雨音の出会い
普通に起床し、普通に食事を摂り、普通に仕事に就き、普通に帰り、普通に寝る。
昨日も、今日も、そして明日も。
毎日が同じことの繰り返しだ。
なんてつまらない人生なのだろうか。
ザアァッ…
けただましい雨の音で目が覚めた。
「…この状況で仕事にいくのか…」
雨は嫌いだ。孤独感が増す。
このだだっ広いベッドを降り、着替える。
コンコン
ノックの音だ。
「…なんの用だ?」
「エーベルハルト様、今日は大雨です。今日くらい車で送らせてください。」
執事のドミニクだ。
「嫌さ。私は歩くのが好きなんだ。お前も今日から休暇だろう?無理しなくていいから、家族に会ってくるといい。」
「…はい。どうか、風邪にはお気をつけください。」
そう言ってドミニクは家を出て行った。
ザアァッ…
家を出るともっと雨音が増した。
傘をさし、歩き出す。
「…?」
この大雨の中、道の片隅に少年が傘もささずに座っていた。
ここ、ドイツでは珍しい、黒髪の少年だ。
「君、そんな所にいたら、風邪を引いてしまう。家に帰りなさい。」
「…な…い」
「?」
「家は、ない、です…すみません…」グズッ…
少年は、長いシャツ一枚しか着ていなく、隙間から見える肌には、たくさんの痣があった。
「…そうなのか。君、とにかくそこにいてはいけない。私の家に来るといい。」
そして、持っている鞄と傘を地面に捨て、少年を抱き抱えた。
「ふえっ…あの…悪い…です…」
「心配しなくていい。」
そういって家に向かった。
その時、少年が密かに微笑んだのには、その時の私は気がつかなかった。