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三國志抄 戀〜lian〜  作者: 月
19/138

十八.

「まだ起き上がるのは良くない。無理をするんじゃないよ」

 婆の声に慌てて蓮は涙を拭い、振り返った。

 (うなず)いたまなざしに目眩(めまい)が走る。

「ほれごらん。大事にせぬと熱が上がるぞえ」

 婆は蓮の手を取ると、牀へと導いた。

 涙に濡れた瞳が哀れで、あれは曹孟徳の愛執だと、口を出してしまいそうだった。

 蓮のためだけではない。彼の弁護もしたかったのだ。

 要らぬ世話には違いないが……

 婆は思い悩む。

「良いか、蓮。曹孟徳は情の人だ。あの激情に翻弄(ほんろう)されては、お前も戸惑うばかりだろう。だが、それに立ち向かわねばならないよ」

 牀に腰掛けた蓮の膝に、婆はその白い手を取って重ね、諭した。

「いいかい。嫌なら嫌で、もっと自らの意を持って、それを伝えねば。お前のような子が運命に逆らうには、相手を殺すくらいの気概を持たねばならないよ」

 不意に、憎ければ自分を殺せと言った曹孟徳が蘇る。

 もしかしたらそれは、今言われているのと同じ事なのだろうか?

 だが、運命に逆らうとはどういう事なのだろう。

 自分の意思とは?

 そして、人に伝えるとはいったい……

 蓮には良く解らない事ばかりだった。

 じっと考え込む瞳の中に、いくつもの光が(またた)いては消えた。

 ――そういえば。

 ふと、蓮は思う。

 いつから自分は、あの嫌な夢を見なくなったのだろう。

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