序章:異世界に転生したが状況は把握できていない。
唐突だが、俺は異世界へ転生をしたらしい。
らしいと言うのはこれが転生初体験であり、俺が持つ前世の記憶がただの妄想の可能性もあるからだ。まあ、前世の記憶と言ってもエピソード記憶はほとんど無く意味記憶が大半を占めており、天の河銀河太陽系第三惑星地球のアラフォーの現代日本人男性であった事しか判らないが。名前も思い出せない。
とは言え、物心が付いたと言うか自意識が芽生えた直後の3歳児の思考としてはおかしいと自覚できる時点で、前世の記憶を持った転生であることが妄想か否かは別として、特異な存在である事は間違いなさそうだ。
しかし自分自身、こんな特殊な状況に置かれるような人間であったようには到底思えない。転生が事実として、毒にも薬にもならない、迷惑もかけていないが感謝もされない、可もなく不可もなく、大きな不幸に見舞われないが大きな幸福も享けない、そんな有り触れ過ぎた人生を送っていた人間がこんな特殊と判る転生をするものなのだろうか?
その疑問に答えるような記憶はほんの僅かだが残っている。ただ、これは記憶と言うには語弊がありそうだが。とにかく、自分は死後(死因は不明)巨大な存在と接触した、と思う。巨大としか言えない規模の存在としか言いようの無いナニかと。そして「魂の循環」、「魂の質量・体積」を巡る問題の情報を伝達されて、自分が生きた地球とっては不具合があるからと異なる世界に送り出されたと言うか飛ばされたのだと、思う。
歯切れが悪いのは、転生に関わる記憶が希薄な上に理解の埒外だからだ。自分で言葉にしても理解し難い。理解できるのは「悟り」を開いた存在ではなかろうかと勝手に推測している。
……そんな風に自身の状況を少しでも納得の行く形に落とし込まないとやっていられない。
「イートよ。儂の言葉は理解しておるのだろう?」
俺の名はイート・フーズ。物心が付いた瞬間、目が全く笑っていない祖父と思しき壮年に問い詰められている異世界転生者だ。