五十九.
「蓮。曹操が見てるぞ」
耳朶を舐りながら、彼が囁いた。
懐に手を差し入れられ、羞恥に震える蓮を引き寄せると、董卓は人目も憚らずに舌を絡ませた。
嫌がる蓮を彼は嘲った。
「あの男の前で犯してやろうか」
今にも衣を剥かれそうな気配に、蓮はたまらず腕を払い、その場を逃げ出した。
だが、子供の足である。何処に逃げられると言うのか。
結局蓮は、宴席から出たばかりのところで家人に取り押さえられた。
「ははは。逃げるなら縛り上げろ。腰が立たなくなるまで犯してくれるわ」
董卓は悠々と歩きながらその後を追い、そのまま宴席に戻らなかった。
宴の客達は董卓の言葉にぞくりとし、また、その情景を思い描きもしたのだろう。酒の勢いも手伝って、きわどい会話も交わされた。
だが、傷を負っている事を知っていた操は、卑猥な笑い声さえ上がる宴内で、ひとり蓮の身を案じた。
「あの後また董卓に打たれたのではないか?」
蓮が首を振る。
『あの日から打たなくなった』
代わりに、彼は閨中で蓮を追い詰めるようになった。
蓮が董卓に薬を使われたのは、その後のことだった。
縛り上げられた蓮は、牀に転がされたまま董卓を迎えた。
このまま惨く突き入れられるのだろうと、蓮は恐怖に堅く瞳を閉ざした。
背に負っていた傷が縛りつけられた縄で痛み、身を起こすことさえままならなかった。
董卓は一度縛を解くと、衣を全て剥ぎ取った。
そのまま後ろ手に再び縄を掛ける。
傷に縛が掛からず、幾分楽にはなったが、逆に羞恥は強く蓮を襲った。
小さく震える躰を見下ろしながら、董卓は張型を取り出して見せた。
「自ら受け入れて見せろ」
蓮は、咄嗟に意味さえ解らなかった。
「あの男の物だと思えば容易かろう?」
彼は笑いながら、震える蓮の脣をすうとなぞった。
身が凍るほどの悍ましさに、蓮はようよう首を振って懇願を示すのが精一杯だった。
「嫌だと言うのか? そんなはずはあるまい」
含み笑いながら、蓮の兆候へと指を這わせる。
「あの男に抱かれたいのだろう?」
吐息を零しながら首を振る蓮を、にやにやと眺めながら彼は続けた。
「曹操が我がもとへ来たら、お前を抱かせてみようか。この冷たい白磁の肌も、さぞかし燃えてたぎるだろうな。他の男に抱かれ、乱れ狂うお前を眺めるのも一興だ」
身を震わせる蓮を寸前まで追い上げると、彼はそれを括ってしまった。
その上で、微かに零れる白露を啜るように舐る。
蓮の吐息は早くも乱れ、躰はしどけなく牀に崩れた。
「少し手助けしてやろう」
彼は笑いながら指を差し入れ、舌を使った。
下肢を乱され、蓮はそのまま抱いて欲しいと思うまで追い詰められたが、董卓は造られた欲望をあくまでも受け入れさせるつもりらしい。
「どうだ? もう充分だろう?」
わざと淫猥な笑みを浮かべ、それを見せる。
蓮は絶え絶えに悶えながら、それでも拒んだ。
「強情を張ると後悔するぞ」
董卓は楽しそうに嗤いながら蓮を組み伏し、何かを差し入れた。
あっと思った時にはそれを流された後だった。
ざわざわと襲い来る波に蓮は脅え、喘ぎ、哭いた。
楽になりたい一心で、董卓の求めに全て応じ、涙を零しながら自らそれに腰を沈めた。
命じられるままに躰をうねらせ、彼の前で蜜を零し、恥も外聞もないほどの嬌態を曝した。
彼がようやく纏っていた衣を脱ぎ捨て、挿入って来たのは、気が狂うほどの悦楽に蓮が溺れ果ててからだった。
無我夢中のままその腕に縋り、自ら求めて蓮は抱かれた。
その背は開いた傷口で紅く染まり、淫行の爪痕と共に幾日も蓮を苦しめた。