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044 バーベキュー

 九月も残りあと一日。

 無事に期末テストを終えることができた僕らに、またこの異世界での『通常の日々』が再開される。

 HRで担任の楠先生から配られたのは来月からの基本スケジュールだ。

 僕ら生徒はそれに目を通し、この半年間と代わり映えの無い内容に深く溜息を吐いてしまう。


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【伊ノ浦学園高等部・中等部合同/十月の日程】

月/異世界調査(ABC班)、食料調達(DEF班)

火/ライフライン点検・整備・開発・実験(STUV班)

水/異世界調査(GHI班)、食料調達(JKL班)

木/畜産、養殖、酪農、農作物採取及び育成、調理、食料貯蔵(WXYZ班)

金/異世界調査(MNO班)、食料調達(PQR班)

土/週次授業(第一週『国』『地』『生』、第二週『数』『公』『保』、第三週『英』『物』『音』、第四週『体』『化』『美』『家』)

日/終日休暇

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 九月に配られた日程表は途中から改変され、僕らは二週間近く机にかじり付くこととなったが、こちらが異世界に来てからの基本的な日程表となる。

 四月に転移して、五月にはもうこういった日程表が作れるあたり、伊ノ浦理事長は相当な腕の持ち主だということは誰もが納得してしまったところなんだけど……。


 まず、AからZまでに分けられた班。

 異世界調査班と食料調達班には『戦闘職』と『魔法職』がバランスよく分配されている。

 それぞれの班には五名前後の人間が分配され、僕はこの中でA班に配属されている。

 学園の外部に出て活動するこれらの班は基本的にAからRの十八組、つまり約九十名の選抜されたメンバーのみに許された行動だ。

 一歩外に出れば命を落としかねない状況であり、この選抜を決めることが伊ノ浦理事長にとって、最も身も心も削る作業であろう。


 そして残りのSからZまでの班。

 こちらも基本的にはメンバーが決まっているが、それぞれ入れ替わることも多い『技術職』と呼ばれる非戦闘系の能力の人達だ。

 学園の外に出ることは緊急時以外にはほとんど無いが、僕らがこの異世界を生き抜くためには最も必要な能力を持つメンバーが数多く在籍する。

 特にその中でも水を生み出すことのできる『水魔士ウォータークラン』の友原恵理子ともはらえりこ、火を生み出すことのできる『炎術士フレイムマスター』の三浦美香子みうらみかこ

 そして電気を起こすことのできる『雷瞑士サンダーブラスター』の木田武則きだたけのりの三名は、この学園のライフラインの中核を担っているメンバーでもある。

 彼らがいることによって喉を潤し、寒さから身を守り、調理や電子機器、果てには畜産や酪農など全ての分野において、人が生きるために必要な様々な要因をカバーすることが出来ているのだ。

 それら技術職に所属しているのは約三百名ほどの人間である。

 残りの約六百名の能力者は無所属の人間で、まだレベルが低い者、能力の成長スピードが遅い者、もしくは三つの職のどれにも当てはまらない者など様々だが、理事長は彼らにも個別に指示を出しているみたいなので、一体いつ寝ているのか疑ってしまうほどなのだが――。


「明日から十月が始まります。皆さん、期末テストが終わったばかりで疲れているでしょうから、今日はこのHRが終わったら自由時間と致します。明日は火曜日から十月がスタートしますので、S、T、U、Vの班に所属しているメンバーはスケジュール通り、ライフラインの点検・整備・開発・実験を――」


「やったあぁぁーー! 無茶して勉強した甲斐があったあぁぁーー! 今日はもうこれで休みだし、皆屋上で昼バーベキューやろうぜ! 昼キュー!」


「……木田君。貴方は技術職のS班に所属でしょう? 今日は早く休んで重要な明日の業務に備えて下さいね」


「うげっ……! マジで言ってるんですか楠先生……! 俺のこの、勉強地獄で溜りに溜ったストレスはどこで発散すれば良いんスかああぁぁ!」


 ガッツポーズで椅子から立ち上がった武則が、そのままの格好で机にうな垂れてしまう。

 二人のやりとりでクラス中が大爆笑だが、楠先生の笑顔を見る限り今のは冗談で言ったのだと分かる。

 泣き喚く武則をそのままにし、HRは無事に終了。今日はもう夜の就寝時間までは自由時間となった。


「ねーねー、どうする優斗? 武則の言う通り、最近私達バーベキューやってなくない?」


「わ、私もたまには自分でお野菜焼いたりして皆で食べたい、かも……」


 早速里香と瞳が僕に意見を求めてくる。

 僕は辺りを見回し、意外なことに大人しく椅子に座っている大輝のほうを振り返って声を掛けた。


「大輝は? どうするの?」


「うぅ……。俺はパス……。今朝から腹が痛くて、死にそう……」


「そりゃ、そうでしょうよ。あんた昨日の夜の給食で四杯もお代わりしたんだから。最後の一杯、私がもらおうと狙ってたのに」


「うっせぇよ……。腹痛いから話しかけるな里香……。ああ、せっかくの休みが腹イタを耐えるだけで終わってしまう……」


 そのままお腹を押さえてうな垂れる大輝。

 本当に苦しそうなので、今日はそっとしておいてあげよう……。

 武則の席のほうを向くと、そこにはすでに彼はおらず。

 もしかしたら楠先生の冗談を真に受けて、ショックを受けてどこかに行ってしまったのだろうか……。


「あー、武則のことも放っておいたら良いんじゃない? 明日の仕事が大変なのは本当の事だし、あいつもあいつで少しは反省して、休みの日くらいはゆっくりしてたほうが良いと思うよ」


「木田くん、いつもはしゃいでいて、全然休んでいる姿を見たことがないもんね……。里香もそうだけど……」


「私? 私はちゃんと動くときは動く、休むときは休むでメリハリ付けてやってるよ。瞳のほうこそ勉強ばかりやってて、普段から全然休んでないじゃん」


「そ、そんなこと無いと思うけど……」


 里香にそう言われ、身を小さくして顔を隠してしまう瞳。

 確かに瞳はいつも勉強しているイメージがあるし、逆に里香はいつも元気に僕らを引っ張って行ってくれている気がする。

 やはり今日くらいはあと何人か誘って、屋上でバーベキューをやって、明日に向けて活力を注いでおいたほうが良いのかもしれない。


「瞳。技術職の中で武則以外のSからV班のメンバーを教えてくれるかな。その中で時間が合う人達と一緒に屋上でバーベキューをやろう」


「あ、うん……。ええとね――」


「それなら家庭科の見沼先生に引率してもらって、二年一組の大森先輩にも声を掛けちゃおうよ」


 瞳がこめかみを押さえてメンバーをレポート用紙に書きだしている間、里香が二人の能力者の名を挙げた。

 家庭科教師の見沼陽子みぬまようこは『栄養士ダイエティシャン』の能力者で、二年一組の大森泰三は確か実家が地元でも有名な料理店だった気がする。当然、能力は『調理士シェフ』だ。


「うっひょー! その二人が来てくれたら、本格的なバーベキューができそうじゃない……! あ、やばい、もう涎が……」



 里香の言葉に僕と瞳は噴き出してしまった。

 ちょうど瞳がメンバーを書きだしてくれたので、これから三人で手分けして彼らに声を掛けてみよう。


 きっと有意義なバーベキューが出来るに違いない。




見沼陽子みぬまようこ

伊ノ浦学園の家庭科教師。

特段太ってはいないのだが、本人は常に体重を気にしておりダイエット食の検証に励んでいる。


大森泰三おおもりたいぞう

私立伊ノ浦学園二年一組の生徒。

実家は地元で有名な料理店を営んでおり、昼時ともなれば長蛇の列を成すほどである。


〇『健康管理』

栄養士ダイエティシャンのユニークスキル。

消費AP無しで空腹度が一定時間減少し、MP最大値を減少することにより栄養状態を長期間一定に保つ。


〇『調理』

調理士シェフのユニークスキル。

食材と調味料さえあれば瞬く間に舌がとろけ落ちるほどの美味な料理を作成できる。

しかし消費APとMPが全量であるがゆえに連発は出来ないという制限がある。

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