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三國志抄 戀〜lian〜  作者: 月
135/138

百三十四.

 その策に対し、荀公達は僅かに見開いたまなざしでしばし嘉を見つめ、それから静かに首を振った。

「その進言は、軍師である私の役目です」

 物静かな口調でありながら、揺るがぬ(しん)があった。

 汚れ役は自分ひとりで充分だと思っているのだろう。

 決して譲らぬ気構えを頬に(たた)えながら、返されて来るであろう言葉を静かに待ち受けていた。

 傍らの嘉が口を開こうとするのを察し、すっと操はそれを制した。

「ふたりともそう案ずるな。あいにく曹操の悪評は天下に知れ渡っていてな。いまさら城のひとつやふたつ、水に沈めたところでどうなとなるまい」

 ここは自らが血に染めた因縁の土地だ。

 人々の憎しみは深く、曹操と()う侵略者を受け入れることはないだろう。

 だが、それでも操はこの地を統べる。

 統べてみせると思っていた。


 ふたりの献策を受け入れ、操は呂布の立て籠もる城を水攻めにした。

 その戦が終結を見せるのは、それから一ヶ月ほど後の事となる。

 呂布は、それらしい対策も講じぬまま、ただ酒で日々を過ごし、配下の離叛(りはん)を招いた。

 縛されて突き出された彼の処遇に曹操は迷いを見せたが、曹軍と合流していた劉備の言葉で絞首に処したと伝えられる。


 冷たい冬の風が吹きつけるなか、操はひっそりと蓮の死の知らせを受け取った。

 それはとても寒い朝で、庭には真っ白な雪が降り積もっていたと云う。


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