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三國志抄 戀〜lian〜  作者: 月
46/138

四十五.

 数日後。

 操はなんとか時間を作り、蓮花の寮へと輌を進めた。

「今回はふた晩だ。がんばったであろう?」

 操は指で共に過ごせる日数を示し、笑った。

 今回の休暇には、比較的荀文若が協力的だった。

 彼なりに蓮を容認したことと、例の報が届いた時、同席していたのも大きいのだろう。

 また、少年の不安定さを目の当たりにした郭奉孝が、それとなく頼み込んだのかもしれない。

 蓮は何も言わなかったが、精神的には追い詰められているようだった。

 昼間でも小さな物音に(おび)え、じっと身を(ひそ)めており、夜ともなれば牀の上で自らの(からだ)を抱いて震えているほどで、操がいなければろくに眠る事も出来なかった。

 操が腕に抱いていても、その存在を確かめるように何度も目を覚ます。

 操に触れ、やっと安心したように頬を寄せながら、それでも蓮は夢の中で泣くのだ。

 時折昔の記憶が(よみがえ)っているのではないか。

 振り払うように首を振ったり、耳を抑えたりして何かを必死に耐えている様子の蓮に、婆はそう推測した。

 蓮の心の傷は深い。

 操の存在でそれは癒されたかに見えたが、完全には消えていなかったのだろう。

 表面だけ塞がっていた古傷がぱっくりと口を開け、再びじくじくと蓮の心に痛みを広げていた。

 きっかけは例の報だ。

 蓮は彼を()()()いるのだ。

 それは、訊かなくても解っていた。

 少しは気晴らしになれば良いが……

 そう思いながら、操は寮への道を進めた。


 寮に着くと、蓮はいくらか心が晴れたらしく、いつものように操の胸に甘えて愛らしく笑った。

 (つい)ばむように何度も(くちびる)を重ね、抱いてくれとせがむ。

 府では見せないその奔放さが、操にはひとつの楽しみだった。

「やれやれ。もう婆を追い出すのか」

 (そば)に控えていた婆は、大業に溜め息をついてみせる。

「さあ、人払いだ人払い」

 そう声を上げながら、彼女は室を出て行った。

 扉を閉める際、ちらりと操に視線を寄越す。

 操は何も言わず、それを受け止めた。

「蓮。婆を追い出すと、後が怖いぞ」

 がばりと腕を広げてその躰を覆うと、蓮は久しぶりにくつくつと笑った。

 首筋に舌を這わせると、たちまちそれは(あえ)ぎに変わる。

 その場でしばらく戯れてから、操は蓮を牀へと運んだ。

 蓮は欲情に潤んだ瞳で腕を差し伸べる。

 抱いて。

 その脣が動いた。

 蓮は少し、言葉を(かたち)取るようになっていた。

 その愛らしい脣を吸い、舌を絡めて慈しむと、操は蓮の脚を抱き上げて躰を重ねた。

 自らの膝が胸に着くほど押し開かれると、操が深く入り込むので蓮の表情には(かす)かな苦悶が混じる。

 だが同時にそれは、深い悦楽となってその身を震わせた。

 (もだ)える美しい(かお)を楽しみながら、操はゆっくりと躰を動す。

 蓮は時間を掛けてじっくりと抱くと、躰の芯から(こぼ)れるように(とろ)け出すのだ。

 そのひとときが操は好きだった。

 操……

 やがて耐えられなくなった蓮が求めるのを操が首を振って退ける。

 達する寸前のところで、操は蓮を許さないのだ。

 もう少し、その(なま)めかしい様を楽しみたかった。

 ああ……

 蓮の脣から甘く吐息が零れ落ちる。

 操……

 譫言(うわごと)のように何度も蓮は操を呼んだ。

 ゆっくりと()けて泉のように(あふ)れて行く蓮を、操は深い想いを込めてその腕に抱き、やがてふたりは共に頂きを極めた。

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