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015 秘密の話

 異世界に転移して2日目の夜を迎えた。

 

 今日は朝からあちらこちらを駆け回り、心地良い疲れに全身が包まれている。

 昨日と同じく、クラスメイトは全員教室に集まって就寝の準備をしている。

 年頃の男女が同じ部屋で寝食を共にするのは如何なものかとは思うが、いちおう男子と女子で生活空間は別れている。

 僕は大輝、里香、瞳とともに、毛布に包まりながら今後の作戦を練っている最中だ。


「うーん……。魔獣に対抗できる武器や防具を作れるJOB……」


 こめかみを押さえ、記憶を遡る瞳。

 僕らは静かに彼女の回答を待つ。


「たぶん、『鍛冶士ブラックスミス』や『洋裁士ドレスメーカー』がそうなんじゃないかな……。それと、『紋章士エンブレイマー』とか『細工士ウォーカー』とかも当てはまるかも……」


「すごい、瞳……! あれだけの人の数のJOBを本当に『暗記』しちゃってるんだね……!」


 瞳と同じ毛布に包まっている里香が騒ぎだす。


「最初の2つはまあ、なんとなく分かるけどよ。『紋章士エンブレイマー』とか言われてもなんのこっちゃ分からんぜ……」


 僕と同じ毛布に包まっている大輝がおどけた表情でそう答える。


「あ、それなら覚えてるかも。確かスキルは……『武具強化』、じゃなかったかな……」


 大輝の質問に答える僕。


「うん……。それで合っていると思う。『鍛冶士ブラックスミス』のスキルが『武具作成』で、『洋裁士ドレスメーカー』が『裁縫』、『細工士ウォーカー』が『装飾』、かな」


「へぇ……。じゃあ、その4つのJOBに当てはまる人に装備品を用意してもらえばいいんだな」


「大輝……。あんた簡単に言うけど……」


 大輝の言葉に溜息を吐く里香。

 その様子を見て笑う僕と瞳。


(武具作成と武具強化、裁縫に装飾か……)


 僕は手鏡を取り出し、自身の姿を映しだす。


「お、オシャレさんですか? 優斗くん」


「ひゅう。やっぱデキる男は違うな」


 里香と大輝が同時に僕をからかってくる。


「違うに決まってるだろ! ステータスを見ようとしてるんだよ! 分かってるくせに!」


 僕がそう叫ぶと何故か瞳が吹きだした。

 大輝と里香も一緒になって笑っている。

 僕は口を尖らせながら自身のステータスを『解析』する。


------

NAME ユウト

LV 34

HP 278/278

AP 165/165

MP 0/0

ARTS 『分解 LV.1』『結合 LV.1』『視覚効果 LV.1』

MAGIC -

SKILL 『解析』

------


 そしていつものように瞬きをする。


------

NAME ユウト

JOB 解析士アナライザー

WEAPON(R) -

WEAPON(L) -

BODY 私立伊ノ浦学園のジャージ

WAIST 私立伊ノ浦学園のジャージ

SHOES 白の運動靴

ACCESSORIES 腕時計

------


 昨日の夜に確認したときよりも、レベルが2つほど上昇している。

 そして『BODY』と『WAIST』、『SHOES』の項目が変化していた。

 今日の昼間に友原さんの水魔法を頭から被り、保健室でジャージに着替え、靴を履き替えたからだ。


(それと、『WEAPON』……)


 この項目はRとLで分かれているが、ここに恐らく装備をした『武器』が表示されるのだろう。

 確か里香がグランドビーストと戦ったときには『WEAPON』の項目の横に(W)という記載があったはずだ。

 ということは、両手で扱うような武器だと(W)の表示になり、項目が一つに統合されるという訳だ。

 

 『ACCESSORIES』も、恐らく『装飾』を意味する言葉だろう。

 『BODY』、『WAIST』、『SHOES』に属さない、なにか特別なアイテムを指すものなのかもしれない。


 僕は手鏡を仕舞い、軽く息を吐く。


「……優斗くん。あんまり……その、思いつめたら駄目だよ?」


「そうだぜ、優斗。楠先生に振られたくらいで」


「ちょ!? どうして知ってるの! 大輝!」


「「「えっ」」」


 3人とも口をぽかーんと開けたまま僕を凝視している。


「……マジか、優斗……。俺いま、冗談で言ったつもりだったんだが……」


「え? ……ええっ!?」


「……優斗。貴方、本当に……?」


「ちょ、ちょ! 待って! ……えええええっ!?」


「……優斗くん。私、『探索メンバー選出』のことを言ったつもりだったんだけど……」


「……」


 徐々に顔が赤くなる僕。

 なんということだ。

 大輝の罠に、自ら嵌ってしまうとは――。


「よう、相棒。今夜は寝かさないぜ」


「優斗。じーーーーっくりと、話を聞かせてもらうわよ」


「優斗くん……。やっぱり楠先生のこと、好きだったんだ……」


 3人が僕ににじり寄ってくる。

 近い。

 すごく、近い――。


 ――そして僕は、一睡もさせてもらえず、朝まで3人の餌食となった。 





 次の日の朝。

 僕は欠伸をかみ殺しながら中等部の校舎へと向かった。


「ええと、3年5組は……」


 校舎の廊下を歩いていると、複数の視線を感じた。

 振り返ると、中等部の生徒らが皆、僕に視線を向けていた。

 確かに、高等部の生徒が中等部にいるのは珍しいとは思うけれど――。


「あ、お兄ちゃん!」


 人ごみの中から楓が手を振りこちらに近付いてくるのが見えた。

 僕は笑顔で手を振り返す。

 そしたら何故か、生徒のうちの誰かが騒ぎだした。

 一体、何なんだろう……。


「どうしたの? もしかして、私に会いにきたとか?」


 そう言った楓は悪戯に笑う。


「違うよ……。3年5組に用があってきたんだよ」


「3年5組? 誰か探しているの?」


 少し寂しそうな表情でそう答えた楓だったが、すぐにまた明るい表情に戻る。

 昔から楓は寂しがり屋で、僕の後ろをいつも追いかけていた。

 そんな弱虫だった彼女も、中等部で軽音部に入ってからは随分と印象が変わった。

 活発になったし、友達も沢山できたようだった。


「うん。相羽有紀さん、っていう子なんだけど……」


 相羽有紀あいばゆき

 先日、体育館で『解析』した『薬士メディサー』の女の子。

 彼女のユニークスキルである『薬調合』は、これから学園の外を探索する際に絶対に必要ともいえる能力だ。

 出発前に彼女の力を覚醒させ、ある程度レベルを上げておきたい。

 そして強力な薬を調合してもらい、探索メンバーに持たせたい。


「相羽先輩なら、実験室にいると思うけど……」


「実験室だな。ありがとう、楓」


「ちょっと待ったお兄ちゃん」


 僕の前で右手を広げた楓。

 いちいち仕草が大げさになってきたのも、きっと部活が原因だろう。


「私が、案内してあげる」


 そう答えた楓は胸をドンと叩く。


「いや、ていうか場所知ってるし……。僕もここの中等部の出身――」


「いいの! 細かいことはいいの! 私がお兄ちゃんを案内したいの!」


「あ、おい!」


 楓に右手を掴まれ、僕はそのまま人ごみを掻き分け廊下を走る。

 なんだか最近走ってばっかりだな……。


 

 楓に引っ張られながら階段を上り。

 廊下を真っ直ぐに進み、実験室の前へと辿り着く。


「到着~! あー、楽しかった」


「お前な……」


 肩で息をした僕は、楽しそうにしている楓を睨みつける。

 しかし楓はまったく悪びれた様子もない。

 僕は溜息を吐き、楓の手を離す。


「ちぇ、お兄ちゃんたらすぐに恥ずかしがるんだから」


「恥ずかしいに決まってるだろ! あんなに皆が見ている中で妹と手なんて繫いでたら!」


「えー? そうかな。別に普通だと思うよ。私はお兄ちゃんと手を繫いでいるところ、皆にもっと見せつけたかったしー」


「……もういい。お前と話をしていると、なんだか頭が痛くなってくる……」


 そう言い、こめかみを押さえる僕。


「……あれ? 相羽先輩以外にも実験室に誰かいる……? 確か、一人で薬の調合実験をしたいからって、教頭先生にお願いして貸しきらせてもらうって言ってたけど」


 楓の言葉で室内に耳を傾けると、確かに話し声が聞こえてきた。

 というか、楓と有紀は友人なのだろうか。

 そんなことは初耳だ。


「お前、相羽さんと一体どういう――」


『くっ、殺せ!』


「え――?」


 実験室の中から女性の声が聞こえてきた。

 今、「殺せ」って――?

 僕は慌てて扉に手を掛ける。


「あ、お兄ちゃん! この声はたぶん――」


「大丈夫ですか! 何かあったんですか!」


 そう叫び、勢いよく扉を開ける。

 そこには2人の女子生徒がいた。

 僕の声に驚き、こちらに振り返っている。


「……あれ?」


 一人はウェーブの掛かった髪が特徴の女の子。

 手にはなにやら軟膏のようなものを持っている。

 そして、もう一人の背中にそれを塗っている最中のようだった。


「あ、あの……」


 軟膏を持った女の子が声を掛けてくる。

 僕は開いたままの口が塞がらなかった。

 背中――。

 綺麗な、透き通るような肌――。

 軟膏を塗られている女子生徒は、上半身、裸――。


「し、ししし、失礼しましたああああああ!!」


 僕は慌てて扉の外に出る。

 見てしまった……。

 ……見てしまった!


「あーあ、あの声は『くっころ先輩』だね。何かあるたびに『くっ、殺せ!』が口癖なんだよ」


 隣に立っている楓が何か言っているが、僕の耳にはまったく入ってこない。

 僕の脳裏には、あの女子生徒のあられもない姿が――。


「……こりゃ駄目だ。お兄ちゃん、オーバーヒートしちゃってる……」


 楓は僕を置き、実験室へと入っていく。


「あ、楓ちゃん。さっきのひとってもしかして……」


「うん。私のお兄ちゃん。相羽先輩に用があるっていうから連れてきたんだけど……」 


 中から楓と有紀らしき人物の声が聞こえてくる。


「……見られたのか……? 私は今、見られたのか……?」


「うん。日高先輩が『くっ、殺せ!』なんて叫ぶからだよ」


 もうひとりの女子生徒の声が聞こえてきた。

 日高先輩……?

 ということは、有紀と同じく中等部の3年生なのだろうか。


「もう、大げさなんだから、みおちゃんは……。打撲用の軟膏を塗っただけなのに……」


「し、しかし……! あまりにも染みるものだから、つい……」


 澪の言葉に笑う2人。

 そうだったのか……。

 軟膏が染みたから、あんな声を――。


「とりあえず、ちゃんとお兄ちゃんを紹介したいから、日高先輩は服を着てくださいね?」


「あ、ああ……。すまない、楓……」


 その言葉に、僕はまた顔が赤くなってしまう。

 そして数分後――。


「お兄ちゃーん! もう入ってもいいよー! 相羽先輩に話があるんでしょー!」


 

 妹に大声で呼ばれ、僕は十分な深呼吸をした後、再び実験室へと足を踏み入れたのだった――。


















〇『武具作成』

鍛冶士ブラックスミスのユニークスキル。

さまざまな素材から武器や防具を作りだすことができる。

レベルアップにより作成できる武具の種類が増加する。


〇『武具強化』

紋章士エンブレイマーのユニークスキル。

武具に紋章を刻み込み、眠れる力を呼び覚ます。

レベルアップにより強化限度を引き上げることができる。


〇『裁縫』

洋裁士ドレスメーカーのユニークスキル。

さまざまな素材から主に魔法職の防具を作りだすことができる。

レベルアップにより作成できる防具の種類が増加する。


〇『装飾』

細工士ウォーカーのユニークスキル。

さまざまな素材から主にアクセサリーを作りだすことができる。

レベルアップにより作成できるアクセサリーの種類が増加する。

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