月と蝋燭
「さあ、とりあえず、シャワーを浴びてきなさい。」
「…しゃ、わー?」
「…おや、シャワーも知らないのか?」
「…」コクコク
「…そうなのか。じゃあ、教えてあげよう。」
かかった。
エーベルハルトとかいうこの人も、結局は雑魚の分際か。
難しい…?何が?ユリア。
少年愛好家には、俺はたまらない逸材だろ。
「…寒い…」
「ああ、すまない。早く行こうか」
「ここをひねるとお湯が出る。これで体を洗うんだ。わからないことがあったら、言ってくれればいい。私は、ドアの前で待っているから」
「…え」
一緒に…入らないだとっ…!
〜レオンの勝手な想像〜
「さあ、次はここを洗うよ」
「そっそこはぁ…自分で洗えます…」
「駄目だよ。シャワー、知らないんだろう?さあ、×××を××して?」
「い、いやぁっ…」
ってことになる予定だったのに…!
…まあいい。案外貴族サマが紳士だっただけだ。
まだ時間はある。
さっさとシャワーを浴びよう。
「あ、ありがとうございました…」
「ちゃんと浴びれたみたいだな?」
「はい…あの、ありがとうございました。めいわく、かけて、スミマセンでし、た…」
「いいのさ、これくらい。…あ、お腹空いてないか?」
「え?おなか…?」ギュルギュルギュル〜
「…」
「…っす、すみません…//////」
「あはは、いいじゃないか健康で!さあ、こっちにおいで。」
「本当にすみません…」
これは、チャンスか?
薬か何か盛れるといいな。
「さあ、遠慮なく食べてくれ。」
「あ、はい。ありがとうございます…」
夜。生憎、満月ではないが、屋敷の側の湖には、ゆらゆらと月が写っている。
その淡い光が分かるくらい、部屋は暗かった。
部屋には、手元が見える程度の蝋燭の光しかない。
「少し暗いかい?」
「!!」ビクッ
なんだこいつ、超能力者かよ…
「すまない、私はこの窓から見える月が好きでね。とくに、晴れた日の満月なんか最高なんだ。」
「そ、そうなんですか」
「まあ、だからと言って遠慮はいらないよ。思った事があったら、何でも言ってくれればいい。」
かすかな月光に照らされた貴族サマは、信じられないくらい、優しい顔をしていた。
__違う。俺の知ってる貴族サマはこんなんじゃない。
…いや、あの時を思い出すのはもう止めよう。
今はこいつの暗殺の事に集中だ。
…でも。
今だけは、この美しい月を楽しむとしよう。