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022 出発

 

 夕方の教室。

 明日は早朝から探索に出発するということで、クラスメイト全員で送迎会を開いてくれた。

 僕のクラスからは、僕と大輝と里香が学園外へと探索に出掛ける。

 中には泣いてしまった女子生徒もいたが、僕と大輝は笑ってみせた。

 里香にいたっては机に上ってお立ち台状態になり、胸を張って演説もどきのようなことをしている。

 皆の不安を吹き飛ばすために、あえて笑いを取りにいっているのだ。


「いいぞ里香! もっとパンツ見せろ!」


「うわっ! なに下から覗いてんのよ! このエロ武則ー!」


 慌ててスカートを押さえ、そのまま武則の頭に踵落としを決めた里香。


「いてぇだろこのやろう! 頭から漏電したらどうすんだよ!」


 頭を抑え涙目で訴える武則。

 武則も武則で皆の笑いを誘おうと躍起になっている。


「……はぁ。楠先生はまた緊急職員会議でいないし、今日はこのままお開きで就寝時間だな」


 騒ぎ疲れた大輝は僕の横で教室の壁に寄りかかる。


「そうだね。明日も早いし、就寝時間になったら楠先生も見回りにくるだろうし。早めに寝ておこうか。……寝られれば、だけど」


 教室の中央で馬鹿騒ぎをしているクラスメイトに視線を向け苦笑する僕。


「今日の収穫もアクセサリーだけだったからなぁ。優斗と里香の大収穫とはえらい違いだったし」


「それは仕方ないよ。奈緒美先輩もまだ『紋章士エンブレイマー』としての覚醒も遅いみたいだったし……。それに学園にある素材で作った武具は、強化してもあまり意味がなさそうなことも言ってたんでしょ?」


 今日の昼に大輝と瞳は奈緒美先輩と未来さんに装備品を受け取りに向かったのだが。

 未だ『紋章士エンブレイマー』としての力に覚醒しきれていなかった奈緒美先輩からは、何も探索用の装備を得ることができず、未来さんから12人分のアクセサリーを預かっただけに留まったようだった。


「ああ。奈緒美先輩の能力は、学園外から持ち帰った武具素材に、新たな力を付加する能力みたいだからな。俺達が探索から帰ってきて、たんまりと素材を集めてきてからが本番って感じなんだろうな」


 そう答えた武則はペットボトルに入った水を一気に飲み干した。

 そして軽く息を吐き、騒いでいるクラスメイトに身体を向ける。


「おーいお前ら! もうそろそろお開きだぞ! 明日は4時起きだからな! 当然、お前らもその時間に起きて俺らを見送るんだからな!」


 大輝の言葉にクラスメイトが一同に「えー?」という返事を返す。


「『えー?』、じゃねぇよ! 俺達は一蓮托生! 分かったらさっさと机を片付けるぞ! 里香もストリップは止めてさっさと降りろよ!」


「んなっ!? 誰がストリップよ!! しとらんわそんなこと!!」


 顔を真っ赤にしながら叫びだす里香。

 クラスメイトが爆笑の渦に包まれる。

 僕は苦笑しながら大輝の後姿に視線を移し、思案する。


(やっぱり大輝はリーダーに向いているな……。皆をひとつにまとめることもできるし……)


 里香だって、なんだかんだ言いながら大輝のことを信頼している。

 この2人だったら他の食料調達班のメンバーとも上手くやれるだろうし、なにより楠先生もいるのだ。

 必ず食料を持ち帰ってきてくれるはず――。


(……後は、僕次第、だな)


 大輝を真似し、ペットボトルに入った水を一気に飲み干した僕。

 この謎に包まれた異世界の調査――。

 ここはいったい何処なのか。

 あの魔獣以外にも危険な生物は存在するのか。

 言葉の通じる現地人は?

 元の世界に戻れる方法は?

 挙げていけばきりがないほど、やることは山ほどある。


 僕は立ち上がり、みんなの元へと駆け寄る。

 明日、僕らはこの学園を出発する。

 

 みんなの期待を一身に背負って――。





 まだ夜が明ける前の午前4時半。

 僕と大輝、里香はクラスメイトに見送られ学園の正門へと向かった。


「来ましたね」


 そこには数名の探索メンバーと伊ノ浦理事長が待機していた。

 僕はぐるりと見回し、一人一人を『解析』する。

 きちんと探索メンバーは揃っているようだ。

 僕は安堵の溜息を吐く。


「グランドビーストはまだこの時間は眠っています。しかし、十分気をつけてくださいね。ここから先は、我々からしてみたら未開の地――。どんな危険が潜んでいるのか分かりません」


 理事長の言葉に、皆神妙な面持ちで首を縦に振る。


「『食料調達班』は大友君をリーダーとし、学園近辺での食料の調達、及び無理のない範囲でグランドビーストの撃破を行ってください。決して深追いはせず、奴らの巣を発見したら踏み込まないように注意してください」


「は、はい! 分かりました!」


 緊張した声でそう返事をした大輝。

 食料調達班のメンバーも十分に訓練を積み、レベルが上がってはいるが、グランドビーストの大群に襲われたらひとたまりもないだろう。

 一体どれくらいの数が学園近辺に潜んでいるか分からないのだ。

 ある程度の情報が掴めたら、今後の対策は理事長が考えてくれる。


「それと、藍田君」


「は、はい!」


 急に名前を呼ばれ、大輝と同じように緊張した声で返事をする僕。


「君達『異世界調査班』の任務は、学園周囲20kmまでの地形の状況、建造物の有無、魔獣の生息分布の調査となります。しかし、危険を感じたらすぐに帰還してください。正直に言って、何が起こるかまったく予測ができません。誰一人、欠けることのないように、万全の注意を払ってください」


「……はい。全力を尽くします」


 今一瞬、理事長の声が震えたのが分かった。

 彼も戦っているのだ。

 この学園の責任者として、生徒や教師らを危険な地へ向かわせなければならないことと――。


「それでは――」


 理事長の言葉により、補強された正門が開かれていく。

 

 ここから先が、僕らの、本当の『サバイバル』が待っている――。



 ――僕は大きく唾を飲み込み、見たこともない世界へと足を踏みこんでいった。

















  

【異世界調査班】


藍田優斗あおたゆうと

NAME ユウト

LV 42

HP 384/384

AP 212/212

MP 0/0

ARTS 『分解 LV.1』『結合 LV.1』『視覚効果 LV.1』

MAGIC -

SKILL 『解析』

JOB 解析士アナライザー

WEAPON(R) 鉄棒

WEAPON(L) ---

BODY 軽鉄鎧

WAIST 軽鉄腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


日高澪ひだかみお

NAME ミオ

LV 10

HP 125/125

AP 85/85

MP 0/0

ARTS 『回転斬り LV.2』『斬り返し LV.3』

MAGIC -

SKILL 『応援』

JOB 姫騎士プリンセスナイト

WEAPON(R) 土竜の爪剣

WEAPON(L) -

BODY 重鉄鎧

WAIST 重鉄腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


看鳥みとりやよい

NAME ヤヨイ

LV 12

HP 146/146

AP 55/55

MP 20/20

ARTS 『暗黒の裁き LV.3』

MAGIC 『暗黒の宴 LV.2』

SKILL 『吸血』

JOB 魔剣士ダークソルジャー

WEAPON(R) 軽鉄剣

WEAPON(L) -

BODY 土竜の皮鎧

WAIST 重鉄腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


小沼透こぬまとおる

NAME トオル

LV 15

HP 188/188

AP 105/105

MP 0/0

ARTS 『二度撃ち LV.2』『跳弾 LV.1』

MAGIC -

SKILL 『必中』

JOB 銃剣士ガンブレイズ

WEAPON(R) -

WEAPON(L) 鉄棒

BODY 軽鉄鎧

WAIST 軽鉄腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


藍田楓あおたかえで

NAME カエデ

LV 8

HP 45/45

AP 22/22

MP 28/28

ARTS 『発声練習 LV.5』

MAGIC 『誘惑の歌 LV.3』

SKILL 『歌姫』

JOB 声奏士シンガー

WEAPON(R) 木杖

WEAPON(L) -

BODY 木鎧

WAIST 木腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


来栖玲人くるすれいじ

NAME レイジ

LV 15

HP 88/88

AP 0/0

MP 152/152

ARTS -

MAGIC 『凍結 LV.3』『氷柱 LV.4』

SKILL 『詠唱停止』

JOB 氷戟士アイスディザスター

WEAPON(R) 木杖

WEAPON(L) -

BODY 毛皮の法衣

WAIST 毛皮の腰蓑

SHOES 軽皮の靴

ACCESSORIES 身代わりの十字架



【食料調達班】


大友大輝おおともだいき

NAME ダイキ

LV 18

HP 215/215

AP 140/140

MP 0/0

ARTS 『ぶん回し LV.7』『ぶっ飛ばし LV.5』

MAGIC -

SKILL 『咆哮』

JOB 重戦士ウォーリア

WEAPON(W) 重鉄剣

BODY 重鉄鎧

WAIST 重鉄腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


寺島里香てらしまりか

NAME リカ

LV 12

HP 135/135

AP 95/95

MP 0/0

ARTS 『閃光の槍 LV.3』『演武 LV.2』

MAGIC -

SKILL 『跳躍』

JOB 槍撃士ランサー

WEAPON(W) 土竜の爪槍

BODY 軽鉄鎧

WAIST 軽鉄腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


濱田小百合はまださゆり

NAME サユリ

LV 6

HP 32/32

AP 92/92

MP 0/0

ARTS 『捕獲 LV.3』

MAGIC -

SKILL 『罠作成』

JOB 罠嵌士スネイル

WEAPON(R) 木杖

WEAPON(L) -

BODY 木鎧

WAIST 木腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


七瀬美紀ななせみき

NAME ミキ

LV 12

HP 105/105

AP 68/68

MP 0/0

ARTS 『速射 LV.3』『強射 LV.3』

MAGIC -

SKILL 『集中』

JOB 弓絶士アーチャー

WEAPON(W) 木弓

BODY 軽鉄鎧

WAIST 軽鉄腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


九条直継くじょうなおつぐ

NAME ナオツグ

LV 10

HP 85/85

AP 110/110

MP 0/0

ARTS 『痺れ蜂 LV.5』

MAGIC -

SKILL 『麻痺』

JOB 痺針士パラライザー

WEAPON(R) 鉄針

WEAPON(L) -

BODY 木鎧

WAIST 木腰鎧

SHOES 強化皮の具足

ACCESSORIES 身代わりの十字架


楠涼子くすのきりょうこ

NAME リョウコ

LV 13

HP 82/82

AP 0/0

MP 125/125

ARTS -

MAGIC 『応急処置 LV.3』『希望の光 LV.2』

SKILL 『治癒』

JOB 治癒士キュアベル

WEAPON(R) 木杖

WEAPON(L) -

BODY シルクの法衣

WAIST シルクの腰蓑

SHOES 軽皮の靴

ACCESSORIES 身代わりの十字架

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