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003 解析

 学園の外に蠢く猛獣達。

 校内放送ではひたすら同じ文言を繰り返している。

 『決して教室から出るな』。

 『教師は生徒の安全を第一に考えろ』。

 もしかしたら自衛隊や警察が救助に来てくれるのだろうか。

 未だになにも説明を受けないまま、僕らは教室に閉じこもったままだった。


「どう? 優斗くん」


「はい。全員の『解析』が終わりました」


 クラスメイト全員と目を合わせ、僕は『解析』のスキルを使用した。

 楠先生と合わせ、全29名。

 その結果を簡単にメモし、楠先生に提出する。


------

JOB/SKILL

解析士アナライザー/『解析』

槍撃士ランサー/『跳躍』

算術士アリスメティック/『暗記』

重戦士ウォーリア/『咆哮』

軽戦士ソルジャー/『連続攻撃』

治癒士キュアベル/『治癒』

斧破士ディザスター/『重撃』

槌冥士メルティア/『気絶攻撃』

鎖錬士ストリクター/『拘束』

10細剣士スライサー/『急所攻撃』

11聖騎士ホーリーナイト/『回復』

12刀剣士ソードマスター/『刀剣防御』

13操魔士デビルワーカー/『操作』

14魔法戦士マジックウォーリア/『魔法剣』

15召喚士サモナー/『召喚』

16調教士テイマー/『調教』

17錬金術士アルケミスト/『錬金』

18死霊術士レイス/『憑依』

19整備士メカニック/『整備』

20命名士ディズィ/『命名』

21調理士シェフ/『調理』

22栄養士ダイエティシャン/『健康管理』

23闇黒士ダークネス/『AP変換』

24光命士グライマー/『HP変換』

25木療士ウッドリーター/『MP回復』

26気孔士スティグマ/『AP回復』

27雷瞑士サンダーブラスター/『詠唱強化』

28風禄士ウインドマジシャン/『詠唱弱化』

29地鳴士アースピーラー/『詠唱持続』

------


「うわ……。見事に全員バラバラだな……」


 先生に手渡したメモを覗き見る大輝。


「本当ね……。でももしかしたら、同じJOBは存在しないのかもしれないわね」


「え? じゃあ他のクラスの生徒や先生達も全員違うんですか?」


 楠先生の呟きに反応する里香。

 もしもそうだとしたら、膨大な数のJOBやSKILLが存在することになる。

 いや、それよりも――。


「それはまだ分からないわ。でも、もしもそうだとしたらステータスを『見る』ことができるのは――」


 皆の視線が僕に注がれる。

 そう。

 もしも全員、JOBやSKILLが違うのであれば。

 ステータスを『見る』ことができるのは、僕だけなのかもしれないのだ。


「すっげえな優斗! なんかお前だけ特別な力を持ってるって感じじゃんかよ!」


「でも『解析』ができるだけかもしれないんだよ……? それってまったく戦力にならないんじゃ……」


 元々運動が得意ではない僕は、大輝や里香のように立ち回ることなど無理だ。

 あんな化物みたいな獣に襲われたらひとたまりもない。


「とにかく」


 ぱんっと軽く手を叩いた楠先生。

 ホームルームなどで生徒らが騒いだときにつかう先生の癖のようなものだ。


「このまま教室に立て篭っていても状況の把握ができないわ。各教室を見回りながら、理事長室まで向かおうと思うのだけれど」


「その為の『護衛』が必要ってことですね楠先生! もちろん俺は行きますよ!」


「私も行きます! 一体なにが起きているのか知りたいですし!」


 即座に手を上げる大輝と里香。

 楠先生が僕に全員を『解析』させたのにはこういった狙いもあったのだろう。

 しかしクラス全員で一緒に行動をするのには無理がある。

 各クラスを見回って理事長室に向かうだけならば、なるべく人数は少ないほうが良い。


「あ、あの……。私も……」


「瞳……?」


 おずおずと手を上げる瞳。

 僕は無意識のうちに彼女のステータスを眺めてしまう。


------

NAME ヒトミ

LV 1

HP 5/5

AP 0/0

MP 12/12

ARTS -

MAGIC -

SKILL 『暗記』

------


そしていつものように瞬きをする。


------

NAME ヒトミ

JOB 算術士アリスメティック

WEAPON(R) -

WEAPON(L) -

BODY 私立伊ノ浦学園の制服

WAIST 私立伊ノ浦学園の制服

SHOES 白のスニーカー

ACCESSORIES 黒縁めがね

------


 彼女が『算術士アリスメティック』というJOBであるのは、恐らく彼女が理系の秀才だからなのだろう。

 今までの『解析』の傾向から、個々のJOBには所属している部活動や得意科目、性格や趣味などが関係していることが分かってきた。

 確かに僕は人間観察が趣味とも言える。

 だからこその『解析士アナライザー』という訳なのだ。


「分かったわ。じゃあ、理事長室に向かうのは私と大友くん、寺島さん、那美木さん。それと、藍田くんも」


「え? 僕もですか?」


 急に指名されて驚く僕。

 教室の外にはさっきのような獣がうじゃうじゃと徘徊しているかもしれないのだ。

 正直言うと、教室で他のクラスメイトと待機していたい。


「当然でしょう! 優斗しかステータスが見れないんだよ?」


「そ、そうだけど……」


「お前びびってんのか? さっきは『僕が里香を守る~!』なんて言っていたくせに」


「い、言ってないだろ! そんなこと!」


 変な声真似をした大輝にクラスの皆が笑い出す。

 僕は顔が真っ赤になりながら必死に反論する。


「藍田くん。貴方がいてくれれば、大友くんや寺島さん、那美木さんが怪我をしたときにすぐに気付けるでしょう? そしたら私がすぐに『治癒』を使えるし、最も安全に理事長室に向かうことが出来ると思うの」


 楠先生に懇願され、余計に顔が赤くなる僕。

 何故だか咄嗟に目を逸らしてしまう。


「もう……優斗ったら。鼻の下を伸ばしちゃって……」


「里香!」


「ゆ、優斗くんって楠先生のこと……」


「ち、違うよ! もう! 行くから! 行きますから!」


 里香と瞳にまでからかわれて、つい叫んでしまった僕。

 大輝はおなかを抱えて笑っているし。


「じゃあ決まりね。みんなは先生たちが戻ってくるまで決して教室から出たら駄目よ。もしもさっきみたいに潜り込んできた獣がいたら、皆の『力』でなんとか持ちこたえてちょうだい」


 楠先生の指示に素直に返事をしたクラスメイト達。

 怖いのは皆一緒だ。

 だからこそ楠先生は、クラスメイト一人一人が戦える『力』を僕に託させたのだ。

 自分だけではなく、仲間も守れる力を。

 力を合わせれば、この窮地も乗り切れると信じて――。


 

 皆に手を振り、僕らは教室を後にする。


















〇『暗記』

算術士アリスメティックのユニークスキル。

一度見たもの、聞いたものを即座に暗記できる。

レベルアップにより暗記できる項目が増える。

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