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三國志抄 戀〜lian〜  作者: 月
127/138

百二十六.

 雨……。

 雨を最初に認識したのはいつの事だろう。

 幼いころから天より降り落ちる水滴を眺めて来たであろうに、それを特に不思議とも思わず、極当たり前の事として受け入れて来た。

 成長するにつれ、雨だと外出に不自由だとか、それに左右される石高(こくだか)を気にしたり、雨を眺めて思う事も様々に移り変わっては来たが、こんな心持ちで空を見上げる日が来るとは想像もしなかった。

 秋の雨は冷たい。

 ひと雨ひと雨季節が深まって行くとは言うけれど、今年の雨は降るほどに冷たく肌身に染みた。

 病の身であれば、なおさらにこたえるだろうと、すっかり下がった気温に、かの少年を思う。

 その肌を温め、(まも)る腕は今は遠い。

 自分にこの都を任せ、その人は戦場へと旅立った。

 いつもと同じ、揺るぎない信頼で留守を託しながら、その胸中に揺れていた想いから(イク)は瞳を反らした。

 見たくはなかった。

 君の想いも。

 その結末も。

 だけど雨が降るたびに、彧の心はゆらゆらと揺れる。

 季節が駆け足で冬へと近付いて行くほどに、その白い(かお)が脳裏に浮かんでは消えた。

 ――やはり難渋しておいでだろう。

 彧はひとつ溜め息をつくと、静かに席を立った。

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