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018 生産職

「あ、お帰りー」


 教室に戻ると里香が声を掛けてくる。


「あれ? なんかお前、スッキリした顔してね?」


 僕の表情に気付き、大輝がそう茶化してくる。


「優斗くん……。なにかいいことでもあった?」


 瞳が僕にそう質問する。


「ううん、別にそうじゃないんだけど。ちょっと島田先生に話を聞いてもらったというか……」


「お! 島田先生かぁ! やっぱ島田先生は格好良いよな!」


「もう、大輝ったら島田先生の話になると急にテンション上がるんだから。ホモなんじゃないの?」


「ほもっ!?」


 どこから出したのか分からない変な裏声で叫びだした大輝。


「大輝くん……」


「ちょ、瞳! そんな目で俺を見るんじゃない! 違うに決まってんだろうが!」


 後ずさる瞳は僕の背に隠れてしまった。

 僕は腹筋が崩壊しそうになりながら、瞳に声を掛ける。


「これから装備関係の人達に当たろうと思うんだけど、付き合ってくれるかな、瞳」


「え? あ……うん。私で、良かったら……」


 そのまま僕の服を軽く掴む瞳。


「ひーとーみーさーんー?」


「あっ、ち、違うのこれは……! その、あの……!」


 すぐさま里香に指摘され、慌てて僕から離れる瞳。


「くそ……! どうして優斗は主人公キャラ街道まっしぐらで、俺はホモ扱いされにゃならんのじゃ!」


「う、うわぁ! やめろよ大輝! いたい!」


 僕にヘッドロックをかます大輝。


「いやだから……。そういうのがホモ臭いと……」


「なぬー! もうホモはやめてくれー! うわーーーーん!!」


 そう叫んだ大輝は僕の首から腕を離し、泣きながらどこかに行ってしまった。

 ホモ扱いはあまりにも可哀相な気が……。


「それと、里香にもお願いがあるんだ」


「え? わたし?」


 里香を指名すると、何故か目を輝かせてにじり寄ってきた。

 近い……。


「里香は『槍撃士ランサー』だろう? 里香の目から見て、前衛の戦力になりそうな人の候補をあげてもらいたいと思って。本当は大輝にも頼もうと思っていたんだけど……」


「それってまさか、探索メンバーの?」


「うん。僕の『解析』だと大体の情報しか掴めなくて。武則にも協力してもらおうと思っているんだけど、同じ戦闘職や魔法職のひとの意見も聞いた方がいいかなって。嫌……?」


 本当はそんなメンバーを選出するなんて嫌だろう。

 でもきっと里香ならば――。


「ううん、いいよ! まあ、私も立候補するけど、私の目から見て『お! こいつぁスゲェぜ!』みたいな人を選んだら良いのよね?」


 嬉しそうに返事をしてくれた里香。

 きっと大輝も同じような返事をくれたに違いない。

 責任の共有――。

 皆はとっくにそれを理解していたのだ。

 分かっていなかったのは僕だけだったのかもしれない。


「ありがとう。僕はこれから瞳と装備関係の人達に当たってみるから、里香は大輝と候補を絞っておいてくれると助かるよ」


「まっかせなさーい! (……ていうか瞳? 分かっているだろうけど……)」


 急に瞳と内緒話を始めた里香。


「(わ、分かってるよ……。『抜け駆けは無し』でしょ……?)」


「宜しい! じゃあ、頑張ってきなさいな2人とも!」


 そう答えた里香は僕と瞳の背中を軽く押す。

 相変わらず元気のかたまりみたいな子だ。


「じゃあ行こうか、瞳」


「う、うん……!」


 笑顔で見送ってくれた里香に手を振り、僕らは教室を後にする。





「ええと、3年1組の南先輩が『鍛冶士ブラックスミス』、3年5組の奈緒美先輩が『紋章士エンブレイマー』……。それと用務員の明日田場あすたばさんが『洋裁士ドレスメーカー』、同じく用務員の未来みくさんが『細工士ウォーカー』、かな……」


 記憶を呼び覚ます瞳。

 彼女の『暗記』は本当に役立つスキルだ。


「今日中に全員に会って、理事長からの指示として装備の新調をお願いしないといけないんだ。それが終わったら皆の意見を聞いて、異世界調査班と食料調達班のメンバーを選出しなきゃ」


「大変だよね……。でも頑張らなくちゃ。私も一生懸命手伝うよ」


「うん。ありがとう、瞳」


 力強くそう頷く。

 皆の力を合わせれば、きっと――。


「まずは3年の南先輩と奈緒美先輩に頼みに行こう」


「うん」


 階段まで歩いた僕らは、そのまま上階へとあがる。

 廊下のすぐ先にあるのが1組の教室だ。


 僕は緊張した面持ちで扉を開けた――。





 南先輩と奈緒美先輩。

 それに用務員の明日田場さんと未来さんに理事長の言伝が済んだのは夕方前だった。

 みんな自主的にスキルを用い、『解析』した際にはいくらがレベルが上昇していた。

 そして僕の願いも快く了解してくれた。

 学園に残っている素材を使い、2~3日中には12名の探索メンバー用の装備を用意してくれると約束してくれた。

 まだメンバーの選出は済んではいなかったが、ある程度余裕を持って戦闘職、魔法職用の装備を揃えてくれるそうだ。


「はぁ……。結構疲れたね……」


 大きく伸びをした瞳。

 僕も釣られて欠伸をしてしまう。


 僕らは今、中庭のベンチで休憩している。

 そろそろ日が落ちる頃だ。

 今夜にでもメンバーを選出して、明日には理事長に報告したいところだ。


「あ、そうそう。優斗くんが南先輩達を『解析』している最中にまとめてみたの。選出メンバーの参考になればと思って」


 瞳は一枚のレポート用紙を差し出す。

 そこには様々なJOBとSKILLが書かれていた。


------

JOB/SKILL

双剣士ダブルセイバー/『先手必勝』

魔剣士ダークソルジャー/『吸血』

銃剣士ガンブレイズ/『必中』

陰陽士ディバイナー/『同時詠唱』

氷戟士アイスディザスター/『詠唱停止』

弓絶士アーチャー/『集中』

曲芸士ピエロ/『曲芸』

話術士トーカー/『誘導』

詐欺士トリッカー/『詐欺』

罠嵌士スネイル/『罠作成』

投擲士スロウ/『投擲』

整体士ボディウォーカー/『整体』

裁判士ジャッジメント/『裁判』

漫才士コメディアン/『漫才』

拳闘士ファイター/『必殺』

蹴倒士シューター/『飛蹴』

封印士シーラー/『封印』

爆弾士ボマー/『爆発』 

眠誘士スリーパー/『睡眠』

催眠士ヒプノティスト/『催眠』

痺針士パラライザー/『麻痺』

毒制士べノム/『毒撃』

通訳士レンダー/『通訳』

------


「……ホント、色々なJOBがあるよね……」


 レポートに目を落とし溜息を吐く僕。

 しかしジョブ名とスキル名から大体の能力の予想はつくから、非常にありがたい。


「他にもいっぱいあるんだけど、結構珍しいものとかもあるよね」


「うん……。この『裁判士ジャッジメント』とか『漫才士コメディアン』とかも戦力になるのかな……。『爆弾士ボマー』とか危なそうだし、『催眠士ヒプノティスト』なんて怪しすぎるし……」


 しかし先入観は持ってはいけない。

 どんな役に立つ能力が隠されているのか分からないのだから。


「そろそろ戻ろうか、優斗くん」


「うん。そうだね」


 瞳に促されベンチから立ち上がる。

 きっと里香や大輝らもメンバーの候補を揃えてくれているだろう。

 今夜も4人で作戦会議だ――。


 

 僕らは夕焼けを背に教室へと戻った。

















第二節 異世界でのサバイバル生活 fin.

南京一郎みなみきょういちろう

高等部3年1組の男子生徒。

無口だが心の温かい人間らしい。

地元にある『南刀鍛冶店』の長男。


佐々木奈緒美ささきなおみ

高等部3年5組の女子生徒。

落ち着いた性格で教師からは信頼を集めている。

書道部に所属している。


明日田場りょうあすたばりょう

用務員の男性。

男性ながら、趣味は裁縫という変わった人間。

夢は自分の洋服店を開くことらしい。


新庄未来しんじょうみく

用務員の女性。

伊ノ浦学園で用務員のパートの傍ら、地元の雑貨屋でもアルバイトをしている。

趣味はアクセサリー作り。

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