表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/57

016 薬士と姫騎士

「は、初めまして。さっきは驚かせちゃってすいませんでした。私は中等部3年の相羽有紀あいばゆきといいます」


 実験室の椅子から立ち上がり丁寧におじぎをした有紀。


「ふん……。驚いたのはこっちのほうだがな……」


「こら、澪!」


「いっ……! そこは叩いたら痛いだろ! 怪我人だぞ私は!」


 涙目で背中を擦る澪。

 そしてそのまま僕に向き直り、ひとつ咳払いをした。


「こほん、わ、私は同じく中等部3年の日高澪ひだかみおだ」


「通称『くっころ先輩』ね、お兄ちゃん」


「おい藍田! その変なあだ名はやめろと言っているだろう!」


 楓の言葉に噛み付く澪。

 僕は無意識に彼女の目を見てしまう。


------

NAME ミオ

LV 1

HP 12/12

AP 9/9

MP 0/0

ARTS -

MAGIC -

SKILL 『応援』

------


 そしていつものとおりに瞬きをする。


------

NAME ミオ

JOB 姫騎士プリンセスナイト

WEAPON(R) -

WEAPON(L) -

BODY 私立伊ノ浦学園の制服

WAIST 私立伊ノ浦学園の制服

SHOES 黒の革靴

ACCESSORIES ピンクのネックレス

------


(姫騎士……。ということは、なにか理由があってこのJOBなのだろうけど……)


 なぜ彼女が姫騎士プリンセスナイトなのか思いを侍らせていると、有紀が僕に話しかけてきた。


「私に話があるということは、伊ノ浦理事長からの指示があったのですね?」


「え? あ、うん。今度、学園の外にいく探索メンバーの選出を頼まれたんだよ。それにはどうしても薬が必要になってくるし」


「えっ! 外にいくの!? 駄目だよ! 危ないよお兄ちゃん!」


 僕の言葉に楓が驚きの声をあげる。


「そうか……。それで有紀の『薬士メディサー』としての力が必要になったわけか」


「うん。楓の言うとおり、学園の外に行ったら何が起こるか分からないんだ。だから出来る限りの安全対策をとっておきたくて……」


 そう答えながらも不安な気持ちになってくる。

 外にはあの魔獣が何百匹も犇いているのだ。

 きちんと装備を整えて、探索メンバーのレベルも上げておかないと命に関わる事態に直結してしまう。


「……分かりました。では、私はどうしたら……?」


 僕の目を見つめてそう答える有紀。

 僕はそのまま彼女を『解析』する。


------

NAME ユキ

LV 4

HP 21/21

AP 10/10

MP 13/13

ARTS 『薬歴照会 LV.1』

MAGIC 『薬理法 LV.1』

SKILL 『薬調合』

------


「あ……。これは……?」


 僕が彼女を解析した直後、彼女のレベルが上昇したようだ。


「へぇ……。相羽さんはすでにスキルを何度か使用してたんだね」


 レベルが4ということは、かなりの数の薬を調合していたということだ。

 もしかしたらこの実験室に篭って、何度も検証していたのかもしれない。


「はい。私も皆さんのお役に立てればと思って……」


「すごーい有紀先輩! くっころ先輩とは大違い!」


「なんだと! もういっぺん言ってみろ藍田!」


「ひー!」


 凄みを帯びた声で楓を叱責する澪。

 男勝りの性格なのか、この子は……。


「相羽さんが作ってくれた薬って、見せてもらうことってできるかな」


「え? はい。大したものは作れていないのですけれど……」


 そう答えた有紀は実験室の奥へと向かっていった。

 そしてしばらくしてカゴに入った薬を持ってきてくれる。

 僕はそれを受け取り、ひとつずつ実験室のテーブルへと広げていく。


------

HP回復薬(微)×8

HP回復薬(小)×2

MP回復薬(微)×5

AP回復薬(微)×7

解毒薬×12

解痺薬×15

解熱薬×6

------


「へぇ……。やっぱり結構作ってたんだね」


 僕はひとつひとつ手に取り『解析』する。

 MP回復薬やAP回復薬のようなものも作れるのであれば、消費したら回復できるということだ。

 通常ならば、日をまたげば回復することは武則の件でも判明している。

 しかし、それでは到底追いつかないだろう。

 技や魔法を駆使しないと、魔獣に襲われたときに対処ができないかもしれない。


 そして解毒薬や解痺薬の存在。

 これはゲームの世界のように『状態異常に掛かってしまう恐れもある』ということなのだろうか。

 ならばやはり有紀の『薬士メディサー』としての能力は必須だ。

 理事長はここまで予想して、僕に指示を出していたのだろうか……。


「お兄ちゃんは『解析士アナライザー』だから、有紀先輩が作った薬も違いが分かったりするの?」


 僕の様子を興味深々に眺めている楓。


「ああ。実際にどんな効果があるかまでは分からないけど、浮かび上がる表記で大体の予想はできるかな」


「ほう……。全校集会のときも感じたが、優斗の能力とやらは私達とは随分違うのだな」


 澪が腕を組みながら僕らの会話に混ざってくる。

 というか呼び捨て……。

 いちおう僕は1年先輩なんだけど……。

 頭を掻いた僕は、もう一度有紀に振り返る。


「もう2、3日のうちに探索メンバーを選出して出発すると思う。正式な連絡は多分、また全校集会を開いて理事長から皆に伝えると思うんだけど、それまでに相羽さんにお願いがあるんだ」


「はい。私はなるべく多くの薬を作れば良いのですね」


 僕の言わんとしていることを代弁してくれる有紀。

 きっと彼女は要領が良いのだろう。

 もしかしたらこういう事態になることを予測して、これだけの薬を作ってくれていたのかもしれない。


「で、お兄ちゃんはその『探索メンバー』? それを誰にするかは決めたの?」


 不安そうな表情で楓が僕に質問する。


「ううん、まだ決めていない。探索メンバーは『異世界調査班』と『食料調達班』の2班を選出しないといけないんだけど……」


 その前にもやることは沢山残っている。

 学園の設備強化に当たってくれている島田先生のグループを『解析』してレベルアップをさせなくてはならないし、探索の為の装備を新調してくれるJOBを持った人に協力をお願いしないといけないし。

 それに、それぞれ選出枠は6人前後だと理事長からは言われている。

 僕を含めて計12名のメンバーを、『戦闘職』、『魔法職』などからバランス良く選出しなくてはならない。

 これはあとで瞳に相談して決めようと思っているのだけれど……。


「ふん、大役を買って出たということか。もしも困っているのであれば、私を選出しても構わんぞ」


 腕を組んだまま、鼻の穴を大きくしてそう答えた澪。


「えー? くっころ先輩が探索に出掛けて魔獣に遭遇したら、どうせ『くっ、殺せ!』とか言って皆に迷惑をかけるだけなんじゃ――」


「なんだと! もういっぺん言ってみろ!」


「ひー!」


 先程と同じく牙を剥きだす澪と怖がったふりをする楓。

 もしかしたらこの2人はいつもこうやって遊んでいるのかもしれない。

 その姿を見て有紀は微笑んでいるだけだし。


「まあ、今は気持ちだけ受け取っておくよ。もしも選出することがあったら、その時は宜しくね」


 僕は真剣な表情で澪にそう伝える。


「う……。あ、ああ。こちらこそ……その、宜しく……」


 何故か澪は頬を染め、そっぽを向いてしまった。

 なにか気に障るようなことでも言ったのだろうか……。


「……お兄ちゃん。気付いていないだろうから、妹である私から言っておきたいことがあるんだけど」


「え? な、なんだよ……」


 僕を見上げるようにして楓がジト目で睨んでくる。


「お兄ちゃんの、その目・・・。結構ヤバイんだから気をつけてよね」


「目? ヤバイって……」


 楓が何を言っているのかさっぱり分からない……。

 目がヤバイということは、目つきが悪いということか?

 そんなに凝らして見てはいないと思うんだけれど……。


「確かにそうですね。優斗さんに見つめられると、何だかドキドキしてしまいますし」


「え――」


「ほらぁ! お兄ちゃんって昔っからそうじゃん! いたいけな草食系男子の皮を被っていながら目で殺すタイプじゃん! あれだよ! 隠れ肉食系ってやつだよ!」


 急に騒ぎだした楓。

 しかし僕には彼女の言っている言葉の意味がさっぱり分からない……。

 隠れ肉食系?


「べ、別に私は優斗に見つめられてドキドキなんてしてないからな!」


 何故か余計に頬を赤く染めた澪は目を見開き叫んでいる。


「うわぁ、くっころ先輩……。それ完全にツンデレ台詞だよぅ……」


「んなっ!? くっ……! おい藍田……! さっきから私に喧嘩を売っているんだな? そうなんだな……!」


「ひー!」


 とうとう般若のような顔になった澪は牙をむき出しながら楓に襲いかかる。

 逃げ惑う楓。

 でも何故か余裕の表情で、それがかえって澪の火に油を注いでいる気がする……。


「ふふ、いつもああなんですよ。あの2人」


 実験室を走り回る2人を眺めながら、有紀はそう答えた。


「3人は元々知り合いなの? 学年は違うのに……」


「ええ。楓ちゃんはあの性格ですからね。前に楓ちゃんのライブを澪と2人で見に行ったことがありまして、そのときに意気投合しちゃって」


「ああ、そういうことか」


 楓の所属しているバンドは結構地元でも頻繁にライブを開いていた。

 僕は全然知らなかったのだけれど、それなりに人気もあるようだった。


「こら! 待て、藍田ー!」


 実験室に木霊する澪の叫び声。

 あまり騒ぐと先生に見つかって怒られるかもしれない。


「優斗さん。ここは私がなんとかしますから、もう行ってください。色々とお忙しいのでしょう? 今日はお話ができて嬉しかったです」


 ニコリと笑いそう言った有紀。

 ここは彼女の申し出をありがたく受け取っておこう。


 

 僕は軽く礼を言い、こっそりとその場を後にした。 


















相羽有紀あいばゆき

中等部3年5組の女子生徒。

楓とは学年が違うが、姉的な存在でありいつも面倒をみてくれている。

地元にある『あいば薬局』の長女。


日高澪ひだかみお

中等部3年5組の女子生徒。

「くっ、殺せ!」が口癖で、通称は「くっころ先輩」。

有紀とは親友で、いつも2人でつるんでいる。


〇『薬調合』

薬士メディサーのユニークスキル。

さまざまな薬アイテムを作成できる。

レベルアップにより作成できる薬の種類が増加する。


〇『応援』

姫騎士プリンセスナイトのユニークスキル。

戦闘中にメンバー全員の攻撃力、防御力を微上昇させる。

効果は戦闘終了まで続く。

レベルアップにより上昇値があがる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=89033001&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ