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三國志抄 戀〜lian〜  作者: 月
9/138

八.

「蓮」

 呼び掛けられ、少年はその玲瓏の瞳を向けた。

 操はそれを、しばし受け止める。

「そなたは閨中にて天上の夢を見せると云う。予はそれを所望だ」

 蓮は何を言われているのか、咄嗟(とっさ)には解らなかったようだ。

 やがて黒燿の瞳に動揺が(またた)き出すのを、操はじっと見つめた。

 身を(ひるがえ)す蓮を捕らえ、背後から抱き締める。

「なぜ逃げる。それがそなたの存在理由だろう?」

 (ささや)かれた言葉に、少年ははっと(からだ)を堅くした。

 なめらかな頬に嫌悪が走る。

 だが、それを飲み込むように、蓮はきつく瞳を閉じた。

 操がやわらかな耳朶(じだ)(くちびる)に含み、細い首筋を辿(たど)った。

 蓮は小さく躰を震わせたが、その吐息には(おび)えとは別のものが含まれていた。

 それから逃れるように身を(よじ)る蓮を、操は軽々と抱き上げ、牀へと押し延べる。(ふところ)を割ると、夜目にも白い肌が戦慄(わなな)いた。

 それに舌を這わされ、蓮は瞳を潤ませながら首を振った。

 嫌悪の気持ちと裏腹に、触れられるたびに肌が波立つようにざわめく。

 (とこ)()していて人肌に触れていなかったせいなのか、思いも掛けずに躰が反応していた。

 操がそれを見逃すはずはなかった。

 熱い接吻(くちづ)けに、蓮の躰はあっと言う間に()かされ、ようやく理性で(あらが)う腕も、操の舌が核心を()いた衝動に震えた。

 蓮は涙をこらえて首を振る。

 怖かった。

 彼の愛撫は蓮が心の最奥に守って来た、最後の何かに触れるように、深く深くその身に響いた。

 懇願を込め、せつない吐息の中、もう一度首を振る。

 だが、操はそれを退け、やがて蓮の躰に自らを重ねた。

 蓮はたまらず華奢な(おとがい)を反らせ、操もまた思わずその脣から吐息を漏らし、(うめ)いた。

 蓮が貴人の閨房のために育てられた子供であろう事も、天下人に愛され抜かれた身である事も、充分承知していた。

 それでもなお、驚きを感じるほど、蓮の(さが)は熱く深かった。

 操は続け様に蓮を追い立てた。何度も襲い来る波に半ば自失しながら、また力強い腕に意識を戻され、蓮はせつなく(あえ)いだ。

 やがてそれはすすり泣きに変わる。

(わし)が憎いか」

 ゆっくりと躰を動かしながら操が問う。

「憎ければ孤を殺せ」

 潤んだ瞳が(かす)かに動き、白い腕が抵抗するように(くう)()いた。

「それしきでは曹操は殺せぬぞ」

 もっと憎め。

 そう言わぬばかりに操が強く腰を進めた。

 蓮は苦しみと(よろこ)びに引き裂かれ、声にならない悲鳴を上げる。

 昇り詰めては意識の淵をさ迷う蓮を引き戻しながら、操は何度も何度もその躰を抱いた。

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