられないほどの量の本がある、図書室だった。
「…うわあっ!!すっげぇっ…!!…あっ」
ヤベェ、口調が…
「はは、すごいだろう??おそらく数十カ国の本があるぞ。」
「す、すごいです…!」
「ああ。ここは広いから、自由に見るといい。」
そう言って奴は図書室の奥に消えた。
本当に莫大な量の本があったが、奥に進むうちに、ある共通点のある本ばかりになっていった。
「『Vampir』__吸血鬼についての本…?」