035 ダンジョンの最深部
『土竜獣のダンジョン:地下3階』
幾度となくグランドビーストの集団に襲われながら、僕らはダンジョンの下層へとただひたすらに進んでいく。
幸いにもこの狭い通路では、前方と後方さえ注意していれば難なく奴らを撃破して進むことができた。
しかし問題は愛梨沙のMP残量だ。
常に光魔法でダンジョンを照らし続けているのだから、当然数値が減っていく。
MP回復薬も多めに持ってきているとはいえ、数には限度があった。
一体このダンジョンはどこまで続いているのだろう。
そして彩芽と御神さんは、どこまで深く潜っていったのだろう。
「真柴さん。あとどれくらいで追いつきそうか分かりますか?」
皆の顔にも疲労の色が見え始めている。
そろそろこのダンジョンに潜ってから1時間が経過しようとしていた。
時刻は午後4時30分を回ったところだ。
このままでは巣で眠っているほかのグランドビースト達が一斉に起きだしてしまう。
「ふむ……。御神たちもこのダンジョンを移動し続けているからな……。しかし不思議だな。何故あいつらは移動速度が変わらないんだ? 俺達はちょっと進めば、すぐに土竜獣どもに見つかって足止めを喰らっちまうっていうのに」
首を傾げながらそう言う真柴さん。
移動速度が変わらない――?
「おい、優斗……。足元を見てみろよ。これって……」
大輝に言われ、僕は足元に視線を落とす。
そこには目を凝らして見なければ気付かないほどの、わずかな血痕が残っていた。
「ゆ、優斗! あっちにもずっと続いてるよ!」
里香が指差す先にも所々で血痕が続いていた。
もしかしたら、ここに来るまでの間にも落ちていたのかもしれない――。
「……ということは、彩芽ちゃんたちは既にグランドビーストに捕まっちゃってるってこと……?」
瞳が震えた声でそう言う。
僕らの間に重苦しい雰囲気が流れる。
「だからやめておこうって言ったんだよぅ! もう食べられちゃってるかもしれないんだったら、これ以上深く潜ったって仕方ないじゃんー!」
僕らの沈黙を破る愛梨沙。
しかし僕は――。
「……まだそうと決まった訳じゃない。真柴さん。貴方の『追跡』は死者にも効果を発揮するスキルですか?」
「え? ……いいや、あくまで生きている対象のみに使用できるはずだが」
「ということは、まだ彩芽達は生きているってことだ。確かこの巣には『女王ビースト』がいるかもしれないって理事長が言ってたよね。ということは――」
「……女王のための食料として、彩芽ちゃんと御神さんは連れて行かれた……?」
僕に続くように瞳がそう答える。
僕は何も言わずに首を縦に振った。
「そうか……。それだったら移動速度が変わらねぇ訳だな。落ちている血痕は、奴らに捕まる際に抵抗したときの傷って訳か」
大輝が納得したようにそう答える。
「じ、じゃあ早く助けないとヤバイじゃん……! 傷のほうも心配だけど、食べられちゃったらどうしようもないし……!」
里香の言葉に皆が頷く。
生きている可能性があると分かった愛梨沙も、これ以上はわがままを言わないようだった。
相手が容疑者だったとしても、助けたい気持ちはみんな一緒なのだろう。
何一つ真相が分からないまま、魔獣の腹の中なんて真っ平ごめんだ――。
「行こう! なるべく効率良くグランドビーストを撃破して、彩芽たちに追いつこう!」
「おうよ!」
僕の言葉に皆が掛け声を上げてくれる。
そして僕らは更にダンジョンの奥深くへと突き進んでいった。
◇
『土竜獣のダンジョン:地下5階』
時刻は午後6時。
もうすぐ日が落ちる時間だ。
しかし、ここまで来て引き返すわけにはいかない――。
どうにかして、彩芽達を――。
「……うん? おい、御神達の進行が止まったぞ」
「え?」
ふいに真柴さんが皆に向き、そう答える。
進行が止まったということは――。
「この一つ下の階だ。どうする? もしかしたらこのダンジョンの最深部かもしれないぞ」
「最深部ってことは……女王ビーストが……? ひいぃ!」
急に悲鳴を上げる愛梨沙。
しかしもう、僕は決心を固めている。
「……みんな。僕は彩芽と御神さんを助けたい。そして真相を知りたい。どうして僕らに『催眠』をかけて行方不明者の記憶を封印したのか……。行方不明者の2人は無事なのか……」
一人一人としっかり目を合わせ、僕は語る。
ここから先は過酷な戦いが待っていると確信できる。
もしかしたら、誰かが命を落とすかもしれない――。
だから、万が一誰も僕についてきてくれなかったとしても、僕は――。
「当たり前だろう。俺だって助けたいに決まってらぁ」
「私もよ。真相も知りたいし、どうせ女王ビーストは退治しなくちゃいけないんだし」
大輝と里香が僕に向かいそう言ってくれる。
「わ、私だってぇ! やるときはやるんだからね!」
「優斗くん。もう私達の心は一つだよ。これは優斗くんだけじゃなくて、私達全員の問題だもの」
愛梨沙と瞳までもが、僕の意見に同調してくれる。
「はっはっは! いいねぇ、青春って素晴らしいよなぁ! こんなおじさんでも学生諸君の盾くらいにはなってやれるぞ! こう見えても昔は警備会社に勤めてたんだ! おじさんを甘く見るなよ!」
そう言い豪快に笑った真柴さん。
みんな本当は怖いはずなのに、それでも力を合わせて窮地を乗り切ろうとしてくれている――。
「真柴さんは無理しないほうがいいんじゃね? 盾役は俺と里香ですっからさ」
「なにを!? 若いモンがこれだけ頑張ろうとしているときに、俺だって少しは戦闘の役に立つところをだな――」
「はいはい、いいからいいから。真柴さんは十分役に立ってるから。今までどおり中衛から薬で回復してくれたり、隙を見て攻撃してくれればありがたいから」
大輝と里香に宥められている真柴さん。
それを見て苦笑する僕ら。
このメンバーだったら、きっとこの困難を乗り切れる――。
そして全員揃って、必ず学園に帰還するんだ――。
――僕らは意を決し、最深部へと続く道をまっすぐに進んでいった。
【行方不明者捜査班】
1藍田優斗
NAME ユウト
LV 50
HP 456/456
AP 298/298
MP 0/0
ARTS 『分解 LV.5』『結合 LV.8』『視覚効果 LV.5』
MAGIC -
SKILL 『解析』
JOB 解析士
WEAPON(R) 鋭鉄棒
WEAPON(L) ---
BODY 海鯔獣の鎧
WAIST 海鯔獣の腰鎧
SHOES 護謨木の軽靴
ACCESSORIES 水盟石の腕輪
2大友大輝
NAME ダイキ
LV 54
HP 816/816
AP 520/520
MP 0/0
ARTS 『ぶん回し LV.31』『ぶっ飛ばし LV.27』『剛殺両断 LV.10』
MAGIC -
SKILL 『咆哮』
JOB 重戦士
WEAPON(W) 地棘竜の剛牙剣
BODY 地棘竜の棘皮鎧
WAIST 地棘竜の棘皮腰鎧
SHOES 地棘竜の棘皮具足
ACCESSORIES 水盟石の腕輪
3寺島里香
NAME リカ
LV 49
HP 695/695
AP 355/355
MP 0/0
ARTS 『閃光の槍 LV.21』『演武 LV.20』『五月雨突き LV.15』
MAGIC -
SKILL 『跳躍』
JOB 槍撃士
WEAPON(W) 千年木の長槍
BODY 飛翔燕の羽鎧
WAIST 飛翔燕の羽腰鎧
SHOES 飛翔燕の翼皮靴
ACCESSORIES 炎硝石の指輪
4那美木瞳
NAME ヒトミ
LV 41
HP 255/255
AP 0/0
MP 450/450
ARTS -
MAGIC 『四則演算 LV.31』『素因数分解 LV.29』『微分積分 LV.19』
SKILL 『暗記』
JOB 算術士
WEAPON(R) 神楽妙木の杖
WEAPON(L) -
BODY 封魔双蘭(上)
WAIST 封魔双蘭(下)
SHOES 護謨木の軽靴
ACCESSORIES 土慧石の首輪
5鏡愛梨沙
NAME アリス
LV 44
HP 212/212
AP 0/0
MP 413/413
ARTS -
MAGIC 『眩い光 LV.25』『天の裁き LV.22』『光子砲 LV.20』
SKILL 『HP変換』
JOB 光命士
WEAPON(R) -
WEAPON(L) 原始の大杖
BODY 退魔愁獄(上)
WAIST 退魔愁獄(下)
SHOES 護謨木の軽靴
ACCESSORIES 炎硝石の指輪
6真柴信二
NAME シンジ
LV 47
HP 452/452
AP 125/125
MP 98/98
ARTS 『追尾攻撃 LV.9』
MAGIC 『警報 LV.7』
SKILL 『追跡』
JOB 追跡士
WEAPON(R) 警鉄棒
WEAPON(L) -
BODY 砂暴鮫の軽鎧
WAIST 砂暴鮫の軽腰鎧
SHOES 土竜の革靴
ACCESSORIES 身代わりの十字架