表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三國志抄 戀〜lian〜  作者: 月
90/138

八十九.

 蓮はそれに併せて弓を引きながら、しみじみと染み込んで来る大好きな(うた)に聞き入った。

 人生とは朝露の如し。

 拭い切れない憂いを払うのは、ただ酒のみだ。

 詩の冒頭に含まれる深い哀しみに、操は誰か大切な人を失ったのだろうかと思った。

 古い恋の詩を引用して、キミ達のような才能ある者を迎えたいと若い書生達に呼び掛けるくだりは、まさに恋人を待ち()がれるかのように情熱的でさえある。

 そして、蓮はこの後が大好きだった。

“手に取る事が叶わぬ月の光のように、あなたをいつになったら迎えられるのかと憂いていた。ところがあなたのほうから遠い道を厭わず訪ねてくれた。こんなに嬉しいことはない。酒を酌み交わし、おおいに語り合おうではないか”

 そして、かつての――

 おそらくは、失った人との(よし)みを思い、新たに訪れたその人との(えにし)が同じように続く予感と願いとを、詩は奥に秘めていた。

 明明如月。

 操がそう表現した人が誰なのか、蓮はちゃんと知っている。

 真っ暗な夜とも思える迷いや苦しみの中でも足元を照らし、その先の道を示し導く。

 彼は、操にとってまさにそんな人なのだろう。

 その後詩は、カササギが枝を巡り飛ぶ様を描きながら、仕える主人を捜している世の賢人達に呼び掛ける。

 食事を中断してでも人に会い、重く用いたと云う周公旦の故事を引き合いに、自分も彼のように諸君らを迎えるだろうと述べているのだ。

 これは、広く逸材を求める彼の、人材募集の詩なのである。

 山は高いほど良い。

 海も深いほど良い。

 その突き抜けるような大きさが操らしい。

 余談だが、これは後に布告される求賢令に繋がって行く。

“泥棒でも親不孝でもかまわない。但才のみこれを挙げよ”

 貪欲に人材を求め、才能を愛した彼は後にそう発するのだが、それはまだまだ先の話である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ